手に入れよう!災害時に役立つスキル 釜石の小学生ら、「サバイバルマスター」目指す はじまりは…水


2023/06/26
釜石新聞NewS #防災・安全

片山さん(奥)の指導で泥水をろ過する実験を行う子どもたち

片山さん(奥)の指導で泥水をろ過する実験を行う子どもたち

  
 災害時に役立つ技術を学ぶ子ども向けの講習会「サバイバルマスター1DAYチャレンジ!」が17日、釜石市鵜住居町の根浜海岸にある観光施設「根浜シーサイド」のキャンプ場で行われた。8つのプログラムを修了・合格すると認定される“マスター”を目指し、釜石・大槌地域の小学生5人が「ウオーター」編に挑戦。水がないと困ることや水を確保するための方法などを考え、実践することで生き抜く力を磨いた。
   
 講習会は、災害発生から3日間を生き抜く術(すべ)を伝える一般社団法人「72時間サバイバル教育協会」(大阪市)による「サバイバルマスター」養成の一環。サバイバルマスターは、▽ファイヤー(火おこし)▽ウオーター▽シェルター(雨風をしのぐ場所)▽フード(食事の確保)▽SOS(助けを呼ぶ)▽ナイフ(道具づくり)▽ファーストエイド(応急処置)▽チームビルド(避難所運営、情報収集など)―の8プログラムがあり、各講座を受けて筆記・実技試験に合格すると同協会から認定される。
   
「災害時に力を発揮できるよう一緒に学ぼう」と語りかける片山さん

「災害時に力を発揮できるよう一緒に学ぼう」と語りかける片山さん

   
 この日、講師を務めたのは同協会代表理事の片山誠さん(51)。水の確保がテーマで、子どもたちに「普段、水はどこで手に入れる?」と問いかけた。返ってきたのは「水道」「ウォーターサーバー」などの声。「災害が起こって水道が止まったら、どうする?」との問いには、「川の水をろ過する」と答えた。「それって飲めるの?」「ろ過ってどうやる?」と質問が続くと、頭をひねる子がほとんど。テレビなどで目にしたことはあっても、やってみたことはなく、実際に体験してみることにした。
  
 ペーパーフィルターで泥水をろ過してみると、うっすらと茶色く濁った水がカップに残り、子どもたちは「飲めない」と声をそろえた。ペットボトルや砂利、活性炭、ティッシュペーパーなどを使った、ろ過装置づくりにも挑み、水の状態を確認したりした。
  
楽しみながらサバイバル術を身につける子どもたち

楽しみながらサバイバル術を身につける子どもたち

  
 伊藤朱凛(あかり)さん(双葉小5年)、佐々木彩衣音(あいね)さん(平田小4年)は「東日本大震災の何倍もの地震が起きても生き残れるように、もっと知識をつけたい。8つ全部に挑戦してマスターになって、みんなを助けられるような人になりたい」と意気込んでいた。
  
 片山さんは震災後に釜石地域などでボランティア活動を行ったことをきっかけに、団体を立ち上げた。家族と2日間会えなかった子の話から、「サバイバルの力」の必要性を感じたという。講習を受けた人は全国で1000人ほどいるが、マスターに認定されているのは20数人。「合格するのが目的ではなく、スキルを習得する過程で、自分で考えたり行動しながら身につけてもらうことが大切。できることを増やし、どこでも命を守る行動ができるように、そして困っている人を助ける人になってほしい」と子どもたちを見守った。
  
「できることを増やして」と子どもたちを見守る片山さん

「できることを増やして」と子どもたちを見守る片山さん

  
 今回の講習会は東北地方で初めての開催。主催した釜石市の団体「さんつな(三陸ひとつなぎ自然学校)」の伊藤聡代表(43)は、同協会の講習を受けてインストラクターとなり継続的に行うため準備を進めてきた。18日にはファイヤー編を実施。「震災を直接体験していない子どもたちが意欲を持って学び、万一の時に生き残り、助け合うきっかけになれば」と話した。
 
 

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