流通経済大 アート、ラグビー、トークなどで釜石市民と交流 若いエネルギーを被災地に出前
流通経済大が7月2日まで釜石市で開く「であうアート展」=TETTO
流通経済大(本部・茨城県龍ケ崎市)の「であうアート展」が、7月2日まで釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれている。24、25の両日開かれた開催記念イベントでは学生が市民と交流。トークセッションにはニュースキャスターの膳場貴子さん(同大客員教授)も出演し、震災復興の力となったラグビーワールドカップ(W杯)、同市が発信する防災教育などについて市民と意見を交わした。
であうアート展は「つながる地域、学生、障がい者」をコンセプトに、同大が新松戸(千葉県)、龍ケ崎の両キャンパスで2021年から開催。千葉県成田市のNPO法人グループ彩「生活工房」所属のアーティストらの作品を展示し、さまざまな出会い、つながりを生み出している。22年からはキャンパス外にも広げ、釜石は4カ所目の開催地となった。
今回は東北障がい者芸術支援機構などの協力で岩手、宮城のアーティストの作品を加え、約50点を展示。絵画や造形、ニードルワークなど独創性豊かな作品が並ぶ。本県花巻市のるんびにい美術館所属、釜石市出身の小林覚さんの絵画3点も公開されている。TETTOギャラリーで、午前10時から午後6時まで鑑賞できる。
上段:生活工房(千葉県成田市)のアーティストの作品、下段:宮城、岩手のアーティストの作品
釜石市出身・小林覚さん(花巻市・るんびにい美術館所属)の作品
約2週間の開催期間中日のスペシャルイベントには学生と教職員約100人が来釜。24日は釜石鵜住居復興スタジアムで、同大男女ラグビー部と市民がタッチラグビーの試合で交流。25日はTETTOで、チアリーディング、ダンス、吹奏楽の各部がステージパフォーマンスを繰り広げた。
トークセッションには地元釜石から、釜石ラグビー応援団副団長の浜登寿雄さん、震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」スタッフの川崎杏樹さんが出演。大学側からは客員教授の膳場さん、副学長の龍崎孝さんが参加した。会場の様子は学園祭が行われている新松戸キャンパスにも配信され、相互交流も行われた。
25日に行われた、流通経済大×釜石市民トークセッション
話題の一つは、釜石復興の推進力となった2019年のラグビーW杯日本大会。浜登さんは“ラグビーのまち釜石”が大会招致に手をあげた理由を説明し、「あの空間が作られ時間を共有できたことは、まちと子どもたちの未来への財産になった」と振り返った。当時、試合に招待された小中学生にその後行ったアンケートの結果も紹介。世界の同世代とのつながりを求める声や、地域に貢献するボランティア活動への意欲が見られたという。
釜石から出演した川崎杏樹さんと浜登寿雄さん
川崎さんは、スタジアム建設地に震災前あった釜石東中の出身(震災当時2年生)。「W杯で国内外から訪れた大勢の人たちが、ラグビーを入り口に震災や防災に目を向けてくれた。その光景にこの場所に建てられた意味の大きさを実感した」と話した。同所では釜石高生が震災の語り部や防災普及活動を続けており、次世代への活動継承にも期待。自身は釜石の経験を海外に伝える活動にも携わり、防災による世界とのつながりも見据える。
膳場さんは浜登さん、川崎さんがまちの魅力の一つとして示す「地域コミュニティーの強さ」に共感。震災直後に取材した水産加工会社が宮城の被災同業者に工場の一部を貸し出し、事業を助けたことを印象深く語り、「自社も被災し大変な状況なのに困っている仲間を助ける精神。これはまさに釜石に共有されているものではないか」と話した。
高校、大学でラグビーをした経験を持つ龍崎副学長も、ラグビー精神「One for all、All for one(一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために)」が釜石の復興、共生社会の実現につながっていると実感。その地域性や市民性を称賛した。
流通経済大の龍崎孝副学長と膳場貴子客員教授。釜石とのつながり継続を願った
トークセッションに集まった市民らはまちの未来に期待を高めた
アート展の釜石開催は、同大スポーツ健康科学部の教員が震災後、釜石の子どもたちをサマーキャンプに招き、タグラグビー交流などを行っていた縁で実現。学生らは震災被災地の訪問を通して「命を守る」ことへの学びを深め、人と人とのつながりの大切さを感じた。
釜石に元気と活力を届けた流通経済大の学生ら
釜石新聞NewS
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