深夜の「おや?」が命を救う 高齢者見つけ介抱 2人に感謝状 釜石警察署


2025/02/04
釜石新聞NewS #地域 #防災・安全

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三浦正人署長から表彰状を受けた菊池匠さん(中)、菅原晃輝さん(左)

 
 釜石警察署(三浦正人署長)は1月27日、高齢者を発見し、適切な措置を講じて警察活動に協力した釜石市内在住の自営業・菊池匠さん(33)、アルバイト・菅原晃輝さん(58)に署長感謝状を贈った。2人は「深夜の路上を一人で歩いている高齢者の異変に気づいて介抱した」という点で共通するが、実は異なる事案。ただ、同じ日、同じ時間帯に発生するという偶然が重なった。高齢化が進む中、こうしたケースは「増える懸念も」と同署。「地域を知る市民の目が必要。おやっと感じたら110番通報を」と求める。
 
 同市中妻町の同署で、三浦署長が2人に感謝状を手渡した。三浦署長は「奉仕の精神によって命が救われた。社会的に意義深い。今後もご協力を」と謝意を伝えた。
 
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釜石警察署で行われた感謝状贈呈式

 
 同署などによると、昨年12月22日午前2時すぎ、立て続けに2件の110番通報が寄せられた。「家族(高齢)の姿が見えない」「ふらついていた高齢者を保護している」。つながった―と思いきや、実際は異なる事案だった。対象となる高齢者は2人。同時間帯に市内2カ所で似たような事柄が発生していた。
 

違和感、見逃さず動く

 
 菊池さんは22日未明、妻まみさん(34)が運転する車で帰宅途中に、新町の国道283号を住吉町側から横断する男性(80代)に目が留まった。いったんは通り過ぎたものの、「ふらふらしていた。なんか変だ」と感じたため、まみさんに「戻れ」と伝えた。
 
 車から降りた菊池さんが「こんな時間に何してんの?」と男性に声をかけると、「たばこを買いに行く」と答えが返ってきた。男性の様子をうかがうと、長時間歩いたのか衰弱しているように見え、外は寒いからと車に乗せた。そして、「直感」で110番通報。午前2時5分頃だった。
 
 その後、到着した警察官が男性を自宅まで送り届けた。男性の家族は、その時に初めて男性が外に出ていたことを知ったようだったという。男性には認知症の疑いがあったとのこと。
 
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三浦署長から感謝状を受け取る菊池さん

 
 感謝状の贈呈には、まみさんも同行していて、「あの時は、知らない人を車に乗せるのが少し心配だった。けど、無事でよかった」とほっとしていた。一瞬の違和感を見逃さなかった菊池さんは「おかしいと感じたりした時は協力したい」と胸を張った。
 

高齢者の行動 想像して対応

 
 一方、菅原さんが手助けをしたのは女性(80代)で、場所は大只越町内の路上だった。新聞配達中、あるグループホームの前を通りかかった際、施設職員から近くに住む女性がいなくなり、探していることを聞いた。
 
 「高齢の女性が歩くとしたら…」と歩行速度や思考を想像し、普段の配達コースを変更して作業していると、ガードレールにつかまりながら歩いている女性を発見。一度は通り過ぎたが、女性が時折胸のあたりを抑え、立ち止まっている様子が気になり、戻って声をかけた。「どこに行くの?」「家はどこ?」「大丈夫?」。声をかけ続けていると、警察車両が通りかかった。
 
 実は警察では、午前2時12分頃に家族からの通報を受け、女性を探していた。認知症の疑いがあり、グループホームの利用者でもあった女性を心配する声がつながり、女性は夜が明けきらないうちに無事、家族のもとに帰ることができた。
 
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三浦署長から感謝状が贈られた菅原さん

 
 菅原さんは「特別なことをしたわけじゃない。やれる範囲でやったこと」と静かに振り返った。ただ、そうした行動には、昨年亡くなったという母親の姿が思い出されたからとも。「おふくろにやってやれなかった分の孝行、できたかな」とつぶやいた。
 
 2件とも発見は深夜で、冬期で冷え込みも厳しい。当時の気温は3、4度。発見や声かけが遅れれば、命に関わる事故などに遭遇、発展していたかもしれない。
 
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高齢者を手助けした菅原さん(左)、菊池さん(中)

 
 同署生活安全課の高橋友一(ともかず)課長は、高齢化の進展で同様の事案が増える可能性を指摘。その上で、「(署では)夜間は当直の人員が限られ、地域を知る人の目の重要性を改めて感じている。生活の中で、いつもとは違うと感じたら通報してほしい」と強調する。加えて、交通安全分野の視点“ながら見守り”を広げたい考えで、「散歩しながら、通常の生活をしながら、地域ぐるみで見守りをしていければ」と協力を呼びかける。

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