釜石シーウェイブスRFC選手紹介2020-2021シーズンインタビュー 第2弾『須田 康夫 FWコーチ』
選手紹介2020/11/26
須田 康夫 FWコーチプロフィール
釜石SW在籍年数8年(2010年~17年シーズン)。14年~17年の4シーズン、キャプテンを務める。
1983.11.09生(37歳)/185cm/90kg/宮城県石巻市出身/専修大卒
釜石シーウェイブスRFC公式サイトプロフィールページ
企画・編集:釜石まちづくり株式会社
取材・文:市川 香織(釜石まちづくり株式会社)
写真:西条 佳泰(株式会社Grafica)
釜石への想いは強くあるので
ーーまずは、今シーズンフォワード(FW)コーチに就任された経緯について教えてください。
須田FWコーチ:
最初に本年度より総監督になられた坂下さんから「協力してくれないか」と連絡を頂きました。それから、桜庭GM、三浦アドバイザー、高橋シニアアドバイザーからも連絡頂き、お話から“今年にかける想い”がすごく伝わってきましたので検討することになったのが始まりでした。
ただ、現役中はプロ契約選手だったので、引退してセカンドキャリアをスタートさせたばかりでしたから、少し考えさせてくださいとお時間を頂きました。
でもやっぱり、結局自分は“打たれれば響く”タイプなので、“やるしかない”かなと思いましたし、皆さんからすごく熱意が伝わってきたので、お話を受ける事になりました。
ーー今、お名前が出た皆さんから熱い想いが届いたら、それはきっと応えたくなりますよね。
須田FWコーチ:
そうですね、ずっとお世話になりましたし、私も釜石への想いは強くあるので。
悩んだ部分も多かったんですけれど、元々コーチングには興味があり、学んでいたし好きだったので、腹をくくってチャレンジさせてもらう事になりました。
ーーセカンドキャリアという言葉が出ましたが、現役引退後はどのようなお仕事を?
須田FWコーチ:
知人の紹介で、イオンタウン株式会社とのご縁を頂きまして、デベロッパー事業の開発部門で働いていました。その分野のスペシャリストを目指して頑張っていた所でした。
とは言っても、まだ駆け出し中だったので、会社に貢献出来たか?というとまだまだだったんですが・・・(笑)
土地の開発段階から携わる事が出来る仕事で、“まちづくり”という観点で釜石の復興に思いを持って尽力されている会社だったので、ラグビーで釜石を盛り上げたいと思っていた僕にとってはすごく興味があり、とても遣り甲斐のある仕事をさせていただいていました。
ーーお仕事がそういう状況の中で、今回のお話が来て、迷われたんですね。
須田FWコーチ:
そうですね。職場も素晴らしい環境だったので、本当にこの部分で悩みましたね(笑)。
あとは、もうすでに新型コロナの影響があったので、決めるまでに長い時間が必要でした。
チームにとって重要な期間だったと思います
ーーせっかく首脳陣からの熱い想いを受け、“よし!”という気持ちでいつものシーズンならスタートする所に、コロナ禍が水を差してチームづくりもままならない状況だったかと思うのですが…。
須田FWコーチ:
でも、“コロナ禍”の中でも出来る事はやれました。
選手達は、自分達でコントロールできない事を嘆くより、コントロールできることを精一杯やろうと積極的に取り組んでくれていたので、フォーカスポイントが明確で良かったと思います。
ーー制限のある中で、選手とのコミュニケーションはどのように取られていたんですか?
須田FWコーチ:
基本的には、練習は距離を保って行い、ミーティングも密にならないように外でしていました。来た当時はまだ接触がダメで、ラインアウトもスクラムも組めませんでしたので、個人スキルの部分でフィジカル強化を中心に取り組みました。
そういうベーシックな部分にこれだけ時間をかけてフォーカスする事は、普段のシーズンだとなかなか出来ない事でもあるので、考え方を変えれば、チームにとって重要な期間だったかなと思います。
ーーグランド外でのチームビルドについては、選手同士のやり取り等、コーチとして見ていてどうでしたか?
須田FWコーチ:
チーム内に色々な活動グループがあるんですが、その中に“チームソーシャル”というグループがあって、そのグループの選手が色々と企画してくれていますね。
シーズン前の合宿中に「釜石についての勉強会」というプログラムの時間を入れましょうと提案してくれていたり。そうした事を重ねる中で、チームもまとまって行くと思いますね。
ーーこの“コロナ禍”で、ラグビーはもちろん、生活の中で考える事などの変化はありましたか?
