復興願い大人の一歩〜信じる道へ決意新たに、釜石市成人のつどい 275人の門出祝う
華やかな振り袖、スーツなどに身を包んだ新成人は、多くの来賓、家族らに見守られながら大人としての第一歩を踏み出した
11日の成人の日を前に釜石市では10日、市と市教育委員会主催の「成人のつどい」が県立釜石高校体育館で開かれた。中学校卒業間近に東日本大震災を経験し、大きな環境の変化の中で自分の人生を切り開いてきた今年の新成人。震災から5年となる年に踏み出す大人の一歩にそれぞれの誓いを秘め、信念を持って邁(まい)進する姿勢を示した。
東日本大震災から4年10ヶ月
今年の新成人は1995年4月2日から96年4月1日までに生まれた人で、式典には男性146人、女性129人の計275人が出席した。震災犠牲者に黙とうをささげて開式。あいさつした野田武則市長は、限りある人生をどう生きるかを問いながら、「震災」「釜石人の誇り」「復興まちづくり」に言及。「震災の教訓を決して忘れず、次世代にも命の大切さを伝えてほしい。釜石は日本の近代化の原点。戦災、津波を乗り越えてきた不撓(とう)不屈の精神がある。できることから始め、皆さんの力をまちづくりにいただきたい」と期待した。
記念撮影で弾ける笑顔を輝かせるグループ
新成人が歩んできた20年間は道路、港湾、発電など釜石発展につながる大事業が成し遂げられた一方、学校、病院統合で教育、医療環境の転換期を迎えた。新しいまちづくりが進もうとする矢先、震災が発生。中学校の卒業式は延期され、不安や苦難を抱えながらの高校生活スタートとなった。
高校卒業後、進学、就職先で精進を重ねる新成人。古里の復興を願いながら、自分自身の夢に向かっている。出席者を代表し抱負を発表した柏崎晴香さん(19)と藤井みちるさん(20)は、共に釜石商工高出身で高校時代はなぎなた部で活躍した。柏崎さん(茨城県、晃陽看護栄養専門学校在学)は「つらい時、支えてくれるのは釜石で過ごした18年間の土台。将来は災害医療に関わるのが目標。震災を経験した自分だからこそできる看護がきっとある」、藤井さん(イオンスーパーセンター釜石店勤務)は「今まで以上に感謝の気持ちを忘れず、自分自身を成長させていきたい。釜石は思い出が詰まった温かい場所。いつか自分なりの形で恩返ししていきたい」と決意を表した。
釜石の伝統芸能「虎舞」で式典を盛り上げた新成人有志
男女11人の有志は、支えてくれた家族や地域の人たちに感謝の気持ちを込め、虎舞を披露。釜石市民歌の斉唱で式典の幕を閉じた。終了後は同級生との再会を喜び、近況などを報告し合う光景が広がり、華やかな雰囲気に包まれた。
(復興釜石新聞 2016年1月13日発行 第452号より)
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