震災「教訓集」完成、全戸配布へ、「悲劇を繰り返さない」の思い込め〜激しい議論交わし、まとめる 市震災検証委 市民アンケートを基に作成
「教訓集」「証言・記録集」を野田市長に手渡す越野・震災検証委員会委員長(右)
東日本大震災に遭遇した釜石市民の体験を基にまとめた「教訓集」と「証言・記録集」が完成し、取りまとめに当たった市震災検証委員会(委員長・越野修三岩手大客員教授)が13日、野田武則市長に報告した。二度と悲劇を繰り返してはならない―との市民の痛切な思いが込められた2冊。このうち教訓集は11月に市内全戸に配布される。「教訓に特化した冊子の完成は、全国でも初めてではないか」と越野委員長。市は「教訓が各家庭に浸透し、後世に継承されれば」と願う。
「未来の命を守るために」と題した教訓集はA4判43ページ。
▽命を守るための行動
▽避難生活で命をつなぐ
▽命を守るための備え
▽津波の記憶を未来に伝える
―の4章で構成し、合わせて18の教訓を盛り込んだ。
このうち「命を守るための行動」としては、
▽揺れたら、ただちに高台に避難
▽避難は「徒歩」が原則
▽逃げるときは「声かけ」しながら
▽子どもを学校に迎えに行かない
▽避難したら、絶対に戻らない
▽「命てんでんこ」で行動する
―の6つの教訓を示している。それぞれの教訓には、津波に遭遇した市民の生々しい証言が裏付けとして添えられている。
2冊は、震災直後に発足した同委員会が作成した検証報告書を基に、昨年度から編集作業が進められてきた。委員会は自主防災組織や消防団、専門家ら21人で構成。市内全世帯を対象に市が行ったアンケート調査に回答した1690件の証言を基に、委員や事務局の担当者、出版社がまとめた。教訓は、いざという時の命に直結することから、一つの文言の扱いをめぐり委員らの間で激しい議論が交わされた。
この日は委員ら11人が市役所を訪れ、野田武則市長に完成した冊子の見本を提出。越野委員長は「市民一人一人の思いが込められた素晴らしい教訓集ができた。これが終わりではなく、これから市民がどのように生かして行くかが課題」と話した。
委員らは「感情的になることもあった。こういう形で完成し安心した」「本当にまとまるのか心配だった。完成がゴールではなく、これからが教訓を活用するスタート」などと編集の苦労を振り返った。「災害に直面した時の女性の役割の大きさを痛感させられた」という指摘もあった。
教訓集を手にした野田市長は「経験した人でなければ分からない思いが形になった。各家庭の座右の書とし、家族で教訓を共有してほしい」と願った。
「伝えたい3・11の記憶」と題した証言・記録集はA4判55ページ。被災状況を地区別に写真などを添えて記録したほか、震災時の避難行動や市災害対策本部の7日間の動きをまとめた。こちらは全戸配布せず、公共施設などで市民が閲覧できるようにする。
(復興釜石新聞 2016年7月16日発行 第504号より)
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