「津波に耐えた樹木の観察会」~市内4地点を巡り、大津波に耐えた環境特性を学ぶ


2021/04/22
釜石新聞NewS #地域

鈴木弘文会長(右)の解説に聞き入る参加者

鈴木弘文会長(右)の解説に聞き入る参加者

 

 東日本大震災の津波に襲われながらも流されずに残った樹木の観察会が11日、釜石市内の大槌湾沿岸域で行われた。市内外から13人が参加。企画した「釜石植物の会」の鈴木弘文会長(75)の案内で4つのポイントを巡った。「なぜ大津波の威力に耐えられたのか」その環境特性を学び、自然と人間の暮らしとの関わりにも目を向けた。

 

 最初に訪れたのは、震災前、鵜住居川河口部に面していた片岸町の岩場。津波で河口は失われ、周辺の光景は一変したが、岩を抱えるように根を張るマツやケヤキは波の衝撃に耐え抜き、今も生命力をみなぎらせる。樹齢100年以上とみられるケヤキは、海岸側から見上げると根元の形状がよく分かり、見事な枝ぶりとともに参加者を驚かせた。

 

岩を抱えるように根を張るケヤキ=片岸町=

岩を抱えるように根を張るケヤキ=片岸町=

 

 鵜住居町の根浜海岸には、防潮堤の背後に立ち並ぶクロマツの林が残る。鈴木会長はマツに交じって生えるケヤキについて触れ、「地中深く根を張る広葉樹(ケヤキなど)が地盤を強くし、横に根を伸ばす針葉樹(マツなど)の生育環境を助けている。こういう環境が津波から松林を守ることにつながった」とし、複数の樹木の共生関係で自然が成り立っていることを教えた。

 

 箱崎町の漁港に面する高台の箱崎神社では、津波で境内斜面に生えていた一部の木が倒れ、震災後伐採されたが、社周辺のヤブツバキやタブノキなどは残り、この日は青々と葉が生い茂る姿を確認できた。津波は社の床上1㍍まで達したという。

 

 最後は、箱崎白浜地区まで足を伸ばし、復興事業で整備された新しい防潮堤周辺を見て回った。堤防内側には地域のシンボル的存在だったケヤキの巨木3本があり、津波にも耐えて生き残ったが、防潮堤工事のため2本が伐採された。残る1本は幹周り約4・4メートル、樹高は14・5メートルの防潮堤を優に超える高さ。参加者は2本の切り株も観察し、3本が立ち並ぶ姿に想像をめぐらせた。

 

箱崎白浜の防潮堤内側にそびえ立つケヤキの巨木

箱崎白浜の防潮堤内側にそびえ立つケヤキの巨木

 

 友人3人で参加した小佐野町の小林祐介さん(36)は「岩を巻き込んで育つなど木の根の力は強い。津波にも耐え、たくましさとともにしなやかさを感じる」と目を奪われた。自然と人間の関係にも言及。「自然を生かしながら人の暮らしも守る。難しいとは思うが、未来のためには必要」と実感を込めた。

 

 鈴木会長は「200年後のことを考えれば、樹木がしっかり根を張った大地はコンクリートに勝る。環境破壊によって人間が危険にさらされるようなことはあってはならない」と植物保護への関心の高まりを期待する。

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