学びと休暇「どっちも楽しむ」 東京・文京学院大、釜石市で実践型インターンに挑戦

「釜石スタディケーション」に参加する文京学院大の学生ら=5月23日
学生が就業体験(インターンシップ)先の企業の課題解決に知恵を絞る「釜石スタディケーション」が5月16日から29日までの約2週間、釜石市内で展開された。文京学院大学(東京都文京区)が取り組む実践型教育プログラムで、今年で4年目。経営学部の学生10人が社会人の疑似体験、仕事終わりや休日のまち歩き、地方での生活を通じて視野を広げる機会にした。
同プログラムでは大学を飛び出し地方に滞在しながら授業とフィールドワーク(現地学習)を両立させる。スタディケーションは「Study(学び)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせ造語。同大学が10年以上にわたり交流を続ける釜石を実践地として継続実施している。
今年は酒造会社や水産加工会社、市役所など4つの企業、機関がインターンの受け入れ先に。学生たちはSNS(交流サイト)発信やデジタルマーケティング施策の提案、営業・品質保証業務、文化財調査などに取り組んだ。

藤勇醸造でインターンに取り組んだ学生(右)=5月18日
みそ・しょうゆ製造販売業、藤勇醸造(大渡町)では、阿久津優菜さんと伊藤四葉さん(ともに2年)がインターンシップに挑んだ。2人に託されたミッションは「市内の小学校で行う、みそ造り体験と講演会のPRスライドづくり」。5月18日に同社で会社の歴史や事業内容の説明を受け、みそ造りを体験した。
小学校でのみそ造り体験で講師を務めている「みそソムリエ」の小山和宏専務(61)、広報・商品開発などを担う小山明日奈さん(37)が2人の活動をサポート。スライドに盛り込みたい内容(▽創業124年の歴史▽みそのにおいと味の話▽発酵と腐るの違い▽みそのつくり方―など)を伝えた。聴講者となるのは児童だけでなく、大人の参加も見込まれることから、「分かりやすさに配慮しつつも、バランスの良いものに」「若い柔軟な感性で提案してほしい」と求めた。

藤勇醸造が市内の学校で行っているみそ造り体験の工程を確認

インタビューやみそ造り体験をしながらミッションに挑んだ
2人は週に3回ほど出勤し、工場でみその仕込み作業を見学したり、スライド作成を進めた。30日にまとめ発表として完成したスライドを披露した。小山専務は「丁寧に作り込んでいる。おおむねイメージ通り。伝えたいことや思いを届けられる」と評価。明日奈さんは「重要なポイントを限られた時間内にまとめてくれた。期待した柔軟性を見られたし、パソコンなどでの資料作成の便利な機能を教えてもらったり、逆に刺激をもらった」と感謝した。
同大の准教授らも同席。「みそは身近にあっても、どう作られるか知らない。みそ造りの背景、文化を知り、効能にも触れていて、大人が見ても面白い」などと感想を伝えた。

まとめ発表をする伊藤四葉さん(右)、阿久津優菜さん=5月29日
資料作りが得意という阿久津さんが中心になりスライドをまとめた。文章を簡潔に、写真を多用するなどして見やすさを重視。上々の評価を得て、うれしさをにじませた。大学生活の早い段階から社会経験を積みたいと参加。「課題を解決できるのが魅力。特技を生かせた」と笑顔を見せた。福島出身で、将来はデザイン分野での活躍を目指している。
伊藤さんは、地域を食で支えてきた同社の歴史に感銘を受けた。その感動をミッションに盛り込んだようで「納得のいくものを残せた」と充実感を漂わせた。神奈川の実家では母親がちまき屋を営み、自身も食に関心があり、将来的には「パン屋を」と想像。「東京の企業とは違った職場を見る機会になった。藤勇さんは地域の人との距離が近い『食業』を長く続けていて、学びの場にピッタリだった」と柔らかい笑みを浮かべた。

釜石の復興まちづくりに理解を深めるまち歩き=5月23日
23日にはプログラムに参加する学生みんなで市内のまち歩きをした。案内人は、釜石市総合政策課長の金野尚史さん(54)。只越町の市役所本庁舎前から鈴子町の三陸鉄道釜石駅に向かう道沿いに建つ災害公営住宅の特徴や、災害時の避難場所を示す避難誘導看標識の役割などを紹介した。
大町の市民ホール周辺では、東日本大震災後に市が復興まちづくりの中核に位置付けた「フロントプロジェクト1」事業について説明した。大型ショッピングセンターや文化施設、商店街と一体化して自由な通り抜けができる“まちの散策路”的な開放空間を作ることで、にぎわい創出につなげようと工夫。復興推進本部、オープンシティ推進室などで震災直後の復旧、復興後の将来を見据えたまちづくりに携わってきた金野さんは当時を振り返り、「いろんな人の協力で復興を遂げたのが釜石。まさに市民の総力戦」と熱く語った。

金野尚史さん(左)の話に耳を傾ける文京学院大の学生たち
復興の歩みをじかに見聞きした常松楓さん(2年)「復興事業には一つひとつに深い理由がある」と受け止めた。インターン先では遺跡見学や文化財の仕分け作業など「貴重な経験」への挑戦を楽しむ。釜石での生活も「思ったより食に困らない」と適応力も養ったようだ。
この後、三鉄に乗車し鵜住居地区へ向かった一行。地域公共交通の現状、中心市街地とは異なる復興まちづくりの実相、地方創生の取り組みを象徴するイベントとなったラグビーワールドカップ日本大会の会場となったスタジアムなどを見て回った。

学生は復興まちづくりを視点に散策して防災について考えた
学生リーダーの山後柊季さん(2年)は「講義形式では得られない学びで成長を」と臨んだ。各自、ミッションを果たすため努力はするが、「まずは楽しむこと。釜石生活を一番楽しんでいるのは自分」と主張。活動や仲間と過ごすことで、「見る力」に磨きをかけられたと感じていて、「地域に溶け込んで住んでいる人が見えていない魅力を発見して発信するのは面白い。ここでの気づきを学校生活、社会で生かしたい」と刺激にした。

釜石新聞NewS
復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム











