郷土芸能の担い手確保へ 高校生が魅力伝える新団体「結凪會(ゆうなぎかい)」結成  虎舞体験軸に発信


2026/07/24
釜石新聞NewS #観光

有志団体「結凪會~人と人を繋ぐ郷土芸能~」を設立した沿岸部の高校生ら

有志団体「結凪會~人と人を繋ぐ郷土芸能~」を設立した沿岸部の高校生ら

 
 虎舞、神楽、鹿踊り…など郷土芸能の宝庫である三陸沿岸地域。郷土に根付く貴重な伝統文化を次世代につなぐには担い手の育成が必須だが、人口減、少子高齢化の影響もあり、各団体は人員確保に苦慮している。そうした課題解決に地元高校生が立ち上がった。釜石高を中心に沿岸4校の生徒有志29人で結成したのが「結凪會(ゆうなぎかい)~人と人を繋(つな)ぐ郷土芸能~」。共同代表を務める釜石高3年の玉木里空さん、三浦海斗さんら5人が昨年度取り組んだ“郷土芸能ゼミ”の活動を深化させ、後輩たちにつないでいこうと新団体発足に至った。今月15、19の両日には会結成後初となる虎舞披露&体験の交流活動を展開。郷土芸能の魅力発信へ弾みをつけた。
 
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米国から訪れた高校生9人に虎舞を披露する結凪會のメンバー=15日、釜石PIT

 
 15日は、日本の文化や音楽に興味がある米国の高校生9人を迎えての交流会。東日本大震災後、日本各地を回り太鼓をツールとした文化や平和の学び活動を行う国際交流プログラム「Taiko for Peace(たいこフォーピース)」の参加者だ。結凪會の14人は英語で自己紹介し、三陸を代表する郷土芸能「虎舞」を紹介。矢車、跳ね虎、笹ばみの3演目を威勢のいいお囃子(はやし)で舞って見せた。演舞の後には会のメンバーが教えながら、米国の高校生が踊りやお囃子を体験。同世代で交流の輪を広げた。
 
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初めて見る虎舞に笑顔を広げる米国の高校生(15~18歳)

 
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踊りの解説はメンバーが英語で行った(左上)。黄、白の2頭の虎で「笹ばみ」を披露

 
 マックス・サントスさん(15)は「伝統的な太鼓と虎の動きがシンクロナイズしていて、とても力強い」と感激。虎頭を動かす体験では「実際に自分でやってみるとうまくいかないところも。スクワットもして、後ろの人と動きを合わせる一連の動作は彼らが練習を重ねてきた成果の表れ」と感じ入った様子。アリーナ・オルティーズ・レイモンドさん(16)は「太鼓の演奏と踊りのハーモニーがすごくいい。高校生たちが地元の文化を自分たちの力で次の世代に受け継ごうとしているのはとても大事なこと」と称賛した。
 
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演舞の後は太鼓や踊りの体験。会のメンバーが教えた。会話を弾ませる高校生も

 
 釜石高の2年生が取り組む探究活動で昨年度、地域課題に目を向けたグループの一つが郷土芸能ゼミ。玉木さんらメンバー5人は各地の芸能団体で活動する中で、「年々、郷土芸能に参加する若者が少なくなっている」と実感。小中高生へのアンケートを実施し、担い手を増やすための方策を考えてきた。参加への敷居の高さの払拭、効果的な魅力発信などの必要性を感じたメンバーは、趣旨に賛同する仲間を募って、虎舞の演舞披露と体験を組み合わせた交流活動を展開。市郷土芸能祭では、出演団体のポスターを作成して会場に掲示し、興味のある人と団体をつなぐ橋渡し的役割を担った。釜石を会場に開かれた三陸国際芸術祭では、若手芸能者の公開ディスカッションに参加して継承へのヒントを得たほか、自分たちの活動も発信した。
 
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昨年10月の三陸国際芸術祭で郷土芸能ゼミの活動を紹介する玉木さん、三浦さんら。左下白枠は今年2月の市郷土芸能祭で掲示した出演団体を紹介するポスター

