釜石市の新庁舎建設 3月、いよいよ着工へ 住民説明会「積極的に…けど心配」
着工間近となった釜石市役所新庁舎建設の住民説明会
巨大地震による津波想定(国・県公表)を受けた計画の見直し、建築工事落札事業者の辞退による再入札などで着工が遅れていた釜石市新庁舎の建設が3月、いよいよ本格化する。新たな工事業者が決定し、着工間近となった2月17日、市は大町の市民ホールTETTOで住民説明会を開催。建設予定地の天神町やその周辺地区の住民を中心にした市民約30人に庁舎建設の概要、スケジュール、工事の安全対策などを伝えた。
小野共市長が新庁舎建設の検討経過などを紹介した後、市新庁舎建設推進室の洞博室長が建設計画の概要を説明。新庁舎は鉄骨鉄筋コンクリート造り4階建てで、車庫棟なども含めた延べ床面積は計約8800平方メートル。敷地を1~2メートル程度かさ上げするが、県の想定では浸水域とされ、ピロティ方式を採用し、1階フロアには機材や書類などの配置を最小限する。一時避難場所として活用を想定し非常用発電設備、受水槽などの防災機能も備える。
新庁舎の建物外観イメージ図。市は26年春の開庁を目指す
現庁舎からの移転費用などを含む総事業費は約82億円。うち、建設費は7億5500万円増え、76億6300万円になる見通しだ。財源は庁舎建設基金、市債発行など。防災・減災事業を対象とする国庫補助の活用も見込む。
施工者の戸田・山﨑特定建設工事共同企業体(JV)の現場代理人堀川俊永さんが工事に伴う交通規制、騒音や振動など安全対策について話した。工期は3月1日から25年12月下旬までの約24カ月間。周辺にこども園や復興住宅などがあることから、昼休憩の時間をずらしたり、高性能防音壁などを設置し、「安全確保を最優先する。周辺への影響の少ない方策を講じる」と強調した。
新しい釜石市役所の建設予定地
参加者から、「積極的に進めてほしい」との声があったほか、「かさ上げした土地が災害時に沈下することはないのか」「建物が高くなることで日当たりが悪くなるのでは」といった不安をのぞかせる人もいた。防災機能についての質問も上がった。質疑の後も、生活環境の変化を心配する声は残り、市関係者は「長く使ってもらえるような庁舎をつくるため、引き続き意見を寄せてほしい」と求めた。
説明会後、個別により詳しい解説を聞く住民もいた
老朽化が進む釜石市役所の現庁舎(築70年)
只越町にある現庁舎は老朽化が著しく、行政機能が分散していることや耐震性の問題もあって、1986年に新庁舎建設の検討がスタート。2011年の東日本大震災を受け、復興まちづくり基本計画のフロントプロジェクト2に位置づけ、都市機能の融合や拠点性の向上などを視点に議論を深めてきた。19年に新市庁舎の建設基本計画の策定や基本設計業務が完了。津波新想定の公表によって計画の見直しなどの対応が幾たびか必要となった。見直しを重ね、いざ発注手続の段階になると、社会情勢の変化に伴う資材の高騰の影響もあって予定より時間を要する結果に。再入札の結果、昨年12月に請負業者を決定し、やっと本格的な着工にたどり着いた。
釜石新聞NewS
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