コロナ下、地域交流に一手 作品展示で老人ホームを元気に―あいぜんの里(釜石・平田)


2022/07/08
釜石新聞NewS #文化・教育

あいぜんの里で開かれている小野寺浩さんの作品展「色を聴く」

あいぜんの里で開かれている小野寺浩さんの作品展「色を聴く」

 
 釜石市平田の特別養護老人ホームあいぜんの里(古川明良施設長、長期利用者50人、短期利用者20人)で、地元の美術集団「サムディ45」所属の小野寺浩(ゆたか)さん(62)=甲子町=が作品展「色を聴く」を開いている。新型コロナウイルス禍で外部との触れ合いを控えている施設利用者や職員たちに「元気を届けたい」と企画。動物や人物などの愛らしい表情を描いた色鉛筆画、パステル画約40点が並んでいる。
 
 同施設ではコロナ禍前から、利用者らの外出機会が減る冬期に「芸術で潤いを」と考え、別の絵画グループの作品展示を行ってきた。今回はサムディ事務局の橘内道子さん=平田=が、同級生の古川施設長に話を持ち掛け、実施が決まった。
 
 小野寺さんは5年ほど前、市内のパステル画教室に参加したのをきっかけに本格的に絵を描き始めた。もともと色鉛筆画に興味があったことから、画材を併用した作品づくりを開始。サムディのほか、陸前高田市や宮古市の美術団体にも所属し、精力的に制作活動を行っている。母親が別の施設を利用していて、感染症流行前には利用者に楽しんでもらおうと施設でパステル画講座を行ったことも。「世の中が落ち着いたら再開したい」と思っていたこともあり、橘内さんの提案を引き受けた。
 
施設職員と展示作業に取り組む小野寺さん(右)

施設職員と展示作業に取り組む小野寺さん(右)

 
動物や人物、静物などを描いた作品が並ぶ

動物や人物、静物などを描いた作品が並ぶ

 
 6月21日、小野寺さんが追加の作品を持ち込み、施設職員らと展示作業を進めた。窓辺でくつろぐ猫や飼い主になでられ目を細める犬などを描いた作品がお目見えし、離れた場所から作業の様子を見つめる利用者らは「まるでかわいい」「癒される」とにっこり。躍動感あふれる虎舞、凜とした舞妓(まいこ)の姿なども並び、「美術館みたいだ」と一味違う雰囲気を感じていた。
 
 「高齢者施設では塗り絵を楽しんでいる人もいて、色鉛筆はなじみがある。身近にあって気楽に描ける。好きな色を使うから、同じ絵柄でも違った作品になる」と小野寺さん。カリカリ、サラサラ、カツカツ、シャリシャリ…色や芯の太さで異なる「音を聴く」のも楽しみどころとして強調する。今回は「作品を見て会話のきっかけにしてほしい」と願う。
 
仕事の合間に美術鑑賞を楽しむ職員の姿も

仕事の合間に美術鑑賞を楽しむ職員の姿も

 
 同施設では人の出入りを制限してきたが、感染状況が落ち着く中、徐々に緩和。「外からの刺激は利用者の心身の健康に影響する」(古川施設長)といい、大型テレビを使ったインターネット中継で利用者と家族をつなぐなど工夫している。地域との交流も再開させたい考えで、その一手となるのが今回の作品展示。外部の活動を受け入れることで、利用者への刺激が増えることを期待する。
 
 ただ、外部の人との直接的な触れ合いはまだ先になりそう。今回も小野寺さんと利用者の交流や、作品鑑賞のための地域住民への告知は控えた。古川施設長は「IT技術の活用などポストコロナでできる仕掛けを作っていきたい」と思案中。橘内さんは市芸術文化協会の事務局も担っていて、「さまざまな団体の作品を四季折々展示できるようになれば。あいぜん美術館だ」と、古川施設長は夢を膨らませていた。今後、展示された作品を施設ホームページで紹介するという。
 
あいぜんの里で作品を展示している小野寺さん。近々テットでも作品展を開く

あいぜんの里で作品を展示している小野寺さん。近々テットでも作品展を開く

 
 あいぜんの里での展示は7月17日までを予定。小野寺さんの作品を見る機会はすぐにやってきて、29日からは大町の市民ホールTETTOギャラリーで楽しめる。地元のアーティストを紹介するホール主催の展示会「art at TETTO(アート アット テット)」の第5弾。「色を聴く」と題し、8月7日まで鑑賞できる。期間中の7月30日、31日にはワークショップ(有料)を実施。色鉛筆やパステル、クレヨンなど、さまざまな画材を使った塗り絵体験ができる。

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