世界遺産「橋野鉄鉱山」高炉場跡で6月恒例の環境美化活動 新発見の“開山碑”見学会も

「みんなの橋野鉄鉱山」環境美化活動で草刈りに精を出す参加者=6日、高炉場跡
釜石市橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」高炉場跡で6日、市民らによる環境美化活動が行われた。1957(昭和32)年6月3日の橋野高炉跡国史跡指定を記念した活動は、指定60周年となった2017年から始められ、今年で10年目。清掃後、昨年11月に新たに発見された“開山碑”の見学会も初めて開かれた。参加者は普段立ち入ることができない場所にある石碑を間近で目にし、その大きさに圧倒された。
「みんなの橋野鉄鉱山」と銘打った同活動は、同市が誇る貴重な史跡への理解を深め、保護意識を高めてもらおうと市教委文化財課世界遺産室が開催。今回は市内外から20人が参加し、一番、二番高炉周辺と御日払所跡で草刈りを中心に行った。機械での除草のほか、石垣の隙間から伸びた雑草を鎌やせん定はさみで刈り取り。来訪者がより良い環境で見学できるように作業した。

高炉の脇を流れていた水路跡(右上)、御日払所跡(右下)の石垣もきれいに

草刈り機で広範囲を除草した佐々忠建設の社員ら
草刈り機で広範囲の除草に力を発揮したのは、現在、同鉄鉱山インフォメーションセンター展示更新工事に携わっている佐々忠建設(同市新町)の社員ら6人。佐々木正忠代表取締役は「社員にとっても郷土の歴史に触れるいい機会。ここは釜石の宝。みんなで意識的に守っていかなければ」と思いを込めた。
例年は清掃活動の後に、同遺産に関連した講演会を開いているが、今年は高炉場跡の山神社エリアで現地見学会が開かれた。三番高炉の東側に広がる山の斜面には「山神碑」と「牛馬観世音碑」、神社の建物の礎石が残る。橋野鉄鉱山の操業開始は1858(安政5)年。操業時の建物の配置などが分かる絵巻(61~63年頃作)にも神社があったことを示す鳥居が描かれている。69(明治2)年作の両石碑は現在地より高い場所にあった神社の近くに置かれていたとみられる。

建設業の職人らは石碑の建ち方にも興味津々

山神社跡(白枠矢印)、石割桜(黄丸)の場所からさらに上っていくと…
山神社跡からさらに上った先、見学エリアの柵の外側には、歴史的発見となった「開山碑」が鎮座。国有林地内のため、普段は立ち入ることはできないが、今回は許可を得て、石碑近くまで足を踏み入れることができた。同碑は昨年11月、高炉場跡のモニタリング調査中に偶然発見された。定点観測用の写真撮影で周辺を歩いていた世界遺産室の髙橋岳係長が、所々コケに覆われた花こう岩の表面に文字らしきものを発見。後日、コケをはがし調査したところ、石碑であることが分かった。

発見された「開山碑」(黄丸)は高炉場エリアを見下ろす高い場所にある

開山碑は人の背丈を超える大きさ。文字が刻まれている面は所々コケに覆われていた
自然に割れたとみられる岩の表面には、中央に不動明王を表す梵字と「開山」の文字、左右下には高炉建設の技術者で大島高任の補佐役「田鎖仲」と鉱山の事務方を担った支配人「市之助」の名前、「安政五戊午(つちのえうま)年九月十二日」の日付が刻まれる。同日付前後の複数の古文書から推測すると、最初の仮高炉(後の三番高炉)は安政5年6月に着工。約3カ月で完成し、9月に操業を開始したと考えられるという。「碑に刻まれる“9月12日”は仮高炉の実際の稼働開始を意味しているのではないか。不動明王は火の神様なので、高炉の安全操業を祈願して祭ったのでは」と髙橋係長。

石碑の文字は「ひかり拓本」で読み取ることができた=資料写真、解説図提供:市教委文化財課世界遺産室

髙橋岳係長の解説を聞きながら開山碑に目がくぎ付けとなる参加者
石碑は高さ2メートル以上、横幅約1.7メートルと、近くに行くとその大きさに圧倒される。文字が刻まれた岩の横には、片割れの岩が見られる。タガネが入った形跡がなく、自然の摂理で垂直面が生まれたことにも驚かされる。
花巻市から参加した小笠原直人さん(59)は橋野町出身。子どものころ、高炉場跡に近い場所で祖父母が食堂を営んでおり、「今日見た辺りも祖母に連れられて見に行った記憶がある」と話す。新発見の開山碑を初めて目にし、「まさか、あんな(足元の悪い)場所に石碑があったとは。全く知らなかったのでびっくり」と貴重な遺物を目に焼き付けた。今回はフェイスブックで同活動を知り、「地元にも協力したい」と参加。昨年、世界遺産登録10周年を迎えた同所に「また注目されて観光客がもっと来てくれるといい」と願った。

対面に横たわっているのが割れた岩の片割れとみられる(白矢印)

開山碑の周辺の様子。高炉の石組みにも使われた花こう岩がごろごろ。多くがこけむしている
橋野鉄鉱山インフォメーションセンターの展示室は6月からリニューアル工事が始まっている。同鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(8県11市23資産)の共通展示を導入するため、パネルや映像を更新。世界遺産登録後、進められてきた発掘調査の内容、本県の3世界遺産の紹介も盛り込むことになっていて、室内のレイアウト変更のための工事が行われている。公開は7月8日を予定する。(工事期間中はエントランスエリア、トイレのみ利用可能)

釜石新聞NewS
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