読書の秋だから!? 釜石市と東京大の連携イベント「海と希望の学園祭」 テーマは“本”

本を通し交流が広がった「海と希望の学園祭」
釜石市と東京大学がタッグを組み展開する交流イベント「海と希望の学園祭 in Kamaishi」は22日と23日、同市大町の市民ホールTETTOを主会場に開かれた。4回目となった今回のテーマは「本」。同大教授らが“推し本”との思い出を振り返るトークを繰り広げた。市が進める「本のまちプロジェクト」にちなんだもので、PRポスターコンクールの表彰式やコンサートを開催。鉄文化や郷土芸能にまつわる物語に触れる鉄の学習発表会も催され、新たな“知”との出合いや読書の秋を体感する機会とした。
「いつでも、どこでも、だれでも」をキーワードに読書に親しめるまちづくりを目指し、今年から本格的な取り組が進む同プロジェクト。市内8地区の生活応援センターにある図書コーナーを充実させたり、市広報紙などで市民のおススメ本を紹介している。TETTOにも可動式の本棚「お楽しみ図書館」がお目見え。誰かが読み終えた本が棚に並び、読みたい誰かが手に取る方式で、気になる一冊との出合いを楽しむ姿がみられた。
TETTOに置かれた「本のまちプロジェクト・お楽しみ図書館」
市民らを対象に10月末まで募集したPRポスターコンクールの表彰式は22日に実施。市長賞に輝いた今入美智瑠さん(30)の作品「開けば飛び出す物語」は、読書の楽しさやページをめくるワクワク感が表現されている。ほか、未就学児から中学生まで7人が入賞。「日本一、本を読むまちにしたい。読書をきっかけに新しい交流が生まれることを期待」と話した小野共市長らが入賞者に賞状を手渡した。

本のまちをPRするポスターが並ぶ会場で表彰式が行われた

本や物語にちなんだ曲が披露されたコンサート
イベントは同大や社会科学研究所(社研)、大気海洋研究所(大海研)、先端科学技術研究センター(先端研)と結んだ覚書・協定に基づいたもの。生産技術研究所(生研)を加え、各種研究をパネルなどで紹介した。同大の玄田有史副学長や4研究所長、釜石市の高橋勝教育長によるトークイベントは「大切な本」をテーマに和やかに展開。「発見がある」本との出合い、「複数冊を同時に読み進める」など独自の読書スタイルを明かした。

「大切な本」にまつわるエピソードを語る東京大教授ら

東京大学社会科学研究所の所員らの“推し本”がずらり
社研の所員らの“推しの本”42冊を集めた展示コーナーも登場。宇野所長が監修した「選挙、誰に入れる?」など社会科学関連度が高めのものから、「不良のための読書術」など関連度は低めながらも気になるタイトルの本がずらりと並んだ。市内の及川幸世さん(68)は「普段読まないようなものもあったけど、紹介文を見て興味を持った。偏らず、いろんなものを広く浅く読んでみたい」と刺激にした。
海を身近に感じられる展示やワークショップもあり、親子連れらが楽しんだ。岩手大釜石キャンパスは海生生物に触れられるタッチプール、文京学院大(東京)の学生クループはペットボトルのキャップなどを使った巨大絵本の制作体験などを用意。大海研の作品展示の一つ、ヤドカリを模した巨大バルーンアートは写真スポットとして人気だった。

ヤドカリを模した巨大なバルーンアートは子どもに人気

来場者は海に関する展示やワークショップを楽しんだ
今回の学園祭は、複数のイベントが同時開催され、盛りだくさんの内容に。環境省の「脱炭素先行地域」に選定されている釜石市で進行中の取り組みを紹介する「ゼロカーボンフェスタ」はイオンタウン釜石も会場となり、東北電力グループが岩手大生のサイエンスショーや脱炭素化に向けた行動を学ぶアプリの体験などを用意した。
手回し発電や磁力を活用した釣り遊びを楽しんだ小学生藤元爽和さん(3年)は「学校での科学の実験が楽しみなった」とはにかみ、妹の叶和さん(1年)はTETTOで巨大バルーンアートの中に入る体験が「ふわふわで不思議だった」と目を輝かせた。母の聡美さん(40)は「いろいろなことに興味を持ったようだ」と見守った。

同時開催の「ゼロカーボンフェスタ」を楽しむ子どもら
脱炭素化に向け、東北電力は太陽光発電など再生可能エネルギーを活用した各種メニューを提案。同社岩手支店の佐藤利幸部長(岩手三陸営業所長も兼務)は「脱炭素と聞くとハードルが高いと感じられがちだが、実際は身近なところからできる取り組みがいくつもある。体験を通して、感じてもらえたら」と期待した。
鉄の学習発表会は釜石PITであり、釜石小5年生(11人)の代表5人が「鉄の町釜石」と呼ばれる理由を紹介した。釜石の鉄文化や戦争の歴史、暮らし、郷土芸能などを散りばめた物語を朗読で伝える「かまいしのこえ」も上演。京都を拠点に活動するアーティスト集団「安住の地」の作家・演出家、私道かぴさんが地元の人たちに話を聞いて創作し、釜石のタレント養成所「C-Zero(シーゼロ)アカデミー」の生徒らが言葉に感情をのせ届けた。

鉄の学習発表会で発表する釜石小5年生。佐々木結音さんは「鉄の連続出銑ができるまで諦めず努力したのがすごい」と感心した

私道かぴさん(右の写真)が創作した短編作を朗読で披露した
朗読に耳を傾けた佐々木伸一さん(81)は、釜石製鉄所OBで私道さんに話題を提供した一人。「鉄の話、まちの様子、住む人の思いをよくまとめてくれた。私たちの代わりに伝えてくれて、うれしい」とにこやかに話した。
23日は、海に関する本や南極の魅力を紹介するトークイベントなどが行われた。

釜石新聞NewS
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