探検気分で坑道巡る 釜石鉱山見学、新導入の電動カートで 鉄の歴史に理解 ひとときの涼も体感
釜石鉱山の坑道見学会。鉄鉱石の採掘跡で鉄の歴史に触れた
鉄のまち・釜石市の歴史に触れることができる釜石鉱山(甲子町)の坑道見学。新型コロナウイルスの影響などで中止されていたが、5類移行を受け、今年久しぶりに実施された。釜石ならではの体験プログラムを集めた「Meetup Kamaishi 2023」の一環で、計3回の実施を予定。初回の7月28日は、市内外から家族連れなど約20人が参加した。猛暑の中、気温10度ほどに保たれている坑内は別世界。歴史探検を楽しみつつ、ひとときの涼も味わえると好評だ。
釜石鉱山は、この地の製鉄業繁栄を支えた鉄鉱山。1993年に大規模な採掘は終了しており、現在は坑道から湧き出てくるナチュラルミネラルウォーター「仙人秘水」の製造、販売を主力にしている。夏のこの時期に見学を受け入れていて、その際に活躍した電気トロッコ列車が役目を終えるのと同じ頃、コロナの影響が拡大。受け入れを中断している間に電動カートを導入するための改修を進めていた。
新たな移動手段として導入された電動カート(5人乗り)
路面に設置された電磁誘導線上を自動走行。ぶつかりそうでぶつからない、ドキドキ感も
新たに導入されたカートに乗り込んだ参加者は、坑口から約3000メートル入った地点に移動。同社総務課主任の千葉慎吾さん(40)らの案内で坑内を歩いた。大峰山(標高1147メートル)の地下600メートルに位置する仙人秘水の採水地で源水を試飲。長い期間じっくりと岩盤をつたってくるという湧き水の味わい、冷涼感に「おいしい」「飲みやすい」と声が響いた。
仙人秘水の採水地で湧き水を試飲。おいしさを実感した
採掘場跡で当時使われていた機械や鉱石について話を聞いた
鉱石採掘場では、搬送で使う専用の重機が紹介された。鉄鉱石だけでなく、石灰石やトルマリン、大理石なども採掘されていたといい、磁石を手に鉱石探しを体験。鉱石を効率よく搬出するため鉱石を投下したタテ坑なども見て回った。
花こう岩でできた音響実験室「グラニットホール」も見学。操業当時は坑内事務所兼休憩所に充てられた場所で、鉱石の採掘を止めた後は、さまざまな音楽アーティストの録音も行われた。
グラニットホールでCDを聴いて音の響きを確かめた
「探検気分で楽しかった」と喜ぶのは、宮城県大崎市の竹林公威(こうい)君(大崎市立古川第5小5年)、競(きそう)君(同2年)兄弟。石好きの公威君は「いろんな種類の石があってきれいだったし、性質を知れたのがよかった。水もおいしかった」と笑った。
地元釜石に長く暮らす甲子町の佐々木拓治さん(73)も坑内に入るのは初めてで、案内役の同社社員に当時の採掘作業や現在の水質調査の方法など熱心に質問していた。石や化石に興味があり、成分分析などを趣味にしているといい、「参考になった」と刺激を受けた様子。妻の聖子さん(70)は仙人秘水の水源や音響施設が印象に残り、「地域を知るいい機会になった」と目を細めた。
探検気分を満喫しながら地域の歴史に理解を深めた参加者
ミートアップ釜石2023事務局のかまいしDMCによると、坑道見学は各回定員15人で募集したところ、申し込みの受け付けの開始早々に定員に達する人気ぶりだった。このほかにも、▽海▽山▽自然と健康▽防災▽歴史▽天体観測―をテーマにした22の多彩なプログラムを用意。同社の菊池啓さん(55)は「釣り、パワースポット巡り、海浜植物の再生活動、星空観察など秋まで楽しめるラインナップをそろえた。ぜひ参加して、地域の良さを再認識してもらう機会に」と呼びかける。
釜石新聞NewS
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