台風19号で崩落 釜石・市道箱崎半島線 排水機能強化し2年半ぶり復旧開通
崩落箇所の復旧工事がほぼ終わり、3月31日午後5時に開通した市道箱崎半島線
2019年10月の台風19号豪雨で盛り土が崩壊、3人が死傷した釜石市鵜住居町の市道箱崎半島線の復旧工事がほぼ終了し、3月31日から通行可能となった。復旧にあたっては、災害発生要因となった地中浸透水の排水機能を強化する対策を講じたほか、異常をいち早く察知するために水圧や水位、流量などの計測機器を設置した。津波など災害発生時の半島集落孤立を防ぐ道路機能の復活に、住民からは安堵(あんど)の声が聞かれた。
同路線は東日本大震災の被害を教訓に、箱崎半島部と鵜住居町を走る国道45号を高台通行で結ぶ道路として、山を切り開いて整備。2018年10月に全線開通した(総延長2・8キロ)。翌19年10月13日に発生した台風19号による豪雨被害で、路線の一部が長さ約20メートル、幅約12メートルにわたって崩落。通行中の車2台が転落し1人が死亡、2人がけがを負った。
台風19号の記録的豪雨で崩落した現場=2019年10月
市は崩落原因の調査、検証を地盤工学の専門家に依頼。検証の結果、崩落は「路面下の盛り土に排水能力を超える多量の浸透水が流入し、限界状態に達した盛り土が崩壊したことによる」との結論が示された。流出した土砂は約2600立方メートルに及ぶ。
検証結果を受け復旧工事では、山から盛り土内へ流入する水量を低減させるため、排水施設に集水井、集排水ボーリング工法を採用。盛り土内には最深部の基盤排水層のほか、2段の中間排水層を整備し、管や砕石で排水効果を高めた。盛り土自体の安定を図るため、地中に網状の補強材を5段にわたって設置した。この他、道路変状の確認や異常時の対応ができるよう水圧、水位計などを埋設。今後、地表に設置する雨量計、水路の流量監視カメラと合わせ、リアルタイムの監視による危険回避策も講じた。
山から流れ出る雨水や地中の水を集め、安全に流せるようにした排水施設
排水機能を高めた盛り土から水を流すための水路などが敷設された道路脇斜面
4月中の復旧工事完了を目指す。右が鵜住居方面、左が箱崎半島方面
復旧工事は昨年7月に着工。工事区間55メートルを含め約2キロを通行止めとし、進められた。路盤の安定性を考慮し、路面の本舗装は4月下旬に行う予定。総工費は約2億8千万円。
沿線の鵜住居町根浜地区に暮らす50代自営業男性は「高台の道路はまちの基本線。通ることができないなら意味がない。災害はいつ来るか分からず、避難するのに必要な道路は通すのが先決だと思っていた。通行再開で、ひとまず安心」と歓迎。
箱崎町内会の高橋道夫事務局長(71)は「市中心市街地に出るには、この道路が便利。箱崎と鵜住居を結ぶにこにこバスも通行を再開した。箱崎町は東日本大震災で孤立したので、低地を通らず移動できる道路はありがたい。アップダウンがあるので、冬場の路面凍結への対策も必要」と話した。
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