4月から入居が始まる予定の「県営松原アパート」

県営松原アパート、入居を前に内覧会、新生活にイメージ膨らませる

4月から入居が始まる予定の「県営松原アパート」

4月から入居が始まる予定の「県営松原アパート」

 

 釜石市松原町3丁目に建設が進められてきた災害公営住宅「県営松原アパート」(2棟、60戸)が完成し、26日、入居予定者らを対象に内覧会が開かれた。県が市内に整備する災害公営住宅としては5カ所目、管理も行う県営住宅としては3カ所目の完成。松原町の被災者を中心に釜石・大槌地区の52世帯が入居を申し込んでおり、来月中旬に鍵が引き渡される。

 

 松原町では初めてとなる災害公営住宅は国道283号沿い、市の土地区画整理事業で2~3メートル盛り土した土地に建設された。三陸鉄道の高架橋をはさむ形で鉄筋コンクリート造り6階建ての2棟を配置した。敷地面積は約3872平方メートル。

 

 部屋は1DK(約45平方メートル)、2DK(約54平方メートル)、3DK(約65平方メートル)の3タイプで、2階以上が居住エリア。1号棟(42戸)は1DK10戸、2DK27戸、3DK5戸。ペット飼育が可能な2号棟(18戸)は2DK12戸、3DK6戸。団地用の集会所と備蓄倉庫を1号棟2階に設け、駐車場は64台分を整備した。

 

 渡辺設計事務所(盛岡市)が設計、八幡建設(釜石市)・小松組(紫波町)復旧・復興建設工事共同企業体が施工し、昨年1月から工事が進められてきた。

 

 内覧会には入居予定の41世帯、77人のほか、今後完成する県営住宅への入居を検討する被災者や一般住民らが訪れ、合わせて111人が見学。入居予定者は部屋の寸法や設備などを確認しながら、新生活へのイメージを膨らませた。

 

1DKの室内を見学する内覧会の参加者

1DKの室内を見学する内覧会の参加者

 

 松原で被災し大畑の仮設住宅で暮らしてきた大久保静雄さん(67)は妻と2DKに入居予定。窓の外の景色に目をやり、「まちの様子は変わってしまったが、やっぱり生まれた所はいいよね。(仮設の)6年は長かった」としみじみ。妻朋子さん(54)は「今まで物音など周りに非常に気を使う生活だった。これからは静かな環境で暮らせる」とほっとした様子を見せた。

 

 一人暮らしの佐藤キクさん(78)は松倉の仮設住宅から同アパートに移る予定。体が小柄で、仮設では浴槽や換気扇の高さに難儀していたといい、「心配していた風呂もまずまず。何かの時に子どもたち家族が集まれる広さもある」と一安心。一方で買い物や通院が遠くなることや生活環境が大きく変わることへの不安も感じ、「慣れるまでは大変かな。ヘルパーさんにも助けてもらい、何とか暮らしていければ」と願った。

 

 現段階で空き室になっている8戸(2DK)は再募集する予定。県が市内に整備する災害公営住宅はこの後、現在工事中の嬉石第1、同第2アパートが今年7月に完成する見込みとなっている。

 

(復興釜石新聞 2017年3月29日発行 第575号より)

 

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復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

食事や歓談、歌やダンスを楽しみ、最後の思い出を作る住民ら

強い絆を心にお別れ会〜甲子第6仮設団地、苦楽を共に6年

食事や歓談、歌やダンスを楽しみ、最後の思い出を作る住民ら

食事や歓談、歌やダンスを楽しみ、最後の思い出を作る住民ら

 

 釜石市甲子町松倉の新日鉄住金釜石サッカー場にある「甲子町第6仮設団地」(138戸)が仮設住宅の集約に伴い来月末で閉鎖されるのを前に、25日、住民や元住民らによるお別れ会が中妻公民館で開かれた。震災後の避難生活で苦楽を共にしてきた住民らは、団地で育んだ強い絆を心に刻み別れを惜しんだ。

 

 お別れ会は同団地自治会(佐々木忠会長)が企画し、約60人が出席。佐々木会長は「自宅再建や復興住宅への入居で空き室が目立つようになり、心寂しい思いがする。思い出を語り合い、楽しく過ごしてほしい」とあいさつした。

 

 同団地自治会は盆踊りやクリスマス会、温泉バスツアーなど各種交流活動で住民同士が顔を合わせる機会を増やし、日常の支え合いや孤立防止につなげてきた。会に出席した支援団体の代表からは積極的な住民活動をたたえる声が多く聞かれ、「団地で培った経験を新たな環境でも生かしてほしい」と激励の言葉が送られた。

 

 2011年7月に完成した同団地は全戸入居した時期もあるが、現在は30世帯ほどに減少。集約後は、近く完成する復興住宅に入居する人、土地造成を待って他の仮設住宅に移る人などそれぞれの一歩を踏み出す。

