サンマ船 釜石・白浜漁港(箱崎町)から出漁 北の海へ、見送る家族ら「無事であれ」
白浜漁港から北海道へ向かうサンマ船「第二十八明神丸」
秋の味覚・サンマを求めて、釜石市箱崎町の白浜漁港からサンマ漁船「第二十八明神丸」(19トン)が2日、拠点となる北海道の釧路港へ向けて出港した。近年、サンマ漁を取り巻く状況は厳しく、不安を抱えての船出に。そうした中でも、見送る地域住民の表情は明るく、浜は活気づいた。
同漁港からの出漁は40年ほど続くが、今ではこの船が唯一。船主の栗澤重之さん(61)を船頭に、息子の仁(まさし)さん(32)が機関長を務め、甲板長の佐々木康裕さん(39)、炊事長の佐々木幸喜さん(59)の4人で漁に出る。
「ここ数年は資源量が少ないうえ、魚形が小型化していることもあり、水揚げは一番いい時から10分の1くらい。廃業になるかも」。重之さんは厳しい状況を語る。公海まで行く燃料代に加え、集魚灯など棒受網漁の設備装着など出漁の経費も掛かるが、「乗組員の生活もあるから。ほかの魚種のかたまりがピンポイントで見込まれ、一獲千金ということもある」と期待を込める。
大漁旗を掲げて船出の準備をする乗組員ら
乗組員を激励したり「祝い酒」を味わったり
午前9時、大漁旗をはためかせながら岸壁を離れた第二十八明神丸。「気をつけて行ってこい」。乗組員の家族や漁師仲間、地域住民らが手を振って送り出した。船は漁港内を2周し、汽笛を鳴らして見送りに応えて外海に出た。
白浜漁港を離れる船を見送る地域住民ら
岸壁で見守る仲間に、乗組員も手を振って応える
当初、8月下旬に出る予定だったが、海況の状況が良くなく、数日待っての出漁。この日は土曜日ということもあって、子どもの姿もあった。地元でホタテやワカメなどの養殖を手掛ける浦島富司さん(71)は「遠出は若手に任せる。頑張ってこい。人が集まり、活気が出ていいな」と目を細めた。
「無事であれ」。重之さんの妻イミさん(60)は願う。海に出る漁師の夫の帰りを待ちながら陸の生活を守っていて「一心同体だから」と、近年の不漁は切実な問題だという。大変であっても漁場へ向かう乗組員たちを送ろうと集まった住民らに「祝い酒」や赤飯などを振る舞い、ともに航海の安全、健康を祈った。
期待を込め船出した第二十八明神丸の乗組員
岸壁で手を振りながら船を見送る乗組員の家族ら
水産庁が7月下旬に発表したサンマ長期漁海況予報(北海道東部~常磐海域)では、8~12月のサンマ来遊量を「低水準(昨年と同水準)」と予測している。明神丸は釧路港で待機し、漁場までの距離などを確認して出漁する予定。例年は10月半ばごろに釜石に戻る。
釜石新聞NewS
復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム