元気な橋野の源に、産直「どんぐり広場」感謝デー〜開設20周年、意欲新たに
旬の野菜などが並んだ橋野どんぐり広場の店内
釜石市橋野町の「橋野どんぐり広場産地直売所」は23日、お客様感謝デーとして、野菜のプレゼントや「ひっつみ汁」のお振る舞いを行った。橋野地区直売組合(藤原英彦組合長)が運営する同産直は、今年で開設20周年を迎える。藤原組合長は「新鮮で安全な野菜を手ごろな価格で提供するという産直の原点を守りながら、付加価値を高めていきたい」と意欲を新たにした。
日ごろの利用に感謝する年1回の恒例行事。店内にはハクサイやダイコン、ホウレンソウなどの冬野菜、カキやリンゴなどの果物、漬物や菓子など豊富な品数が並んだ。来店客はお目当ての品を買い求め、組合員が提供した旬の野菜などのプレゼントを受け取った。ひっつみ汁は約200食分用意され、本格的な冬の到来で冷え込みが増したこの日には、身も心も温まるうれしいお振る舞いとなった。
友人家族と鵜住居町から訪れた女性(40)は「今は野菜が高いので、新鮮で安く買えるどんぐり広場は魅力的。イベントの振る舞いも楽しみの一つ。子どもたちは団子や漬物がお気に入り。隣の水車小屋のある公園で遊べるのもうれしい」と笑顔を広げた。
この日は、橋野の生産者が市、釜石・大槌地域産業育成センターと特産化に向け取り組むキクイモのPRコーナーも設けられた。漬物にしたものを試食してもらい、その他の調理法も紹介。産直での販売も行われた。キクイモは健康への効能も期待され、さまざまな研究対象になっており、試食した人も興味をそそられていた。
橋野どんぐり広場は、地区内のバイパス道路開通に伴い、1996年5月にオープン。市の要請を受けた橋野町振興協議会が全戸に声がけし、集まった50人余りでスタートさせた。同町の生産者はそれまで、農協の集荷や市街地の朝市への出店などで販路を確保していた。地元直売所の誕生は小規模農業者の販売も可能にし、「少ない量でもここに持ってくれば売れるので、生産者の生きがいづくりにつながった。何より母ちゃんたちが元気になっている」と藤原組合長。
橋野産の野菜が入ったおいしいひっつみ汁に子どもたちの箸も進む
組合結成当初、55人だった組合員は、今では栗林、鵜住居町などの生産者も加わり89人にまで拡大。販売品目も農産物のほか、パンや菓子、手工芸品など100を超えるまでになった。橋野鉄鉱山の世界遺産登録後は、関連の土産物コーナーも設置。観光シーズンには同鉄鉱山インフォメーションセンターへの出前産直も実施している。市中心部で開催される味覚まつりなどのイベント出店にも協力を続ける。
安心・安全、地元ならではの味、おもてなしで着実にファンを増やしてきたが、震災後は常連客が多かった鵜住居、大槌町の被災、山菜の出荷規制などが影響し客数が減少。特に今年後半は、台風10号被害による笛吹峠の通行止め、野菜の不作と厳しい状況が続く。
藤原組合長は「生産者の高齢化が進み、今後、絶対的な品数の不足が懸念される。生産技術を受け継ぐ後継者の育成が課題」と話した。
(復興釜石新聞 2016年11月26日発行 第541号より)
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