サクラマス 来年試験出荷へ、水産振興・経済効果に期待〜釜石市と岩手大学が共同研究、養殖施設公開
海面養殖試験が行われるいけすでは給餌作業が公開された
釜石市と岩手大学は本年度から、サクラマス(地域名ママス)海面養殖の共同研究を始めた。水揚げの減少が著しい秋サケに代わる資源として、新たな可能性を探る。3日、釜石港内の海面養殖試験状況を報道関係者に公開。野田武則市長と小川智学長が記者会見し、この研究の意義や期待を語った。早ければ来年春からの試験出荷を目指す。
釜石市と岩手大は今年3月、共同研究の協定を締結。海面養殖の研究組織として、泉澤水産、日東製網、釜石湾漁協を加えた研究コンソーシアムを結成した。
研究は7月から、内水面(平田の岩手大三陸水産研究センター)で開始した。▽各地の親魚を交配▽稚魚に育て、成長、海水適応、高水温などの条件で成績の良い個体を選抜▽選抜個体を親まで育て、再び交配―のサイクルを数代にわたり繰り返す。当面は来年9月までを第1期とし、高成長、高餌料効果、高水温耐性、良い食味、好まれる肉色、耐病性などに優れた付加価値の高いサクラマス種苗を作り、海面養殖の安定した事業サイクルの構築を目指す。
作業漁船に乗り込み、いけすに向かう関係者と報道陣
海面養殖飼育研究も同時に開始。11月には湾口防波堤(北堤)に近い港内にいけす(直径20メートル)1基を設置し、給餌を始めた。稚魚は静岡県産で、約1万匹を育てている。当初の平均276グラムが、最新の調査では300グラムまで成長した。
試験出荷は来年5~7月を見込み、一部は9月まで、水温の高い「越夏試験」を行う。目標サイズは平均1・5キロ、生残率80%(8千匹)、単価は1キロ当たり700~1千円を目標とする。
3日のいけす公開には、泉澤水産の船に野田市長や小川学長も同乗。中央に設置された自動給餌装置や給餌作業、元気に餌を追うサクラマスの様子を確認した。
岩手大三陸水産研究センターでの記者会見で、野田市長は「サケマスなどの水揚げが減少し、水産加工業にも影響する。漁協組合員や後継者の減少などもある。共同研究は水産振興、地域経済への波及効果につながる」と期待を込めた。小川学長は「海洋変化に影響を受けにくい水産業の振興を目指す」と決意を示した。
同センター長の平井俊朗教授(医学博士)は「養殖で先行するギンザケ、トラウトサーモンにない特徴を生かした販売、ローカルブランドの確立を」と期待する。泉澤水産の泉澤宏社長は「釜石は西日本に比べ、飼育期間が3カ月長い。餌を食べない春の低温期(1カ月)はあるが、1匹2キロに育て、年間20トンすべてを地元に引き取ってもらい、釜石ブランドにしたい」と意欲を見せた。
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