震災伝承へ「ワン・チーム」、教訓発信 未来につなぐ〜釜石高校有志 新団体結成
震災の伝承活動に取り組む「夢団」を結成した釜石高生徒有志
東日本大震災の経験や教訓、防災の取り組みを未来につなげたい―。釜石高(鈴木広樹校長)の生徒有志が25日、伝承・ボランティア活動に取り組むグループ「夢団(ゆめだん)~未来へつなげるONE TEAM~」を立ち上げた。昨年釜石市で開かれたラグビーワールドカップ(W杯)などを通じ、内外に震災の記憶を発信してきた同校の生徒たち。その取り組みを長期的に、次代につなぐため力を結集させる「ワン・チーム」が動き出した。
結成を呼び掛けたのは太田夢さん(2年)。W杯で観客らに震災の教訓を記したうちわを配ったり、台風被害を受けた三鉄を支援する募金を校内で展開したり、北海道胆振東部地震の被災地に募金を届けて震災の経験も伝えるなど、さまざまな取り組みに携わってきた。
同校では太田さんのように個々や仲間うちなど、それぞれでボランティア活動に関わる生徒も少なくない。活動する中で、「ボランティアに参加してみたいけど…」「参加申し込みの締め切りが過ぎていた」などと一歩を踏み出せずにいたり、情報がうまく伝わっていないことを感じた太田さん。思いを持った人は多く、より早く情報を伝える必要性を認識した。
ただ、ボランティアという視点の多様さ、広域性も感じていて、「初めから多くに手を出すのは無理。まず防災、伝承に絞り込んで取り組もう」と考え、校内で参加を呼び掛け。それに1、2年生を中心とする31人が応えた。
この日、甲子町の同校で決起集会が開かれ、12人が参加。リーダーには太田さんが就き、副リーダーは石山友里花さん(1年)と佐々木遥花さん(同)、議長に中村希海さん(2年)と戸張闘志郎君(1年)を選んだ。
今後、「備える」「作る」「伝える」「つながる」の4つの視点を基に活動する予定。「子どもにも分かりやすい紙芝居を作って語り継ぎたい。かるたもいいかも」「地元食材を生かした防災食を開発しては」「予告なしの避難訓練をやってみたい。パニックになるかもしれないが、想定外の事態への対応力を身につける、主体的な判断を鍛えるためには必要ではないか」などと活発に意見を交わし、思いを共有した。
結成後の初活動として、3月に行われる市の震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」の開館1周年イベントに向け準備を進める。災害時に必要な知識や技術を学び合う防災ワークショップを企画する予定。また、市が昨年スタートさせた震災伝承や、大槌高復興研究会との交流も進める考えだ。
震災を経験していない子どもが増える中、伝承の必要性を感じ参加を決心した太田堅君(1年)。同じ思いを持つ仲間が意見を出し合うことで、効果的な発信ができると確信した。個人的には海外を含めた他地域の防災、減災、伝承の取り組みを深掘りしたい考え。「いろんな人とつながり、災害対応や教訓の伝え方の違いなど知らないことをどんどん吸収したい」と期待を膨らませた。
太田さんは大槌町出身で、震災で親族を亡くした。自然災害は避けられず、いのちを守るすべを身に付けるしかないと実感。「実際に震災を経験したからこそ伝えられることがある。人が変わっても、教訓は伝え続けなければ。未来につなぐ活動の始まり。緩い関わりでいいので、楽しく活動していけたら」と意欲を見せた。
釜石の一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校や釜援隊協議会、聖学院大(埼玉)が活動をサポート。同法人の伊藤聡代表理事は「行動力を大切にし、考えを思い切って実行してほしい」と見守った。
(復興釜石新聞 2020年1月29日発行 第862号より)
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