海で遊ぶ喜び 育む生きる力 釜石でワンデイキャンプ 地道な活動評価「日本マリン賞」


2026/08/26
釜石新聞NewS #スポーツ

ふるさとの自然に親しむ「海あそびワンディキャンプ」

ふるさとの自然に親しむ「海あそびワンディキャンプ」

 
 ふるさと釜石の海を満喫する「海あそびワンデイキャンプ」が23日、釜石市箱崎白浜地区で行われた。市内で海に関わる活動を展開する団体や地元漁師らでつくる「海と子どもの未来プロジェクト実行委員会(通称・さんりくBLUE ADVENTURE)」が主催し、今年で13回目。爽やかな青空の下で参加者が多彩な体験活動を楽しみ、海辺に大勢の笑みが広がった。
 
 市内外から親子連れら約40人が参加した。遊びの場は箱崎半島入り江の海岸で、地元では「小白浜」と呼ばれ親しまれるビーチ。箱崎町の白浜漁港から地元漁師の船で上陸した。
 
 参加者はウエットスーツとライフジャケットを身に着け、シーカヤックやスタンドアップパドルボード(SUP=サップ)、シュノーケリングなどを思い思いに体験。救助や監視に使う水上バイクの試乗、海中転落や溺れそうになった時に取る姿勢「浮いて待て」の方法を学び、“自助防災”の力も身に付けた。
 
シュノーケリングヘGO!水中で生き物探しを楽しむ

シュノーケリングヘGO!水中で生き物探しを楽しむ

 
風を感じながら海上を走る水上バイクの試乗体験

風を感じながら海上を走る水上バイクの試乗体験

 
浜辺では波打ち際に座っているだけでも心地いい

浜辺では波打ち際に座っているだけでも心地いい

 
 今回初めて実施したのは、海釣り体験。地元でホタテやワカメの養殖を手掛ける浦島富司さん(73)が操縦する漁船で大槌湾内の釣りスポットに向かい、挑戦者たちが1時間ほど海中に糸を垂らした。初心者には漁師の浦島進さん(66)、市内で漁業支援などに取り組む齋藤孝信さん(64)が手ほどき。釣果はまちまちだったが、豊かな海の魅力を体感した。
 
フグをゲット!海釣り体験を楽しんだ子どもら

フグをゲット!海釣り体験を楽しんだ子どもら

 
 フグ1匹を釣り上げた木村渚彩さん(8)は「めっちゃ楽しい」とうれしそうに笑った。陸に戻り、ひと呼吸を入れ、また水の中へ。「海、大好き。いろんな遊びができるから」と元気いっぱいに話した。父の仁寿さん(46)は「生き物を見たり触れたりできる貴重な機会。さまざまな経験をしながら成長してほしい」と見守った。
 キャンプは、東日本大震災後に進んだ「海離れ」を食い止めるため、しっかりとした安全管理のもとで海に親しみ、郷土の豊かな自然や危険から身を守るすべを知ってもらおうとスタート。ライフセーバー、ダイビングなど各種マリンアクティビティのインストラクター、漁師といった“海の専門家”と、ボランティアスタッフら思いを同じくする仲間が力を合わせて運営し、回を重ねてきた。
 
豊かな自然の中で思い思いに海遊びを楽しめるのが魅力

豊かな自然の中で思い思いに海遊びを楽しめるのが魅力

 
 今年3月、「日本マリン賞2026」(UMI協議会主催)の「環境・安全・普及部門賞」を受賞。地域に根差した安全な海体験の提供や親子への普及活動の継続などが評価された。同実行委共同代表の佐藤奏子さん(47)は「みんなの力で実現できている」と喜びをかみしめる。
 
 さらにうれしいニュースも。キャンプ参加をきっかけに憧れのライフセーバーとなった高校生が今夏から活躍している。大槌町の藤社寿希さん(16)はライフセービングの基礎知識と技能、心肺蘇生などを学び、春に資格を取得したばかり。今イベントでも力を発揮し、佐藤さんは頼もしそうに見つめた。
 
スマホのカメラを向ける佐藤奏子さんに笑顔で応える藤社寿希さん(左)

スマホのカメラを向ける佐藤奏子さんに笑顔で応える藤社寿希さん(左)

 
 藤社さんは1歳を迎える直前に発生した震災の津波で自宅を流失。自身は記憶がないため「海は怖くない」が、家族は違った。小学生になる頃、キャンプのことを知った家族が「やっぱり海を身近に感じてほしい」と願い、参加。「白い砂、水が本当にきれい」と好印象を持ち、継続的に足を向け続けた結果、「夏と言ったら海」という気持ちを家族で共有できるようになった。高校生になった昨年はボランティアスタッフとして参加。そこで改めてライフセーバーの役割を知った。
 
ライフセーバーの先輩たちと記念にパチリ。前列左が藤社さん

ライフセーバーの先輩たちと記念にパチリ。前列左が藤社さん

 
 将来の夢は「自衛官」という藤社さん。「形は違っても、命を預かる仕事」と、ライフセーバーとして子どもたちが安全に海遊びを楽しめるよう目を配った。先輩たちのサポートで順調に資格を取れたと感謝しつつ、さらに上も目指したいと意欲満々。「浮いて待てをしっかり覚えてもらったり、海や自然はきれいだが危険があることも分かったうえで楽しんでもらえるような活動を続けたい」と、地域との関わりを維持する未来を思い描いた。
 
 「海や自然の不思議さ、美しさ、いろんな姿を体感しながら、ふるさとの思い出をたくさん持ってもらえたら。怖いと思ってもはい上がり、ワイルドな感覚を遊びながら体験して、好きなものを見つけられる場になったらうれしい。活動する中で、生きる力、人との関係性も育まれていけばステキ」と目を細める佐藤さん。これからも地道に活動を続けていくつもりだ。
 
運営側も参加者も、みんなでふるさとの海を満喫

運営側も参加者も、みんなでふるさとの海を満喫

 
 キャンプは、釜石に縁のあるトライアスリートのマイケル・トリーズさんが設立した社会貢献団体「Tri 4 Japan(トライ・フォー・ジャパン)」が資金の提供などで活動を支援。釜石市のふるさと納税「団体指定寄付」の対象にもなっている。

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