ターゲットは石!?…近代製鉄発祥の地で宝探し こどもエコクラブ 釜石鉱山周辺の自然体感
釜石鉱山で鉱石探しを楽しむ子どもたち
釜石市は、製鉄の町。良質な鉄鉱石が豊富にあることもあって、江戸時代末期には甲子町大橋に建設された洋式高炉で日本初の鉄鉱石を用いた製鉄(連続出銑)に成功し、近代製鉄発祥の地として知られる。が、釜石にあるのは鉄鉱石だけではない。採掘時には別の鉱石に出合うこともあり、中には“宝石”を隠しているものも。その宝を求め、子どもたちがトレジャーハントに挑んだ。
宝探しは3日、発祥の地・釜石鉱山周辺で行われた。子どもたちが身近な自然に親しみながら環境保護の意識を育む「こどもエコクラブ」(市主催)の活動として企画。子ども会員約40人に保護者も加わり、80人ほどのハンターが集まった。
宝探しに備えて工藤さん(右)から知識を仕入れる
鉱山の歴史に関する資料を展示公開する旧釜石鉱山事務所の見学から開始。施設の管理を担当する工藤淳子さん(市世界遺産課)が案内し、子どもたちは鉱物室に並ぶ産出岩石からターゲットとなる石の特徴を確認した。
さまざまな石が積まれた敷地内の一角に移動して鉱石採取に挑戦。ターゲットは▽鉄鉱石▽銅鉱石▽柘榴(ざくろ)石▽灰鉄輝石▽緑簾(りょくれん)石▽結晶質石灰石-など9種類。ハンターは色や模様、磁石がくっつくかなどの情報を頼りに探し、工藤さんが種類を確認した。
鉄鉱石や一緒に採掘された鉱石が積まれた山
「これがいいんじゃない?」鉱石探しにみんな夢中
「これだ!」と手にした石を自慢する子どもたち
柘榴石狙いの福士大成君(甲子小4年)は、集めた石を市職員にハンマーで割ってもらい、見事に宝石ガーネットの結晶をゲット。「よし!」と破顔した。もともと石に興味はあったが、エコクラブの活動で視野の広がりを実感。「知らなかったことを学べるし、いろんな人と交流できるから楽しい。鉄の歴史や文化をもっと勉強してみたい」と目を輝かせた。
石割り作業を興味深く見つめる子どもたち
「誰だキミは?」「ガーネットです」。お宝ゲット
こちらは緑簾石。「エピドートの結晶だ」
ほかにも、重みのある石を割ると銅が混じっていたり、白い石が「大理石だね」と確認されたり、参加者はそれぞれ宝を手にした。中には複数の特徴が見られ判断に迷うものがあり、「自分で調べてみる」と探究心をくすぐられた子も。鉱石探しを通じ、鉄とともに歩んできた地域のルーツに触れた。
最後はネイチャーゲーム体験。自然の中に置かれた人工物の数を見極める「カモフラージュ」で、観察の目を養った。伸び伸びと遊びまわる子どもたちの姿を少し離れた場所から見守っていた福士君の父大輔さん(42)は「自然に触れることで、気づきを得られる。言いたいことはあるけど、口は挟まない。自分から行動することで何かを感じてもらえたら」と期待。エコクラブの活動は年に6回ほど計画されるが、「増やしてほしい」と望んだ。
人工物(黄色い囲み)を探すネイチャーゲームも体験
宝を求めて集ったハンターは秋色も満喫する
エコクラブサポーターの加藤直子さんは、大橋での鉄づくりの成功にちなんで制定された「鉄の記念日」(12月1日)に触れながら、「たくさんの人が働きながら頑張ってくれた場所。そこで使われたのが、地球の中にある土や石」などと自然環境と人間のかかわりを伝えた。鉄づくりの歴史から地球の成り立ちや、石の生成過程に興味持ってもらうのが狙い。周囲は秋色が増し、色づいた木々の葉が落葉していて、「冬の準備を始めている」と季節の移ろいを感じる楽しさも共有した。
これまで生物や星空の観察を実施。昆虫採集は天候の影響で中止したが、番外編的に市外での屋外活動・キャンプを催した。次回は12月上旬に海の生物観察会(ウニの解剖など)を予定。来年1~2月ごろの活動も計画中だ。
釜石新聞NewS
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