県立釜石病院分娩休止から1年半―妊産婦の声をくみ取る支援策、母子ケアの体制整備を


2023/04/24
釜石新聞NewS #福祉

助産師らに見守られながら、ゆったりと時間を過ごせるサロン=4月19日、釜石市鵜住居町

助産師らに見守られながら、ゆったりと時間を過ごせるサロン=4月19日、釜石市鵜住居町

 
 釜石市甲子町の県立釜石病院で分娩(ぶんべん)の取り扱いが休止されてから1年半がたった。現在、釜石市や大槌町に暮らす妊産婦らは車で40~50分かかる県立大船渡病院(大船渡市)など遠方の医療機関を利用する。経済的負担を軽減するため、両市町では通院交通費の助成など支援策を講じる。3月、そうしたサポートについて妊産婦の意見を聞く会が用意されたが、そこには体調が安定しない中での移動や急に産気づいた時の対応などに不安を感じている女性たちの声があった。また、産前産後ケアの充実を求める声も共通。4月、釜石市内でそんな母子を支え続ける団体の取り組みをのぞいてみた。
  
 県立釜石病院は2021年10月から普通分娩の扱いを休止。釜石市、大槌町では市町外で出産する妊婦に対し、健診や出産のために通院する交通費や宿泊費をそれぞれ助成している。
 
妊産婦から出産に関わる不安や課題を聞き取る意見交換会=3月22日、釜石市大渡町

妊産婦から出産に関わる不安や課題を聞き取る意見交換会=3月22日、釜石市大渡町

 
 「交通費の補助は良かった」「臨月に入ると、いつ陣痛がくるか分からない。生まれるかと思って病院に行ったが、まだ早いということで帰された。移動距離がネック」「宿泊費補助はあるが、出産までホテルで待機…ないかな」。3月22日、釜石市大渡町の市保健福祉センターで開かれた意見交換会。野田武則市長や平野公三町長を囲み、妊産婦5人が近隣自治体の医療機関まで出産に行かなければならない苦労や精神的な負担を訴えた。
  
平野町長(右)に出産前後に困った経験を伝える妊産婦たち

平野町長(右)に出産前後に困った経験を伝える妊産婦たち

 
 この時、妊娠7カ月だった二本松春美さん(26)は今回が初産だという。体調が安定しない中、自分で運転して大船渡病院まで健診に通った結果、つわりがひどくなってしまい、1カ月も入院した経験がある。「家族に迷惑をかけた」とする一方、「身近に頼れる人がいなくて不安に思っている人は多いのでは」と気遣いも見せた。
 
 「嫁ぎ先が釜石だったから」「仕事の関係で…」などと地域外の出身者もいて、「気軽に相談できる場がもっとあるといい」と声をそろえた。昨年8月に長女汐莉ちゃんを出産した遠藤香織さん(40)もそんな一人。「夫は日中仕事で、実家は遠方なので頼れない。誰に相談していいか分からず、ずっと不安のまま過ごした。子育ても思うようにできず、一人で思い悩んでいた」と振り返った。そんな時に知ったのが、育児指導などを受けられる産後ケア。「誰かと話せる場。不安が改善した」と穏やかに話した。
 
「よりよい支援策を」。妊産婦の厳しい声を受け止める野田市長(左)

「よりよい支援策を」。妊産婦の厳しい声を受け止める野田市長(左)

 
 ほかにも、釜石では緊急時にタクシーを利用できるような仕組みがなく、「妊婦は乗車を断られたりする」といった声も。こうした意見に対し野田市長は「釜石病院の産婦人科再開に向け県に要望していくが、医師の働き方改革や診療科の集約が進められていて、感触的には厳しい」とした上で、「出産、子育ての不安を解消できるよう支援策を改善する必要性を強く感じた。産後ケアは、回数を増やすことも考えたい」と応じた。
 
助産師らが寄り添う釜石まんまるサロン=4月19日、釜石市鵜住居町

助産師らが寄り添う釜石まんまるサロン=4月19日、釜石市鵜住居町

 
 不安を抱える妊産婦の支援として注目されるのが「産前産後ケア事業」。鵜住居町の鵜住居地区医療センターでは、市産前産後サポート事業「釜石まんまるサロン」と「釜石まんまるヨガ」、市産後ケア事業「まんまるぎゅっと」が展開されている。委託を受けた花巻市のNPO法人「まんまるママいわて」(佐藤美代子代表理事)が手がけ、助産師による育児相談や母親に休息の場を提供する。
 
 4月19日のサロンには親子2組が参加。助産師や利用者同士で談笑したり、お茶を飲みながらゆったり過ごしたりしていた。2歳と生後6カ月の子どもがいる上中島町の40代主婦は「市外出身で、知り合いがいない。サロンではいろんな人と話せる。同じくらいの子どもたちが楽しそうに過ごしているのを見るのもうれしい」と目を細めた。
 
ママたちは子どものことや世間話をしながら交流を楽しむ

ママたちは子どものことや世間話をしながら交流を楽しむ

  
 17年設立の同法人だが、産前産後の母子を支える活動のきっかけは11年の東日本大震災。県内で被災地域の妊産婦が集うサロンを開くなどして寄り添ってきた。釜石サロンも同様に続けられ、18年からは市の委託事業になった。助産師で2人の子どもの母でもある佐藤代表理事(44)は、釜石病院の分娩休止による妊産婦の不安を推測しつつ、「サロンは助産師に会える貴重な時間だけでなく、育児の大変さを伝え共有できる場でもある。気楽に来てほしい。ママたちの気持ちが楽になるケアを地域内で循環、根付かせられたら」と先を見据える。
 
「気楽にどうぞ」と産前産後ケア事業をアピールする佐藤代表理事

「気楽にどうぞ」と産前産後ケア事業をアピールする佐藤代表理事

 
 サロンとヨガは月1回ずつ、いずれかの水曜日に開設(午前10時~正午)。市内在住の妊婦、1歳未満の乳児を育てる母親らが対象で、参加費は無料。デイサービス型の「まんまるぎゅっと」は毎月第1か第2水曜日の午前10時~午後3時。茶と軽食付きで、料金は1組500円。母親の休息や乳児のもく浴などもできる個別ケア用の部屋も用意する。いずれも予約制。利用希望者は前日の午後4時までに電話で予約する。
  
 予約、問い合わせは平日の午前9時~午後4時に同法人(電話090・2981・1135)へ。

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