 

 地元浜町での自宅再建を目指す女性(80)は天神町仮設に移ることになり、「みんなと仲良く暮らしてきたので離れがたい。慣れない所に行くのもあって…」と寂しさをにじませた。昨年5月に集約で松倉の別の仮設から第6仮設に移った片倉賢佐さん(69)は「気さくに受け入れてもらい、ありがたかった。知り合った方々とは今後も交流を続けたい」とし、大町の復興住宅への入居に「新たな気持ちで第2の人生を歩む」と力を込めた。

 

 この日は自宅再建ですでに同団地を”卒業”した人たちも顔をそろえ、同窓会的な雰囲気も。野田町で暮らす佐々木健二さん(69)は「津波で妻を亡くし煮炊きするのも大変だったが、ご近所さんに助けられた。行事にも声がけをいただき、1人でいる時間が少なくて済んだ」と深く感謝。鵜住居町に暮らす前自治会長の幸﨑幸太郎さん(80)も「本当に住みやすい環境だった。皆さんが永住できる場所に早く移れるよう願う。ここでの出会いを忘れず長生きしよう」と仲間の幸せを祈った。

 

(復興釜石新聞 2017年3月29日発行 第575号より)

 

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最後の放送まで楽しみながら情報を伝えようと意気込むスタッフ

命の大切さ 伝え続けて6年、さいがいエフエム放送終了〜4月から「はまっこラジオ」へ

最後の放送まで楽しみながら情報を伝えようと意気込むスタッフ

最後の放送まで楽しみながら情報を伝えようと意気込むスタッフ

 

 釜石市が開設するFMの臨時災害放送局「かまいしさいがいエフエム」が今月31日で放送を終了する。東日本大震災の1カ月後、2011年4月11日から放送を開始し6年。市からの復旧・復興に関するお知らせや生活情報などを伝えながら地域の復興を支えてきたが、市内では住まいの再建が進み始め、個別に情報を届けることができるようになったことなどから、市は年度末での終了を決めた。「伝えたい。身の安全、命を守るよう、避難の大切さを」。最後の3日間、4人のスタッフは震災や復興をめぐる思いを、役目を終えるその時まで発信する。

 

 同局は、11年1月に釜石支局を開設していたエフエム岩手(盛岡市)の協力を得て誕生した。市が運営し、復旧復興関連情報などを届けてきたが、14年4月から同社に運営を委託。「釜石やっぺしFM」「はまっこラジオ」の2番組を放送し、復興情報に加え、取材力を生かして地域情報も充実させた。16年4月からは「はまっこ~」のみを放送。生活再建に関する情報、イベント情報などを紹介している。

 

 スタッフは大坂美和支局長(45)、パーソナリティー兼音響担当の及川隆太郎さん(31)ら4人。13年4月からパーソナリティーを務める市川香織さん(45)は「情報を得る方法はさまざまあるが、ラジオを頼りにしてくれる人もいる。取り残される人がいないよう、身近に感じてもらえるように情報を伝えようと頑張ってきた。全くの素人だったがリスナー、仲間のおかげでここまで来られた」と振り返る。

 

 音響調整機材(ミキサー)を担当する野﨑広美さん(38)は鵜住居町出身。震災で実母、義父母、友人…大切な人を亡くした。気持ちが沈む中、夢中になれるものを探して見つけたのが、同局での仕事。11年11月にパーソナリティーとして採用されたが、伝える情報の多さにのどを痛めてしまい、音響担当に転向した。全くの素人だったが、「母の代わりに父を見守りたい」「そばにいる大事な人を守りたい」「命の大切さを伝えたい」との思いが力となり、声を電波に乗せるスタッフの1人として放送を続けた。

 

 最後の放送となる31日の午後4時からは、4人全員が参加する予定。「いつも通りにやっていこう」の合言葉のもと、これまでを振り返るほか、防災についての思い、緊急時の連絡先や情報入手に関するアドバイスなどを発信する。

 

 放送は、鈴子町のシープラザ釜石内のスタジオから午前11時~午後1時、午後4~5時の2回。周波数は86・0メガヘルツ(甲子、鵜住居、唐丹地区の一部は80・1メガヘルツ)。

 

 4月からは同社の周波数(79・2メガヘルツ)で、市が提供する新番組「釜石はまっこラジオ」がスタートする。放送時間は火曜日の正午から25分間。19年ラグビーワールドカップに向けた機運醸成を図るもので、市の臨時職員として番組作りに関わることを決めた野﨑さんは「釜石のおいしいところ、イベントをどんどん紹介し、人を呼びたい」と意気込んでいる。

 

(復興釜石新聞 2017年3月29日発行 第575号より)

 

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