秋色深まる釜石まつり、復興へ市民の心意気〜曳き船にぎやか海上パレード、合同みこし渡御 16団体、1100人参加
郷土芸能団体がはやしたてる中、薬師公園前の御旅所に到着したみこし(前が尾崎神社)
東日本大震災以降、復興祈願祭として回を重ねる伝統の「釜石まつり」は14日から3日間にわたって行われ、まちは釜石再興を目指す市民らの心意気と熱気に包まれた。呼び物の「曳き船まつり」は15日に釜石湾内で行われ、大漁旗を掲げた船団がにぎやかに海上パレード。最終日の16日は、尾崎神社と新日鉄住金釜石製鉄所山神社の両みこしが、復興の進展で変わりゆく中心市街地を練り歩いた。
尾崎神社のみこしが海上を渡御する曳き船まつりは、江戸時代から受け継がれる伝統神事。東北では最も古くからの船祭りとされ、海上安全や大漁などを祈願する。尾崎半島青出浜の同神社奥宮で、みこしにご神体を迎えた13隻の船団は、秋晴れに輝く水面を進み、新浜町第2魚市場前に姿を現した。
秋の日差しに輝く色とりどりの大漁旗が美しい曳き船まつり
みこしを乗せた御召船「第18宝生丸」が岸壁に近づくと、乗船者と見物客が津波犠牲者の鎮魂と冥福を祈って黙とう。震災から5年7カ月が経過した海に静かに手を合わせた。
各船には所有者と共に郷土芸能団体が乗り込み、鮮やかな大漁旗がはためく船上で神楽や虎舞を披露。岸壁すれすれまで船を近づけ舞を見せるなど、見物客を大いに沸かせた。
源太沢町の紺野数男さん(71)は、釜石製鉄所が全盛だった人口9万人時代の祭りのにぎやかさを懐かしみ、「人出は減ったが、昔ながらの曳き船はやっぱりいいね」と笑顔。人口減の歯止めと復興加速を何よりも願った。
東部地区の復興事業を手がける中央ブロック共同提案体は、みこしの担ぎ手などで約50人が3年目の協力。熊谷組工事課長の平野貴規さん(50)は「祭りへの参加はわれわれの約束。地域を盛り上げようとやっているが、自分たちも楽しませてもらっている」と話し、みこしが陸に上がる時を待った。海上渡御を終えたみこしは、盛り土造成や新魚市場建設が進む東前、浜町地区を進み、尾崎神社里宮に向かった。
翌日の合同みこし渡御には16団体約1100人が参加。行列参加者が鈴子町のシープラザ遊に集まり合同祭の神事を行った後、新浜町まで練り歩いた。途中の”御旅所”や大町のお祭り広場では、各団体が神楽や虎舞、鹿踊りなどを披露。沿道を埋めた見物客から盛んな拍手を受けた。
子どもから大人まで幅広い年代が伝統の舞で魅せた錦町虎舞=大町目抜き通り
釜石製鉄所に勤務する畠山克己さん(20)は山神社のみこしを担いで2年目。「この祭りは伝統行事というのを実感するし、明るく楽しい雰囲気がいい」と満喫。釜石シーウェイブス(SW)RFCに所属するラグビー選手でもあり、「3年後のW杯に向け、復興がさらに進むよう期待する。チームも勝ち続けているので、このまま調子を上げていければ」と力を込めた。
大渡町から只越町地区は復興公営住宅の建設がピークを迎え、今年に入り、完成した住宅に移り住む人たちが増えている。2基のみこしは、震災後に建設された建物が増えつつある目抜き通りを進み、見物客らに市街地復興の進展を感じさせた。
青葉通りに軒を連ねた祭りの出店は終始にぎわいを見せた
友人5人で祭りを見にきた釜石中1年の植田麗緒奈さんは「行列に友達もたくさん出ていて、かっこ良かった。祭りはウキウキした気分になる。早く復興して活気に満ちたまちになってほしい」と未来への希望を膨らませた。
(復興釜石新聞 2016年10月19日発行 第530号より)
平成28年 釜石まつり – 縁とらんす
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