震災の教訓 竹灯籠をともした避難階段で共有 3・11に向け根浜で点灯開始
竹灯籠の明かりで浮かび上がる根浜の避難階段。上り口には市指定避難場所への距離を示す看板も
東日本大震災命日まで1カ月となった12日、釜石市鵜住居町根浜地区に追悼と防災への願いが込められた竹灯籠が設置された。灯籠の明かりが照らすのは根浜シーサイドキャンプ場と高台の市道箱崎半島線をつなぐ避難階段。市民らが手作りした50個の灯籠が“命を守る道”を教える。命日の3月11日まで、毎週土日祝日と11日当日、午後5時から同7時まで点灯する。
12日は午後5時に点灯式を実施。灯籠を製作した親子らが見守る中、地元町内会「根浜親交会」の前川昭七会長が発電機のスイッチを押した。LED電球でともす灯籠が111段の階段を夕闇に浮かび上がらせると、集まった人たちがさっそく高台避難を体験。海抜20メートルの市道に続く階段を上った。
灯籠点灯後、避難階段を上り下りしてみる来場者
竹灯籠の設置は、キャンプ場など一帯の観光施設を管理するかまいしDMC(河東英宜社長)が発案。震災犠牲者を追悼し、昨春完成した同階段を周知する目的で初めて取り組んだ。1月に市民らを対象とした製作体験会を実施。長さ約1メートルの青竹に電動ドリルで穴を開けて模様を施し、明かりが漏れるよう細工した。発電には、地域から出る廃食油を精製したバイオディーゼル燃料を用い、環境に配慮する。
体験会参加者らが手作りした竹灯籠。温かな光が階段を包む
辺りが暗くなると一層美しい光景が広がり、子どもたちは目を輝かせた
友人と足を運んだ藤原朱莉(あかり)さん(鵜住居小2年)は「手作りとは思えないほど、すごくきれい」と感激。「身近な所に避難できる場所があると安心。地震や津波の時は自分たちで早く行動できるように頑張りたい」と心構えを強くする。
市内を代表する海水浴場・根浜海岸を有する同地区は、震災の津波で壊滅的な被害を受け、住民は新たに造成された高台の団地に移転。集落跡地にはキャンプ場や多目的広場が整備され、年間を通してレジャー客やスポーツ合宿の利用者などが訪れる。夏場には同海岸でトライアスロンやオープンウォータースイミングの大会も開かれるため、有事の際は高台避難が必須。キャンプ場から直接駆け上がれる階段が設置されたことで避難経路が増え、より安全で迅速な避難が可能となった。
キャンプ場(画面上部の明かりが点在する場所)から最短距離で高台避難が可能
竹灯籠には震災犠牲者への思い、未来の命を守りたいとの願いが込められる
未曽有の大災害から間もなく11年―。同親交会の佐々木雄治事務局長(66)は震災の風化が進んでいく現実を憂慮。「津波はいつどこで遭遇するか分からない。警報、注意報が出たら、とにかく高い所に避難するという基本を再度確認してほしい」と願う。避難意識啓発にもつなげる今回の取り組み。「この階段をキャンプ場利用者だけではなく、広く多くの人に知ってもらいたい。日ごろから複数の避難ルートを確認しておくことも大事」と呼び掛ける。
釜石新聞NewS
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