新しい働き方、休み方提案~釜石にワーケーション施設オープン
釜石市中心部にオープンしたワーケーション施設「ねまるポート」。カフェのような落ち着いた空間が広がる
仕事と余暇を組み合わせる「ワーケーション」向けの施設が10月28日、釜石市只越町にオープンした。市が民間企業と連携し整備、観光地域づくり法人かまいしDMC(河東英宜社長)が運営する。新型コロナウイルス禍を機にテレワーク導入企業が増えていることに着目し、働き方の受け皿を用意。自然や食文化など地域資源を生かした釜石ならではの体験も提供するほか、市内企業が首都圏などの企業と連携を深めることで地域活性化にもつなげていく。
市とDMC、日鉄興和不動産(本社・東京都港区、今泉泰彦社長)が結ぶ包括連携協定にオカムラ(本社・神奈川県横浜市、中村雅行社長)が加わり、4者でワーケーション事業を進める。地方創生とこれからのワークスタイルの研究・提案を行うための拠点となる施設の整備にあたり、日鉄興和が市中心部にある2階建ての空き店舗を取得して改修。オカムラがオフィス家具を提供している。
作業に集中できるブースも用意。利用者は「業務効率が上がる」と好感触を示した
施設名は「Nemaru Port(ねまるポート)」。「ゆっくりしていく」「家に寄っていく」という釜石地方の方言「ねまる」にちなむ。JR釜石駅から徒歩16分に立地する元和菓子店を改装。近くには復興住宅やドラッグストアが建つ。1階(延べ床面積36・3平方メートル)にソファ席、防音の個室型ブース、打ち合わせスペース、リラックスできるテラス席などを用意。無線LAN完備で、5~10人程度の小規模団体の受け入れを想定する。2階にはDMCが入居する。
ウッドデッキのテラス席でリラックスしながら仕事をする利用者
当面は完全予約制とし、4者による実証実験の利用を優先して活用する。ドリンクサービス、自動販売機型無人コンビニ「600」での軽食販売などはあるが宿泊設備はないため、市内宿泊施設への波及効果が期待できる。DMCは余暇に漁船クルーズやマリンスポーツなど自然を体感するプログラム、東日本大震災の教訓を踏まえた防災研修などを提供する。営業時間は午前9時~午後5時。問い合わせは公式HP(https://kamaishi-nemaruport.com/)へ。
テープカットし、施設の開業を祝う関係者ら
この日、大町の市民ホールで4者による記者発表があり、新たに協定を締結。「ねまるポート」に移動し、内覧会も行われた。首都圏に勤務する日鉄興和の社員らがすでに施設を利用しており、思い思いの場所でパソコンに向かう姿があった。マンション開発の企画、デザインを手掛ける大塚真之さん(33)は在宅ワークなど出社しない形の働き方が2年半ほど続く。「都会とは違った自然豊かな場所で気分を変えられる。業務効率が上がり、発想も広がる」と感想。余暇には震災の話を聞く時間があり、自分を見つめ直す機会になっているという。
市は震災後、外部との交流で新たな活力を育む「オープンシティ戦略」を掲げ、復興後の持続的成長を導く試みを進めてきた。野田武則市長は「新たな一歩を踏み出すことができる。全国や世界からたくさんの方に来ていただきたい。交流の中で市民も活力を生み出してほしい」と期待。河東社長は「利用者と地元企業の双方にプラスとなるつながりが生まれ、移住につながればいい」と展望した。
釜石新聞NewS
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