まき商品化、高齢者の手で〜就労の場提供支援、釜石市社協 地元林業と連携
復興釜石新聞アーカイブ
福祉と林業を組み合わせた就労支援事業を始めた関係者
釜石市社会福祉協議会(丸木久忠会長)は、東日本大震災で被災した高齢者らの社会参加をサポートするため、生きがいのある活動の場を創出する事業をスタートさせた。豊かな森林資源に着目し、林業と福祉を連携させた新たな試みで、地元産材のまきを商品化。関係者は、コミュニティーづくりや生計、健康への不安などで引きこもりが懸念されるといった被災地が抱える高齢者福祉の課題解決、持続可能な地域づくりにつながる取り組みとして期待を寄せる。
市社協では震災後、被災者の自立やコミュニティー形成支援、見守り活動に取り組んできた。「ポロ」ブランドの衣料品を展開する米国のラルフローレンなどからの助成を受け、活動の担い手となる人材を確保し、地域の力で継続するための取り組みも進めてきた。
今年3月で助成期間が終わり、活動を振り返った市社協では、生活する上では物理的な満足感のほか、生きがいといった精神的な充足感の必要性を実感。将来の生計への不安を取り除くため、就労の機会創出も重要になると、新たな支援事業の展開を模索した。
地場産業との連携、就労支援による地域の活性化と所得向上を目的に考え出したのが、まきの販売。市社協と釜石地方森林組合(久保知久代表理事組合長)、福祉支援を行う市内の一般社団法人「ゴジョる」(細川隼代表理事)の3者が連携し、9月から事業化に向けた取り組みを試行してきた。
箱崎町の加工場でまきづくりに取り組む高齢者
まき販売のめどが立ったことから、24日に片岸町の同組合で概要を説明した。活動者となる高齢者らは、箱崎町の加工場に同組合から買い取った木材を搬入し、機械でのまき割り、乾燥などの作業を行い、2~3カ月かけて商品化する。現在74~85歳の男女5人が週1、2回活動。1回当たり3~4時間で2千円の工賃を得ている。この事業もラルフローレンの助成で実施。本年度内に活動する人を10人程度まで増やす考えだ。
久保組合長は「すぐに使えるまきが欲しいという声があり、良い視点の事業になると確信。森林資源を生かして今後も地域に貢献していきたい」と強調。丸木会長は「3者で助け合い、被災者の生きがい、生きる力につなげたい。この事業が軌道に乗れば、被災者に対する支援の良い例になる」と期待した。
同日は箱崎町の加工場で作業が行われており、4人が活動。85歳の男性は「ぶらぶらして暇だから、何か手伝おうと参加。体を動かすのがいい。楽しくやっています」と明るい笑顔を見せた。
まきは針葉樹や広葉樹などの種類があり、価格は7キロ350~700円。問い合わせは、市社協内に事務所を置くゴジョる(電話0193・22・2310)へ。
(復興釜石新聞 2018年10月27日発行 第735号より)
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