 
 1年間のゼミ活動で担い手不足問題の深刻さを再認識し、活動継続の必要性を感じた5人。3年生になった本年4月、さらに活動を広げ、後輩たちに引き継いでいってもらおうと団体の設立を決意した。祭りや郷土芸能が盛んな大槌、山田両町の高校生にも声がけ。4校(釜石、釜石商工、大槌、宮古)から計29人が集まった。会の名称は人と団体を結ぶ“結”、水平線から顔を出す太陽が広く海面“凪”を照らす光景に自分たちの活動姿勢を重ね、「結凪會」とした。
 
 基本とするのは上下関係や参集の強制をなくした風通しのよい組織。既存団体への所属の有無、学校も関係なく、やってみたい人なら誰でも歓迎する。「メンバーには全くの未経験者もいるし、団体所属者も虎舞、神楽、鹿踊り、手踊りとさまざま。他校の人たちと触れ合うことで新たな面白さも生まれている」と玉木さん。担い手を増やすには、団体の垣根を越え、互いを尊重し協力し合える関係の構築も必要とし、自分たちでその一歩を踏み出したい考え。「目標はメンバー100人超え!」と活動の広がりを願う。
 
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釜石応援ツアーの参加者に虎舞を披露するため、お囃子や踊りの最終確認=19日、宝来館

 
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いいパフォーマンスを見せるため、本番直前までしっかりと練習

 
 山田町の伝承団体「山田八幡大神楽」で活動する宮古高定時制3年の佐々木晃耀さんは、同団体に所属する釜石高生に誘われて会に加入した。地元の各郷土芸能団体も担い手不足は共通の課題で、「全く郷土芸能に関わったことがない人、身近になかった人たちにこそ、体験を通して『楽しい』とか『かっこいい』と感じてもらえたら」と、体験活動を積極的にサポート。「参加をためらう要因の一つである昔からの敷居の高さを少しでもなくしていきたい」と意気込む。
 
 19日は、一般社団法人Blue Compass(ブルーコンパス)がラグビーワールドカップ2019釜石開催を機に継続する釜石応援ツアーの参加者に、虎舞演舞と体験の場を提供した。約50人の参加者は国内外から集まっていて、この日も英語での説明を交えて会の活動や虎舞の紹介を行った。
 
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子どもたちは迫力の舞におっかなびっくり。外国人客は笑顔で楽しむ=宝来館ロビー

 
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虎の生態を表現したさまざまな動きに目がくぎ付け。足さばきにも注目

 
 会のメンバーは1年生が全体の半数以上を占める。幼い頃から地元団体で虎舞に親しむ釜石高1年の及川椿姫さんはこの日、女子メンバー4人でお囃子の笛を担当した。高校入学のタイミングで会が発足。学校での郷土芸能活動にも意義を感じ、加入を決めた。沿岸地域には虎舞団体が複数あり、お囃子や踊りもそれぞれ異なるが、会の演舞では、それらを調和させてリズムを刻む。「お囃子の似ている団体もあり、いろいろな発見がある」と及川さん。演舞の披露で興味を持ってくれる人が多いことにも喜びを感じ、「今後は小学生とか小さい子たちにも体験の場を設けられれば」と願った。
 
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腰を低くして虎頭を操る虎舞独特の姿勢を教える会のメンバー

 
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お囃子の太鼓に挑戦する女の子。コツをつかむと上手にリズムを刻んだ

 
 副代表の山陰宗真さん(釜石高2年)は現3年生の活動を見てきた一人。若者を中心とした発信活動のきっかけを作ってくれた先輩たちに感謝し、自分たちもさらに活動を発展させていきたいと意を強くする。「若い世代の強みであるSNS発信を充実させ、もっと人を呼び込めるような活動ができれば。地元での体験会を増やすことはもちろん、県内外への遠征でその魅力を発信できたら」と今後を見据える。結凪會の活動は公式インスタグラムで発信していく予定。
 
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結凪會の今後の活動に期待! 高校生パワーで郷土芸能の魅力を発信していく

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