~未来の命を守るために~発災から10年 釜石市が震災誌作成へ
第1回釜石市震災誌編さん委員会=8日、市役所
釜石市は東日本大震災の事実と教訓を後世に伝える市震災誌(仮称)の作成に着手する。震災発生から復旧、復興に至る10年の対応状況などを体系的に記録するほか、避難の検証、防災対策の課題など今後の安全安心なまちづくりにつながる要素を盛り込む。8日、市が委嘱した編さん委員による初会合が開かれ、作成の基本的考え方、今後の作業手順について確認した。2022年度内の完成を目指す。
編さん委員会のメンバーは、同市の震災検証、復興に関わってきた大学教授や被災地域の住民、元市職員ら15人。初会合には市の担当職員を含め19人が出席した。委員長に岩手大の齋藤徳美名誉教授、副委員長に元副市長の山崎秀樹さんを選出した。
震災誌は庁内検証委員会が年度ごとにまとめてきた記録誌を基に作成。9つの項目を柱に58のテーマで、①事実・背景②指示(方針)③対応・結果④教訓―を記す。発災当日、1週間、1カ月の動きから、暮らしや産業などの復興に向けた取り組み、避難行動の検証と防災力強化の課題など、あらゆる視点で未来に生かされる内容を目指す。A4版(カラー)、400ページ程度で構成する予定。
本年度は庁内検証委が素案を作成。編さん委内に作業部会を設け、素案の調整、修正などを行う。同部会では必要に応じて外部関係者の協力、助言を得る。
編さん委の初会合ではこれらの方針を確認。委員からは「なぜ千人を超える犠牲者がでたのか。私たちがやるべきだったのにできなかったことをしっかり検証し、伝えていく必要がある」「震災誌を作ることで何を伝えたいのか。各項目の中で分かりやすく表現できれば」「つらい部分も、あえて掘り下げて次にどうつなげられるか。震災誌の真価が問われるところ」「津波からどう生き延びてきたのかも重要。10年を経た今の段階で震災誌を作る意義がある」などの声が上がった。
基本方針を確認し、委員の意見を聞いた初会合
齋藤委員長は「災禍を繰り返さないために何をすべきか。一歩踏み込んだ震災誌でなければ未来に発信できない。“防災先進地”釜石として新たな検証とともに、未来に残せるものを作りたい」と意を強くする。
市はこれまでに、6編の震災検証報告書(津波避難行動、災害対策本部、避難所運営など)を作成。これらをもとに市民向けの「教訓集」「証言・記録集」を作成している。また、大勢の犠牲者が出た鵜住居地区防災センターにおける市の対応について、学識者や遺族、弁護士などによる調査委員会が被災調査報告書をまとめている。
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