追悼、防災の祈り込める竹灯籠 釜石・根浜の津波避難階段で点灯開始 「1.1」被災の能登半島にも心寄せ
竹灯籠が設置された津波避難階段を上ってみる点灯式参加者=11日
東日本大震災命日の「3.11」まで1カ月となった11日、釜石市鵜住居町根浜地区の津波避難階段に竹灯籠が設置された。13年前の同震災で全域が津波にのまれ、甚大な被害を受けた同地区。竹灯籠の明かりで震災犠牲者を追悼し、防災意識を高める取り組みは今年で3年目となる。3月31日まで土日祝日の午後5時から同7時まで点灯。今年は1月1日に発生した能登半島地震の犠牲者を弔い、現地の早期復興を願う気持ちも込める。
11日午後5時から行われた点灯式には、灯籠製作に協力した市民や階段近くのキャンプ場の滞在客など約50人が集まった。取り組みを行う根浜海岸観光施設「根浜シーサイド」の佐藤奏子さん(かまいしDMC地域創生事業部根浜・箱白地域マネジャー)が趣旨を説明。地元町内会「根浜親交会」の佐々木三男会長(62)が発電機の点灯スイッチを入れると、灯籠に照らされた階段が浮かび上がった。点灯を見守った人たちはさっそく階段を上り下り。美しい光景を目に焼き付けるとともに、津波災害時、いち早く高台に逃れられる階段と周辺の様子を脳裏に刻んだ。
竹灯籠は111段の階段の手すり沿いに設置。温かな明かりが「命を守る道」を照らす
階段頂上部には4本まとめた灯籠も。美しい模様が目を引く
キャンプ場利用者も迅速避難が可能な階段。この日も冬キャンプを楽しむ人たちが多く訪れていた(写真左上がオートサイト)
この階段は、キャンプ場から高台の市道箱崎半島線(海抜20メートル)に最短で駆け上がれるルートで、2021年春に完成。施設ではキャンプ場利用客には必ず周知しているほか、避難訓練などで災害時のシミュレーションなどを行っている。竹灯籠の点灯は階段の場所を知ってもらい、いざという時の避難行動のあり方を考えてもらうことも狙いの一つ。
家族4人で灯籠製作にも参加した同市の櫻井真衣さん(12)は「自分で作ったものが飾られてうれしい。(明かりがつくと)とてもきれい」と感激。生まれる7カ月前に起こった大震災。学校の授業で当時のことを学び、根浜地区の人からも話を聞いた。能登半島地震の被災状況もテレビなどで目にし、「東日本大震災と似ていると思った」という。地震や津波の怖さを知り、「(もし遭遇したら)冷静に判断して、高台や避難場所にしっかりと逃げたい。この階段を使うことで多くの人の命が救われれば」と願う。
自分たちで作った竹灯籠を眺める親子
チョウやトンボのデザインも(写真左側)。大小の穴からもれる光で辺りは幻想的な空間に…
灯籠は地元の山林から切り出した間伐竹を利用。1月に製作体験会を2日間開き、市内の親子らの協力で53本を完成させた。竹の中のLED電球をともす電力は、地域から出る廃食油を精製したバイオディーゼル燃料で発電。地域資源を活用し、環境にも配慮した活動で、持続可能な地域づくりへの一助とする。
同所から近い市指定の緊急津波避難場所は、震災後に盛り土整備された復興団地の山側にある「東の沢奥根浜墓地」。同団地は2017年に完成。同階段を上った先の市道を箱崎方面に少し進んだ所にある。
「のと」の文字を刻んだ灯籠も(中央)。能登半島地震被災地への祈りも込め、3月まで土日祝日の午後5~7時点灯
釜石新聞NewS
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