【新春に聞く】将棋に向き合う 釜石出身・小山怜央四段 変わらぬ姿勢 +「熟考」

年末年始に帰省した小山怜央四段。指導対局で子どもらと交流した
岩手県釜石市出身の将棋棋士、小山怜央四段(32)は4日、大槌町のシーサイドタウンマストで開かれたマスト子供将棋大会(釜石地域将棋文化普及実行委員会主催)に“審判長”(ゲスト)として登場し、指導対局にも当たった。プロ入りし3年目の今期(2025年度)は対戦成績の各部門で上位争いを演じ、連勝数は現在もトップを走る。古里に話題を届けてきた“憧れの存在”は年末年始に釜石に帰省。「研究、準備を重ね対局に臨む。スタンスは変えない。練習に励む」と、将棋に“一途な人”に新年の抱負を聞いた。
「対局も研究会も、1年目と変わらずやってきた。続けてきた成果が表れて実力以上のものが出せたのかな」。子どもたちが熱戦を繰り広げる将棋大会の会場の一角で、小山四段は25年をこう振り返った。

マスト子供将棋大会で熱戦の様子を見つめる小山四段
日本将棋連盟による棋士ランキング(9日時点)では、連勝数13で1位。「相手のミスを拾ったり、勢いで勝てた部分もあったから…」と、小山四段は謙虚に語る。今期前半は勝数や対局数でも上位に入るなど好調ぶりを見せたが、「落ちてしまった。うまくいかないと思ってしまう局面もあったり…」と低迷する中盤を回想した。
プロ棋士は対局や研究会に加え、テレビでの解説やイベント、将棋スクールでの指導なども行い、忙しい。勝てば対局が増え、スケジュールも重なったり詰まったり、準備の時間をしっかり取れない時もあるという。「大変だ」と話すが、プロ生活に慣れてきたこともあり「対局は続く。うまくリラックスしながらやっていきたい」と受け流す。

小山四段と子どもたちの対局に大人も関心を寄せる
年末から実家で過ごした小山四段。4日の将棋大会への参加が26年の“仕事始め”となった。大会前には多面指しで小中学生らと交流。「“ウマ”い手だったよ。だけど、盤面を広く見てみて。すごく良い手があるよ」などとアドバイスを伝えた。滝沢市から足を運んだ小学生山本悠暉さん(2年)は「(小山四段は)強かった」と憧れ、「強い友達がいっぱいいて、勝ちたいからもっと頑張る」と力にした。
実は小山四段、少年期にこの大会に出場していた。実行委の土橋吉孝実行委員長=日本将棋連盟釜石支部長=によると、「20数年前に第1回大会が行われ、怜央も参加。始めたばかりだったのもあって、全然勝てなかった。『勝ちたい』と頑張って、2回目の大会では優勝した」とニヤリ。その後も出場し、優勝回数が重なってきたある時、「自分ばかり勝つのは悪いと思ったのか、怜央が『もう出ません』と言ってきた。この地域では相手がいなくなった。それくらい強くなった」と笑い話にした。
大会は夏と冬の2回開催していて、今回で30回目。記念の大会には地元や県内の小中学生11人が出場し、初心者による新人王戦、経験者の名人戦の2部門で熱戦を繰り広げた。「年始から頑張っていてすごい」と目を細める小山四段。対局で経験を積み、「これからも強くなっていきましょう」とエールを送った。

大会審判長として出場者を激励する小山四段

新春企画として用意した「次の一手」を解説する小山四段
大会に出場する子どもや見守る保護者らに楽しんでもらおうと、小山四段はある局面での最善手を探す問題「次の一手」を出題。正解者に贈る色紙をその場でしたためた。選んだ言葉は「運気」「逆転」「覇気」「品行」など。もらった人が「意識してほしい」言葉だが、棋士としての自身も「大事にしたい」言葉でもあるという。
新年の抱負は「一局一局、しっかり準備して全力で臨む」。アマ時代から続けてきたであろうこの姿勢は、プロとなっても変えない。日々の大半は将棋のことを考えているようで、「練習に励みたい」と情熱を注ぐ。そして、色紙の中から「熟考」と記された1枚をピックアップ。「成績を伸ばすためには、しっかり考えて指すことが大事。当たり前だけど」と意図を話した。

2026年の抱負を「熟考」とした小山四段。成長を誓う
順位戦は持ち時間が6時間と長い。小山四段は「思いついた手をすぐに出してしまったり、集中力が持たなかったりする」と反省を口にした。「これと思っても立ち止まって考えられたら、全力を出し切れる。まだまだ伸びしろがあると思う」と分析。さらに「勝敗以上に、これまで指せなかった手を出せたり、何か成長を感じられる1年になれば」と向上心をのぞかせた。
将棋中心の生活を送る中、励みとなっているのが古里からの応援だ。帰省するたびにじかに届く声は「うれしいこと。頑張る糧になる」と小山四段。そして、指導対局などで交流する子どもたちから送られる熱視線に「憧れの存在となっている」と感じ、「身が引き締まる」と照れくさそうにはにかんだ。

憧れの小山四段に色紙を書いてもらい笑顔を見せる子ども
新年早々、将棋に打ち込む子どもらの姿は小山四段を刺激。「最近は負けが込んだり少し調子を崩しているが、少しずつ上げていきたい」と集中力を高める。つかの間の休息を楽しみ、勝負の世界へ。26年初の対局は8日の順位戦8回戦。高橋道雄九段(65)に勝ち、6勝2敗とした。「2敗だと昇級はない」というが、「勝ちを積めば、来期につながる」と視線はすでに未来へ。竜王戦ランキング戦(6組)、棋王戦コナミグループ杯予選(4組)も控える。

将棋を通した交流を刺激にする小山四段と子どもたち
「岩手の将棋界が発展してほしい。みんなで将棋を続けて、一緒に頑張ろう」とメッセージを残した小山四段。今年は「岩手での仕事がいろいろある」と予想し、「見守ってもらえたら。応援をお願いします」と控えめな笑顔を見せた。
2026年も小山四段の活躍に注目だ。

釜石新聞NewS
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