例年よりもひと足早く~釜石に桜シーズン到来
甲子川沿いの桜並木の下は格好の散歩コース=甲子町松倉
3月の気温が平年に比べかなり高く推移した今年、釜石市内の桜の開花は下旬から一気に加速。最高気温が平年より8度も高い20・2度を記録した4月3日は、市街地を中心に各地の桜が満開を迎えた。桜の名所には家族連れや若者らが次々に訪れ、美しい花姿を愛(め)でる光景が見られた。
小川町と桜木町に隣接する小川川下流域沿いの桜並木は、枝先が川面に垂れるしだれ桜のような風情が目を引く。3日午前には地元住民のほか、他地域から足を運んだ人たちが散策を楽しんだ。
しだれ桜のように枝を垂れる小川川沿いの桜並木
市内の工場で水産加工技術を学ぶベトナム人研修生の女性13人は、おしゃれな春の装いで並木をバックに記念撮影。「桜、すごくきれい。初めて見た時はびっくりした。撮った写真は母国の家族に送る」と、花に負けない〝満開〟の笑顔を輝かせた。
愛犬と散歩中の小川町の70代女性は「今年の開花はだいぶ早い。今日は風も暖かく絶好の日和。春が来た感じで、うきうきする」と声を弾ませた。
大渡町、橋詰広場に立つ一本桜は、橋上市場時代の名残を伝える遺産。東日本大震災による津波をかぶったが、10年たった今も力強く花開く。甲子川をはさんだ対岸には三陸鉄道の線路沿いに連なる桜並木も見ることができる。
津波に耐えた桜の前で笑顔も満開!=大渡町橋詰広場
家族に連れられ訪れた大渡町の茂泉サダ子さん(99)は「きれいだねー。天気もいいし。見られて良かった」と満足げ。今年9月に迎える満100歳へ力をもらった様子で、広場を後にした。
3年に一度の「大名行列」(天照御祖神社式年大祭)で知られる唐丹町本郷の桜並木は、3日時点で八分咲き。同日昼すぎには車で訪れる見物客がひっきりなしに続いた。道路の両側に立ち並ぶ桜は、1933(昭和8)年の三陸大津波からの復興などを願って植樹されたもの。今年は祭り行列の開催年にあたるが、新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、中止が決定している。
次回の〝大名行列〟が待ち遠しい唐丹町本郷の桜並木
両石町の復興住宅に暮らす塩谷昭子さん(81)は、東日本大震災後に入居した平田の仮設住宅から毎年足を運んでいたといい、「今年も元気で見られた。津波で全てを失ったが、命があって(桜を)見られるだけでもいいよね」と、ささやかな幸せをかみしめた。
中心市街地を見下ろす大町の薬師公園の桜も見事に咲き誇り、4日から提灯に明かりをともす桜まつりが始まった。点灯は18日まで。
復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)
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