被災林再生へ植樹、尾崎半島にコナラなど200本〜苗木に未来託す、尾崎100年学舎 釜石森林組合
急斜面の植栽地で高橋参事(左)から植樹の方法を聞く参加者
昨年5月に約413ヘクタールの山林を焼失した釜石市の尾崎半島で6月30日、地元の魅力を再発見し、発信する活動を推進する任意団体尾崎100年学舎(久保晨也代表)と釜石地方森林組合(久保知久組合長)が共催で植樹祭を行った。真夏日となる暑さの中、スタッフを含め18人がカラマツ、コナラ、ミズナラ、オオヤマザクラなど約200本の苗木を植えた。
現場は、森林組合がボランティア植林地とする市有林1・93ヘクタール。北東方向に小松湾、尾崎半島の先端を見下ろし、北に三貫島や御箱崎半島を遠望する斜面で、被災木の伐採、地ごしらえが施されている。植樹会は昨年から約1年の間に10回を予定し、今回は9回目となった。春と秋に集中して行い、約5千本の植樹を見込む。500本以上が残され、最終回は今月中に行う予定。
今回の植樹祭には、県内、近隣の学生や社会人が参加。尾崎白浜のJF釜石湾尾崎白浜コミュニティ番屋で開会式を行った。100年学舎の活動と森林再生への取り組みが報告された。昨年は半島トレッキングを5回実施、参加費を植樹事業に充て、被災木を原料に木製グッズを販売した益金も加えた。
森林組合の高橋幸男参事が大火被害と森林再生への経過を説明。山林経営の継続に苦慮する個人所有者の意識が前向きに変わり、行政、組合、ボランティアの応援が続く状況を伝えた。
久保組合長は「苗木にみなさんの未来を託す気持ちで植えてほしい。暑さに注意しながら、いい汗を流してほしい」と激励した。
現地で植樹の要点を聞き、2人1組で急斜面の植樹に取り組んだ。広大な焼け跡を見回し、汗をぬぐっては晴天に青く輝く海、三陸海岸、水平線などの遠望も満喫した。高橋参事が「火災直後には生命の音が一切ない怖さを実感した」という一帯には、小鳥のさえずりが聞こえ、ムラサキツユクサの花、チョウも姿を見せた。
東日本大震災の支援を契機に大船渡市で起業した大関輝一さん(48)は「友人の関係で参加した。被災した山林はすごい広さ。それを伐採し、整備する労力は大変だと思う。植樹は大船渡市の(市の花)ツバキで経験している。きょうは20本ほど植えた。ひどい暑さで、作業時間(約2時間)はぎりぎりだった」と汗をぬぐった。
昼は番屋で会食。共催する釜石湾漁協・白浜浦女性部が準備したウニご飯、カキの吸い物など海の幸を味わいながら奮闘を振り返り、森林再生への道筋を語り合った。
(復興釜石新聞 2018年7月7日発行 第704号より)
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