唐丹小・中学校 苦難乗り越え新校舎へ〜卒業生、住民ら喜びの「同窓会」
大震災後に唐丹小・中学校で苦楽を共にした卒業生、教員、住民が新校舎を見学
2月20日から新校舎での授業が始まった唐丹小、唐丹中に5日、卒業生や教職員、地域住民ら約50人が集い「新校舎完成を祝う同窓会」を開いた。ぬくもりが感じられる木造をコンセプトに建てられた体育館や校舎を見学。児童・生徒の「学び」の復興を後押しする新校舎の設備と、震災後大きく変化しつつある周囲の景観を目に焼き付けた。
同窓会は、昨年11月に組織した唐丹小中学校完成記念行事実行委員会(河東真澄委員長)が主催。中学校の2010~15年度卒業生、震災以降に両校に在職し転勤した教員や地域住民らに参加を呼び掛けた。
教員と卒業生は震災で全壊した旧唐丹小に在校、あるいは平田小での同居授業を経験。半壊した中学校の校舎にも立ち入りができず、体育館を仕切っての授業を経て、12年1月から4年余りにわたり仮設校舎で授業を継続した。
中学校の校舎跡地に建つ真新しい体育館に集まった参加者は、緩い斜面に階段状に連なる2階建て5棟の校舎を巡った。「迷いそう」「どの場所が一番、いい景色を見られるか」などと話しながら見学を楽しんだ。
体育館では、新校舎完成までの動きや地域住民に見守られて生き生きと活動する児童・生徒の様子を記録映像で再現。震災後、小・中の校長を務めた4人のメッセージも紹介された。また、郷土芸能の「本郷桜舞太鼓」が勇壮な音を響かせ、祝い気分を盛り上げた。
釜石中の三浦誠教諭(49)は10年度から4年間、唐丹中に在職し同僚教員、生徒、住民と苦楽を共にした。「大きな打撃を受けた家族や地域の生活に加え、体育館での授業も生徒には大変だったろう。先生は生徒の心を支え続けた。生徒は友達と一緒の時間を大事にした。当たり前の日常のかけがえのなさを感じたようだった」と振り返った。
震災当時、唐丹小6年生で同級生15人と卒業式を目前にしていた尾形拓真君(18)は1日に釜石商工高(電子機械科)を卒業、間もなく市内に就職する。自宅は流失。無事だった家族と仮設住宅を経て、最近戸建ての新居に移った。「体育館での授業は、ほかの音楽の授業の音が聞こえたりしたが、苦にはならなかった。それも楽しかった気がする。鉄骨(プレハブ)の仮設校舎も嫌ではなかった」と振り返り、「木の校舎はいい感じ」と後輩たちへの何よりのプレゼントを喜んだ。
尾形君の同級生のうち数人は、進学や就職でふるさとを離れる。新校舎での「同窓会」は、尾形君たちの年代の巣立ちを祝い、新生活へのエールでもあった。
唐丹小・中の新校舎落成式・祝賀会は4月を見込む。同実行委員会は8月の月遅れ盆に合わせ、校舎見学会と写真展を予定する。学校施設は、旧体育館と仮設校舎の解体後、新年度内に校庭、プールが整備される。
(復興釜石新聞 2017年3月11日発行 第570号より)
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