酒造り体験塾“コロナ禍”で様変わり〜バケツに田植え、浜千鳥が苗配布
「バケツ稲づくり」を楽しみにする子どもら
釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)が行う酒造り体験塾が始まった。例年、第1弾は原料となる酒米の田植えを行うが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から代替企画を用意。バケツに植えた稲を自宅で育て、成長過程を楽しんでもらうことになり、5月31日、大槌町で申込者への苗の配布が行われた。
同社が使う酒米「吟ぎんが」を栽培し、体験塾の田植え、稲刈り会場も提供する佐々木重吾さん(63)が、苗を受け取りに来た人たちに〝バケツ稲〟の育て方を説明。水の管理など丈夫に育てるポイントを教えた。
必須作業は7月に入ってから行う「中干し」という作業。本数が増えた稲の根に十分な酸素を供給するため、一時的に水を抜いて土の表面を乾かすもので、これにより稲が丈夫に育つという。「ずっと水をはったままだと葉の色が黄ばんでくる。これは根が酸欠状態を起こしている証拠」と佐々木さん。
訪れた人たちは持参したバケツに土と肥料を分けてもらい、苗とともに持ち帰った。中には田植え参加の常連、ボーイスカウト釜石第2団の隊員の姿も。同団の佐野陸登君(双葉小5年)は「田植えができないのはちょっと悲しいけど、自分で稲を育てるのは初めてなので、頑張って大事に育てたい」と思いを込めた。
バケツ稲は9~10月に予定する稲刈り体験会に持ち寄り、田んぼの稲とともに収穫する。佐々木さんは「今回は稲が育つ様子をすぐそばで観察できる。茎は3、4本から50本以上に増える。秋にはコロナが収束して、みんなで刈り取りができれば」と願った。佐々木さんが会長を務める大槌酒米研究会(9人)は今年、同社に提供する吟ぎんがを約20ヘクタール(昨年並み)作付けした。
同体験塾は今年で23年目。震災の年も中止することなく続けられてきた。「今年も何らかの形で最初から関わってもらいたいと思って。皆さんから稲の成長過程の写真を送ってもらい、情報交換しながらSNSなどでも発信していければ」と新里社長。
同体験塾の田植えには例年約100人が参加している。今回はコロナ感染防止策として対象を県内在住者に限定、人数も制限した。この日は子どもから大人まで計42人が苗を持ち帰った。
(復興釜石新聞 2020年6月6日発行 第889号より)
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