世界遺産に学び 未来を創ろう〜ユネスコ運動県大会 釜石で開催、橋野鉄鉱山を生かしたまちづくり
橋野鉄鉱山をまちづくりにどうつなげるか意見を交わしたパネル討論
県ユネスコ協会連盟(三田地宣子会長)、釜石ユネスコ協会(小野共会長)主催の第21回ユネスコ運動県大会は13、14の2日間にわたり釜石市で開かれた。「世界遺産・橋野鉄鉱山に学び、未来を創ろう」をテーマに講演やパネルディスカッションなどがあり、橋野鉄鉱山を生かした復興まちづくりについて活発に意見交換。今後も地域の特性を生かしたユネスコ運動を通して持続可能なまちづくりに取り組むことを確認した。
開会行事は大町のホテルサンルート釜石で開かれ、県内から約150人が参加。三田地会長は「世界遺産登録を機に新しいまちに復興する姿を見ることができる機会。大会が未来に持続可能な社会づくりに取り組む運動の力になることを期待する」とあいさつした。
橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産群」の世界遺産登録に携わった内閣官房参与の加藤康子さんが、「世界文化遺産登録までの道のり」と題して基調講演。製鉄・製鋼、造船、石炭産業など8県11市にまたがる23の構成資産について、それぞれの資産価値などを解説した。
橋野の価値や世界遺産を生かした観光へのアイデアを話す加藤康子さん
パネルディスカッションは「橋野鉄鉱山と復興を見据えてのまちづくり」がテーマ。加藤さんをコーディネーターに、パネリストの小野寺英輝さん(岩手大工学部准教授)ら5人が意見を交わした。
釜石観光物産協会の澤田政男会長は「釜石の観光は弱い。世界遺産で観光に目を向けるようになったが、まずは地元で橋野について学び、価値を理解することが必要ではないか」と指摘。釜石市世界遺産室の森一欽係長は「みんなの遺産として親しんでもらうためには難しいことを分かりやすく伝えることがポイント。鋳造、製鉄体験や鉱石拾いなど体を使えるようなアイテムで橋野を紹介したい」と提案した。
釜石ユネスココーラスの合唱で参加者を歓迎した
地元橋野町振興協議会の菊池成夫会長は「先人の偉業を無駄にしたくない。鉄と言えば釜石―となるよう地域の教育力を高め、教育旅行を軌道に乗せたい。ものづくりを体験できる実践教育の場になれば」と期待した。
釜石高生徒会長の佐々木希さん(3年)は「世界の鉄のまちを知り、つながりを持てたら釜石のにぎわい、活気にもなると思う。高校生にできることがあるなら挑戦したい」と意欲的。鵜住居小6年の時に震災を経験しており、「今の時代の困難は震災で、さまざまな思いがあるが、先人が残した、諦めず努力するという強い思いを守り、大切にし、今度は私たちが釜石をつくっていく番」と復興への思いも話した。
加藤さんは「世界遺産は永遠に守っていかなければならない宝。橋野は教育という面で可能性があり、愛情を持って育て、誇りを持って守ってほしい」と願った。
最終日の14日はエクスカーションとして、鉄の歴史館、橋野鉄鉱山を見学した。
(復興釜石新聞 2016年5月18日発行 第487号より)
復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)
復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3