消防職員が業務への提言を発表 県発表会に舘下佑哉さん(釜石署)を選出
意見発表した尾形祐貴さん、舘下佑哉さん、長野凌太さん、紺野聖人さん(左から)
第45回県消防職員意見発表会(2月14日、盛岡市)に向けた釜石大槌地区行政事務組合消防本部(大丸広美消防長)の代表者選考会は12日、釜石市鈴子町の消防庁舎で開かれた。釜石、大槌両消防署から消防士4人が登壇し、それぞれの視点で業務の課題や改善策を発表。審査の結果、SNSによる情報発信で人命を守る策を提言した釜石消防署の舘下佑哉さん(25)が代表に選ばれた。
同発表会は若手消防職員が業務の諸課題解決へ意識を高め、一層の研さん、業務改善につなげる取り組み。県内12消防本部の代表が出場する県発表会に向け、釜石大槌地区消防本部では代表選考のための発表会を幹部職員らの前で行った。
発表者は登壇順に、釜石署の長野凌太さん(25)、大槌署の紺野聖人さん(29)、大槌署の尾形祐貴さん(32)、舘下さんの4人。1人5分の制限時間で、自らの経験を基に消防や救命、津波避難などに関する考えを述べた。
職員らは業務の課題、改善策を自らの言葉で発表
長野さんは、新規入団の減少、団員の高齢化が顕著な消防団の課題を取り上げた。火災や災害現場で消防職員と共に大きな役割を担う消防団員確保のための方策として、学生時からの学びの機会を提案。「学校の防災授業で消防団の活動内容や地域にとっての必要性などを教えることで、社会人になった時に入団しやすくなる」と、認知向上への取り組みを提言した。
紺野さんは、傷病者発生時に現場に居合わせた人(バイスタンダー)が救急隊到着までの間に行う処置(心肺蘇生法など)に着目。早期の救命処置を的確に行える人を増やすため、義務教育期の成長段階に合わせた学習プログラムを示した。小学校低学年は119番通報、同高学年は応急手当の実技、中学生は小学校期の学びの復習と災害時に役立つ搬送法などの習得。応急手当講習の義務化が実現すれば「より質の高い多くのバイスタンダーを生むことができる」と強調した。
幹部職員や先輩職員らも耳を傾けた意見発表会
尾形さんは、東日本大震災の経験から津波避難時のさまざまな場面を想定した問題点を指摘。よりイメージをつかみやすい避難の動画を市のホームページに掲載することを考えた。避難場所までの経路を撮影し、いつでも見られるようにすることで、訓練に参加できない人や外出が困難な人の避難を助ける狙い。動画による情報発信で、「地域住民同士、家族で話すきっかけもでき、防災意識がさらに高まる」とした。
舘下さんは、活字離れやSNSの普及が進む社会情勢の変化に注目。ポスターやパンフレットなどの紙媒体による広報活動だけでは情報発信効果が不十分と考え、火災予防や救急医療の呼び掛けにSNSを活用することを提案。「災害などへの注意喚起、消防団員募集、各種講習の案内に加え、消防署の訓練の様子を発信することで興味を持ってもらえる。住民の理解が深まれば、現場活動でのトラブルも回避できるのではないか」と訴えた。
釜石大槌地区行政事務組合消防本部の代表で県発表会に出場する舘下さん
市教委の髙橋勝教育長ら4人の審査員が、▽論旨の明確性、説得力▽業務に対する問題意識、発展性▽発表態度、表現力―の3項目で採点。審査の結果、県発表会への出場が決まった舘下さんは「他の人の発表も聞いて(自分たちの業務には)いろいろな問題点がまだまだあると実感し、とても勉強になった。県大会までに発表の仕方をさらに工夫し、等身大で臨みたい」と話した。
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