知ってほしい!「大槌刺し子」 釜石商工高生、地域イメージし商品づくり 「よいさ」で販売へ


2025/09/18
釜石新聞NewS #地域

一針一針に思いを込めた手作り品をPRする釜石商工高生

一針一針に思いを込めた手作り品をPRする釜石商工高生

 
 釜石商工高(小松了校長、生徒176人)の総合情報科3年の有志5人が、課題研究の授業の一環で「大槌刺し子」の技術を学んでいる。伝統文化の発信と担い手不足の解決に向け取り組む中で、「普及は地元から」と考察。地域をイメージしたデザインを施した商品を作り、9月23日に開かれる祭り「釜石よいさ」の会場で販売することにした。高校生らしい発想から生まれたデザインとの出合いがあるはず。生徒たちは「一針に込めた思いを感じてほしい」とアピールする。
 
 同校の課題研究で大槌刺し子をテーマにするのは2年目。担い手の育成を考える中で技術の習得にも挑み、昨年は大槌刺し子のブランド「SASHIKO GALS(サシコギャルズ)」の商品づくりの一部を担ったほか、ブランドを東京で紹介する販売会に参加するためクラウドファンディングを実施。販売内容に関わる計画やマーケティング、広報、交通費の算出などに関わり、商業系の学びも深めた。
 
 今年は、捨てられるはずだった廃棄物や不用品に手を加え、より付加価値の高い商品へと生まれ変わらせる「アップサイクル」という視点を取り入れた作品づくりに挑戦。一定の間隔で同じ方向に刺していき、幾何学模様で布地を埋め尽くす「一目(ひとめ)刺し」の技術習得を目指し、週3時間、大槌刺し子の職人から学んでいる。
 
課題研究で生徒たちがつくった一目刺しの刺し子作品

課題研究で生徒たちがつくった一目刺しの刺し子作品

 
 「持続可能な商品づくり」として選んだのは、布でアルミなどの金具を包んだ「くるみボタン」のストラップ。「伝統文化の発信は地元から」と考え、人が集まるイベントでの販売も計画した。それが学校祭(10月)と、地域の祭り・よいさ。より関心を持ってもらえるよう、「釜石と言えば」と思い浮かべた「海」をモチーフにした図柄も取り入れ、5人それぞれがイメージしたデザインを布に描いている。
 
 9月3日には、刺し子を施した布と金具などを組み合わせる作業を授業の中で行った。講師は大槌刺し子事務所スタッフの佐々木加奈子さん(48)。生徒たちは一人30枚、刺し子作品を持ち込み、仕上がり具合を確認してもらった。「糸の状態が緩いね。直せるものはしっかりと」「商品は見栄えが大事。買う人の目線になって」と、ものづくりに必要な視点や大切にすべき心得を教わった。
 
佐々木加奈子さん(手前左)に教わりながら作品づくりに挑戦中

佐々木加奈子さん(手前左)に教わりながら作品づくりに挑戦中

 
刺し子の仕上がりを確認し、くるみボタンづくりを進める

刺し子の仕上がりを確認し、くるみボタンづくりを進める

 
 今回は使われなくなった藍染めの布を再利用する。縫い目が加わった布は厚みが増し、くるみボタンづくりは予想外に苦戦。菊池風音さんは「不器用だから難しいし、大変」と苦笑いした。それでも地域の伝統文化に触れ、「趣味で続けていけたら」と楽しみながら取り組む。海柄のモチーフとして選んだのはヒトデ。「海の星だから、希望という意味を込めた。買ってくれる人の希望になるものになったらうれしい」と期待する。
 
専用の打ち具やハンマーを使った作業に力が入る

専用の打ち具やハンマーを使った作業に力が入る

 
かわいく見えるのは…中心を決める作業は慎重に

かわいく見えるのは…中心を決める作業は慎重に

 
 菊池さん以外の生徒がモチーフにした海柄には、魚やホタテ貝がある。クラゲは2種あり、「絆、再生」との意味や、「きれいだから」といった素直な気持ちを込めたという。「お気に入りのものを手に取ってほしい」。授業のほか、休み時間も使いながら手を動かしている。
 
 生徒たちが課題研究に熱を込める理由の一つが、大槌刺し子の立ち上がりの物語にある。東日本大震災で被災した女性たちの生きがいづくりにと、2011年に復興支援プロジェクトで発足。「おばあちゃんたちが避難所で暇にしていた時に始まったというのが心に響いた。残ってほしいし、守りたい」と、5人は同じ思いを重ね合わせる。
 
生徒たちが思いを込めて手づくりする刺し子のくるみボタン

生徒たちが思いを込めて手づくりする刺し子のくるみボタン

 
 釜石よいさは23日に釜石市鵜住居町の釜石鵜住居復興スタジアムで開かれる。午前11時半開場。釜石商工高生の販売ブースは、よいさグッズ販売や縁日コーナーなどが並ぶ「おまつり広場」の一角に設けられる予定。

釜石新聞NewS

釜石新聞NewS

復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。

取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム


釜石のイベント情報

もっと見る

釜石のイチ押し商品

商品一覧へ

釜石の注目トピックス