釜石新聞News 2025年プレーバック<その2>


2025/12/26
釜石新聞NewS #地域

 別れ、積み重ねる歩み、そして新しい挑戦-。主要な出来事を振り返る中で、「入り切らなかったけど、どうしても外せない」場面もあった。静かに、この1年を支えてきた出来事を写真でたどる。
 

惜しまれた別れ

 
 居酒屋「お恵」の店主として釜石の飲食文化を支えてきた菊池悠子さんが12月、急逝した。86歳だった。名物飲み屋街「呑ん兵衛(のんべえ)横丁」でのれんを揺らし、豪快な笑い声とあたたかいもてなしで常連客らに親しまれた。東日本大震災を経験。横丁閉鎖後も市街地で店を営んできたが、持病の悪化などで6月に惜しまれつつ、のれんを下ろした。釜石飲食店組合の組合長を務め地域の飲食文化をけん引し、復興にも尽力したとして、10月に市勢功労者として表彰された。
 
常連客に「お恵さん」と呼ばれ親しまれた菊池悠子さん。左の写真は最終営業の6月25日に店先にのれんを出した菊池さん

常連客に「お恵さん」と呼ばれ親しまれた菊池悠子さん。左の写真は最終営業の6月25日に店先にのれんを出した菊池さん

 

節目を迎えた歩み

 
 釜石市の西の玄関口、道の駅釜石仙人峠は4月で開業10周年を迎えた。釜石自動車道のインターチェンジに隣接する施設は、地元名物の甲子柿や野菜、同市の特産品などを販売。人気の釜石ラーメンを提供する食堂もあり、食や観光の情報発信基地として機能する。和山牧場の管理、運営を担う一般社団法人栗橋地域振興社は創立70周年。牧場地内では肉牛の放牧のほか、風力発電事業が行われている。来年は更新された風車が運転開始予定。新たに養鶏農場も操業する見込みで、参入事業者と手を携えながら牧場の未来を創造する。
 

「開駅10周年」を迎えた道の駅釜石仙人峠。記念の大創業祭は多くの買い物客でにぎわった=4月27日

「開駅10周年」を迎えた道の駅釜石仙人峠。記念の大創業祭は多くの買い物客でにぎわった=4月27日

 

栗橋地域振興社の創立70周年記念式典で万歳三唱する出席者。記念事業で畜産業発展に貢献した先人の業績パネル(右下)を設置=9月28日

栗橋地域振興社の創立70周年記念式典で万歳三唱する出席者。記念事業で畜産業発展に貢献した先人の業績パネル(右下)を設置=9月28日

 

新たな挑戦、ここから

 
 エンターテインメントでまちを盛り上げようと、釜石市初のタレント養成所「C-Zero(シーゼロ)アカデミー」が4月に開校した。演技やダンスなど芸能活動に生かせる知識、技能を学ぶ基礎科に1期生23人が入校。月に8回程度、レッスンを重ねるほか、第一線で活躍する映画監督や演出家らの特別指導を受ける機会も得て、力を蓄積。ラジオドラマや短編映画の出演が決まるなど、夢実現への歩みを着実に前進させている。

 
釜石初のタレント養成所「C-Zeroアカデミー」の開校式に臨んだ第1期生、講師陣ら=4月20日

釜石初のタレント養成所「C-Zeroアカデミー」の開校式に臨んだ第1期生、講師陣ら=4月20日

 
第一線で活躍する演出家の特別指導を受け演技力に磨きをかける生徒ら=8月31日

第一線で活躍する演出家の特別指導を受け演技力に磨きをかける生徒ら=8月31日

 

まちを支える女性の姿

 
 医療、防災、商いの現場で奮闘する女性たちを取材した。命と向き合う新人看護師は、金沢医大が設けた奨学金制度「釜石枠」を利用して勉学に励んだ1期生。火災や災害から地域を守るため活動する消防団員は「準中型」免許を取得して、いざという時に発揮できる力を蓄える。移住者や子育て中の母親らが立ち上げた団体は、地域で愛された公園を新たな憩いの場として開放。女性たちの活躍が、まちに新たな風を吹き込んでいる。

 
患者に寄り添える看護師を目指す佐藤綺美さん。一つ一つ経験を積み重ねていく=5月

患者に寄り添える看護師を目指す佐藤綺美さん。一つ一つ経験を積み重ねていく=5月

 
消防車両の運転席から顔をのぞかせる小林真由美さん。消防団に入団し3年目となる=10月

消防車両の運転席から顔をのぞかせる小林真由美さん。消防団に入団し3年目となる=10月

 

遊び場、農園、カフェを併設する「ココイロこすもすファーム」を8月に開業した石塚佳那子さん=10月

遊び場、農園、カフェを併設する「ココイロこすもすファーム」を8月に開業した石塚佳那子さん=10月

 

受け継ぐ郷土芸能、つなぐ祭り文化

 
 釜石市平田の館山神社の例大祭では11年ぶりに祭り行列が繰り出した。2011年の東日本大震災で津波被害を受けた同地区。復興事業が完了したまちをみこしや神楽、虎舞団体が練り歩き、久しぶりのにぎわいに住民らが喜びの笑顔を広げた。今年は、各地の祭りで奉納される郷土芸能を次世代につなぐ取り組みも活発化した。少子高齢化で担い手不足が課題となる中、市が体験教室を初めて企画。釜石高生はゼミ活動で人材確保の方策を考えた。ゼミメンバーを中心とする生徒有志は虎舞で国際交流し、地域の伝統文化発信に一役買った。

 
11年ぶりに行われた館山神社(平田)例大祭のみこし渡御。担ぎ手たちが笑顔を見せた=5月11日

11年ぶりに行われた館山神社(平田)例大祭のみこし渡御。担ぎ手たちが笑顔を見せた=5月11日

 
郷土芸能の担い手育成を目指し初めて開かれた体験教室。松倉虎舞、太神楽が演舞を披露し、お囃子などを体験してもらった=8月11日

郷土芸能の担い手育成を目指し初めて開かれた体験教室。松倉虎舞、太神楽が演舞を披露し、お囃子などを体験してもらった=8月11日

 
郷土芸能伝承を考える釜石高ゼミの生徒を中心とした有志が釜石を訪れた外国人観光客に虎舞を披露した=10月10日

郷土芸能伝承を考える釜石高ゼミの生徒を中心とした有志が釜石を訪れた外国人観光客に虎舞を披露した=10月10日

 
■後記
 釜石新聞NewSをご覧いただいている皆様、本年のご愛読ありがとうございました。大きなニュースの陰で、確かに積み重ねられた一年の“輪郭”はいかがでしたか?思い返したり、会話のきっかけになりましたら幸いです。どうぞ穏やかな年末をお過ごしください。そして、新しい年が皆様にとって穏やかで希望に満ちた一年となりますように。

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