風切るヨット 子どもら笑顔、被災の根浜に歓声響く〜震災後初の体験教室
風を受けて進むヨットの面白さを体験した教室
釜石市鵜住居町根浜を拠点に活動する釜石ヨットクラブ(三浦勝会長)は7月30日、子どもから大人まで一般の人たちを対象としたヨット教室を開いた。同教室は2008年から始めたが、11年に発生した震災の影響で、休止が続いていた。7年ぶりの復活に関係者の喜びもひとしお。甚大な津波被害から昨年、復旧にこぎつけたフィッシャリーナ周辺に子どもたちの明るい笑顔が戻ってきた。
教室には市内の小・中学生と県内外の大学生ら12人が参加した。風で動くヨットの原理など基礎知識を学んだ後、4艇で大槌湾内に出艇。参加者はクラブメンバーと2人1組になり、大海原でのヨット操縦を体験した。
この日は午前9時から10時台は風が弱く、ヨットを走らせるのに苦労したが、11時を過ぎてから良好な風が吹き始めた。午後には青空ものぞき、夏らしいマリンスポーツ日和に。参加者は復興が進む根浜、片岸地区の海からの景色を目に焼き付けながら、ヨットの醍醐味(だいごみ)を味わった。
山﨑成美さん(鵜住居小6年)は「ヨットは意外とスピードが出た。風向きによって(帆がうまく風を捉えられるよう)方向転換するのが大変だったけど、楽しかった。また乗ってみたい」と目を輝かせた。
長野大の4年生で、箱崎町の実家に帰省中の小林啓太さん(21)は「海の素晴らしさを肌で感じ、自然と一体になる感覚が最高」と初めてのヨット走行を満喫。震災時は釜石東中の3年生で、根浜の惨状も目の当たりにした。「完全復興にはまだまだ時間がかかるだろうが、防潮堤が整い、海のレジャー客もちらほらと見え始めている。前のようなにぎわいが復活してほしい」と思いを込めた。
同教室は昨年の岩手国体を見据え、選手候補となるジュニアを育成しようと始められたが、3年続けたところで震災が発生。所有するヨットが流され、クラブの活動自体も存続が危ぶまれたが、各地の仲間の支援で活動を再開し、今年は念願だった本格的な体験教室を実現させた。
「当初、子どもたちが集まるか心配もあったが、予想以上に反響があった」と手応えを実感する三浦会長。「クラブのメンバーが年を重ねていく中で、釜石のヨット活動継続には小・中学生など若い世代に『ヨットをやりたい』と思ってもらえるような取り組みが必要。県民大会などに出場できる選手も育てたい。教室も年に2、3回開催できれば」と、若手への競技普及に意欲を見せた。
(復興釜石新聞 2017年8月2日発行 第610号より)
釜石ラグビッグドリーム2017 – 縁とらんす
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