カナダ代表 土砂除去ボランティア、被災の住民 感謝で涙ぐむ〜屈強ラガーマン、台風被害に救いの手
台風豪雨で泥にまみれた千鳥町で、土砂の除去作業に汗を流すカナダ代表チームの選手やコーチら=13日午後
台風19号の影響でラグビーW杯の試合が中止となった釜石市で13日、カナダ代表チームがボランティア活動に汗を流した。泥にまみれた被災地に突然現れた、ラグビーで体を鍛え上げた屈強な男たち。水につかって重くなった畳を家の中から次々と運び出すなど、持ち前のパワーを発揮した。助けを受けた住民は「たくましいけど、やさしい心を持っている」と選手に感謝した。
カナダ代表チームは釜石でのナミビア戦に備え、今月10日から市内で合宿していた。市民の応援やもてなしに対する感謝の気持ちを示したいと、市社会福祉協議会を通して支援を申し出。台風による豪雨で多くの住宅が浸水した千鳥町で、土砂を片付ける清掃ボランティアに取り組んだ。
試合に出場する予定だった選手やコーチなど17人が参加。冠水した現場には土砂やがれきがたまっていたが、地元の住民と一緒にスコップやブラシを使ってかき集め、用意した袋に次々と詰めていった。
ラガーマンの救いの手に感謝する地元住民と記念撮影
チーム広報を担当するギャレス・リースさん(52)は「釜石が(東日本大震災の)被災地であることは知っていた。少しでも地元の人々のお役に立てば」と思いを寄せた。
タイラー・アードロン主将(28)は「試合ができなかったことは残念だが、自然災害には勝てない。でも、日本での体験はすごく楽しいものだった」。日本代表の快進撃にも触れ、「日本でラグビー人気が高まっていることも分かった。カナダは残念な成績に終わったが、今後は日本と同じ道をたどりたい」と前を向いた。
泥で汚れた家の中をきれいに片付けてもらった野田敬子さん(86)は「神の救い。本当に信じられない」と涙ぐみ、ラガーマンに手を合わせた。
選手が清掃ボランティアに奮闘する姿を見守った八幡のり子さん(66)は、経営する宅配弁当店でカナダチームにおにぎりを届ける予定だったという。「すごい、感謝だよね。まさか、ここまで手伝ってくれるとは…」。思わぬところで実現した国際交流を喜んだ。
(復興釜石新聞 2019年10月16日発行 第833号より)
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