震災の絆を活かしたまちづくりフォーラム、共助の大切さを再認識〜釜石の強みは「よそ者」を受け入れる力
釜石の復興と地方創生について考えたパネル討論
釜石市主催の「東日本大震災復旧・復興支援活動フォーラム~震災の絆を活かした復興のまちづくり」は5日、大町の市民ホールTETTOで開かれ、支援団体や行政の関係者、市民ら約500人が参加した。大規模災害における共助の取り組みの大切さを再認識し、震災に伴う復旧・復興支援活動を行った団体に感謝状を贈呈。元復興大臣政務官の小泉進次郎衆院議員による基調講演、パネル討論で今後の復興のあり方を考えた。
小泉進次郎衆議院議員が基調講演
野田武則市長が「震災から8年が経過したまちの姿を見ていただきたい。多くの支援に感謝の気持ちを伝えたい。復興後のありようを想像しながら、まちづくりにまい進していく」とあいさつ。「復興のあゆみ」を映像で振り返った後、アトラクションとして、釜石東中の生徒らと音楽ユニット「アクアマリン」の共演ステージが披露された。
復興への思いを込め合唱を披露する釜石東中生、アクアマリン
職員派遣や物資支援、寄付金、植栽ボランティア、人材育成など、市が把握する支援記録に基づいて実施した調査で支援が確認された200自治体(県内を除く)、144教育機関、685企業の計1029団体に感謝状を贈ることを発表。自治体を代表して大阪市、北九州市、岐阜県市長会、東海市、教育機関は聖学院・聖学院大と拓殖大、企業ではディック・ブルーナ・ジャパンとUBSグループの計8団体に野田市長がじかに謝意を表した。
小泉氏は「人口が減るのは釜石だけじゃない。日本全体だ。」と題して基調講演。人生100年時代を迎える中、高齢者の定義や年金制度の見直しなど独自の持論を展開しつつ、「減るものは減る。人口を尺度にしたまちづくりはやめるべき。発想の転換が必要。今までの前提を疑うことが明るい未来を考える第一歩」と指摘した。
基調講演した小泉氏
これからのまちづくり、国づくりに必要なのは「人口減少を強みに変えること」と強調。「自由をかみしめ、一人一人が生きたい人生を選択できる環境整備に力を入れていくべき。多様な生き方、価値観を大切にしていく時代。いろんな挑戦を忘れないまちには人が集う」と訴えた。
パネル討論のテーマは「釜石の復興・地方創生とこれから」。総務省地域力創造アドバイザーを兼務する一般社団法人RCFの藤沢烈代表理事がコーディネーターを務め、パネリストには小泉氏のほか、元釜石市副市長で現在は財務省に復帰した嶋田賢和さん、UBS銀行(スイス)のCSR・社会貢献活動(アジア太平洋地域担当)を統括する堀久美子さんが加わった。
嶋田さんは副市長時代を振り返り、「場所の再生、下支えになる安心づくりを進めた。課題を市役所だけで抱え込まず、分からないことは支援団体、プロに相談する。何より重要なのは住民との対話。こうした地域活動が今、花開きつつあるのでは」と、変化するまちの印象を話した。
堀さんは、現在も継続する高校生を対象にしたキャリア教育事業の取り組みを紹介。「自分で考え、決め、実行していく主体性が育まれている。これが釜石らしさにつながれば」と期待した。
3人に共通する釜石の強みは「よそ者を受け入れる力」。小泉氏は「まちづくりに大切なのは知名度。知られないのは存在しないことと同じ。外から入り続けるよそ者に売り込んでもらえばいい」とヒントを残した。
(復興釜石新聞 2019年7月10日発行 第806号より)
東日本大震災復旧・復興支援活動フォーラム ~震災の絆を活かした復興のまちづくり~
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