今年も見られた!オオハクチョウ、カワセミに歓声 鵜住居川周辺で水辺の鳥観察会
片岸公園の沼地を泳ぐ野鳥を観察する参加者
釜石市の鵜住居川河口周辺で14日、市生活環境課主催の「水辺の鳥観察会」が開かれた。一帯は東日本大震災による津波被害から10年の時を経て復興を遂げ、新設された片岸公園を中心に多くの野鳥が生息する環境が戻ってきた。今冬もオオハクチョウの飛来が確認され、ガン、カモ、サギなどと一緒に水辺に憩う姿が、散歩に訪れる市民らの目を楽しませている。観察会では、鮮やかな体色で「飛ぶ宝石」と称されるカワセミも見ることができた。
同観察会は1977年から続けられる冬の恒例行事。震災後は新しい防潮堤や水門の設置工事のため中止されてきたが、2020年度から再開されている。今回は市民らを中心に約20人が参加。釜石野鳥の会(臼澤良一会長、7人)の会員3人が案内役を務め、双眼鏡やフィールドスコープを使って多種多様な鳥を観察した。
片岸公園(2021年完成)から観察をスタート。参加者を出迎えたのは、園内の沼地で羽を休めるオオハクチョウの群れ。灰色の幼鳥を含め20羽以上が確認された。同会会員によると、今冬も11月下旬に第一陣が飛来。観察会の日までに35羽が確認されている。昨季は内陸部で積雪が多く、餌をとれなくなったハクチョウが沿岸部に多く飛来し、鵜住居川周辺では最大で約200羽が確認されたという。
水面をゆっくり進むオオハクチョウ。見応え十分
釜石野鳥の会の会員らが鳥の生態や生息環境について説明した
飛来したハクチョウの多くが片岸公園で見られ、周辺にはにぎやかな鳴き声も響く
同会事務局の菊地利明さん(57)は「子育て中のハクチョウは子どもを守ろうと攻撃的になることがある。近寄りすぎると危害を加えられる恐れもあるので、距離を保って観察を。野生の鳥なので、人間が餌をあげることは絶対にしないでほしい」と注意を促した。
この後、鵜片橋に移動。水門近くの中州に目をやると、アオサギやマガモの群れが見られた。数羽のダイサギが羽を広げて飛ぶ優雅な光景も。背が高いサギ類は外敵が近づくといち早く察知し鳴き声を上げるので、周りにいるカモなども危険を知ることができるという。
鵜住居川の水門近くの中州で見られたアオサギの群れ(左下)と周辺を飛び交うダイサギ(白色)
最後の観察ポイントは釜石鵜住居復興スタジアム前の鎧坂橋付辺。ここ数年、カワセミがよく見られる場所で、参加者の期待も高まった。川のほとりの草地に目を凝らすと、ひときわ目立つカラフルな姿が…。「あっ、いたいた!きれいだー」。頭から背中にかけての青色、腹部のオレンジ色が美しいカワセミが枝に止まっていた。くちばしの色から雄の個体。餌となる水中の小魚を狙っている様子で、少しすると水面に向かって飛び立った。
鮮やかな体色のカワセミ。冬枯れの景色の中ではひときわ目を引く
約1時間の観察の後、見られた鳥の種類を一覧表でチェック。結果、昨年の観察会と同様、28種類の野鳥が確認された。ガン・カモ類が最も多く、ワシ・タカ類ではトビやノスリが見られた。個体数ではオオバンの数が際立った。
鵜住居町の佐藤奏子さん(44)、一帆ちゃん(3)親子は昨年に続いての参加。「ハクチョウ、かっこ良かった。鳥さん大好き」と一帆ちゃん。奏子さんは「カワセミは昨年も同じ場所で見られ、変わらず生きているんだなと感動した。震災から復興した風景、年数を重ね再生してきた自然を目の当たりにし、生き物の生命力、共存の大切さをあらためて実感した」と話した。
多くの野鳥が集う片岸公園の沼地。周辺には遊歩道も整備されている
観察会で見られたカワウ(左上)、ホオジロ(右上)。下段はマガモのつがい(左が雄、右が雌)
震災前、県内有数の「野鳥の宝庫」として知られた鵜住居川河口周辺。市の観察会では最多で57種が確認されたこともあった。臼澤会長(74)は「(鳥の隠れ家となる)ヨシ原など草地はだいぶ戻ってきたが、樹木はまだ少ない。木に営巣する鳥も多いので、生息環境のためには植樹を進めるのも有効。鳥の餌となる昆虫を含め、生き物全体のバランスが保たれるようなフィールドが必要」と話し、今後も注意深く環境を見守っていく重要性を示した。
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