須田FWコーチ:
今回のこのオンラインでのインタビューもそうですけど、一つの部屋に集まってミーティング出来ないとか、新しい形に変えていく必要があって、そこに対応していく為に、例えばセットプレーやムーブの資料をきちんとデータ化した形に作り直すとか、そういう作業がまず増えましたね。外でミーティングしたとしても、時短の為に、ラインで先に送って読んできてもらうなどしていました。
選手とのやり取りも、本当だったらグラウンドで実際に動きながら、こと細かく説明できるのが一番いいんですけれどね。ただ、事前に理解を深めてもらって、グランドに来たら”あとはやるだけ”になっていたので、この期間の時間の使い方としてはそれが効率的だったと思います。
指導する事で多くの学びがあります
ーーコーチングに興味があったという事ですが、コーチングの魅力ややり甲斐はどういう部分ですか?
須田FWコーチ:
そもそもコーチングに興味を持ったのは、2012年にSWのヘッドコーチを務めたポール・ホッダーさんの影響です。彼は、ニュージーランドのワイカト(地域)のラグビー協会で、コーチを教える資格を持った“コーチ”なんです。
彼が釜石にいる時に、岩手県の高校のラグビー部に指導する機会があって、当時のチームのプロ契約選手中心にその場に参加し、練習の構成から、トークする時の立ち位置やコーチングのあり方などを指導してもらっていました。その時に、指導した高校生が上手になって行く姿を見て、コーチングの魅力を感じました。
選手側の立場としても、その頃からプロ選手にはチーム内でのリーダーシップが必要とされていたので、コーチの意図をくみ取ってチームに伝えるとか、勝つためにどういった練習が必要なのか?とかも自分で考えるようになりました。
選手として成長する材料になりましたし、指導する事で多くの学びがあるので非常にやりがいを感じます。
今の選手も、ラグビー初心者に指導する機会があったりするといいですね。
ーー全員揃ったのが2週間くらい前になりますが、ここまで順調に来ていますか?
須田FWコーチ:
順調とは言えない中、最後に外国籍の選手が合流したんですが、彼らが日本の文化に慣れるのも大変だと思います。日本のラグビーとそれぞれの国のラグビーとは違う所もあるでしょうし、チームにフィットするのにやはり時間が必要だなという事を、今感じている所ですね。
それ以外の選手は、ここまで長い期間ハードトレーニングをして来ていて、スキルやフィジカルは上がってきていると思います。
ここまでは、ベーシックスキルにフォーカスしながら、チームでやりたい事を理解してもらった上で、色々な選手を使ってセレクトしている段階だと思うんです。ここからは、チームとしての成長速度を加速し、精度を高めて行かなくてはならないと感じています。
ーースクラムコーチには、選手兼任の吉田選手が。
須田FWコーチ:
彼はスクラムについての理解度が高いですし、彼自身のやりたいスクラムもあって、こだわりがあるので適任だと思います。
「SWのスクラムをどう落とし込んでいくか?」を、二人で良く話し合ってますね。10年前に一緒に釜石に入団した同期なので心強いです(笑)。
ーーそして、来週からFWキャンプに。FWはいつもチーム全体のキャンプとは別に期間が設けられていますが、その意義はどのあたりにあるのでしょうか?
須田FWコーチ:
結論から言うと、一番大事なキャンプですね(笑)。
チーム内でスクラム練習を数多く組める状況ならいいんですけれど、実際はなかなそうもいかないですし、チームによって色々な組み方がありますので、対応する力を付ける為に数をこなす事は必須です。実際に他のチームと組むという事が必要なんですよね。
今回は東芝さんと練習させていただくのですが、タフなスクラムを持っているチームなので、チームの目指すトップリーグ(TL)の強豪と組み合って、実際に体感するという事はとても大きいです。今後の指針、近い目標になるのかなという感じですね。
釜石SWはファイティングスピリットが原動力のチーム
ーー今シーズン、須田さんの中でキーになる、期待したい選手は?
須田FWコーチ:
フランカーのサム・ヘンウッド選手は、とてもエネルギッシュに活躍してくれていますね。人柄もいいですし。
日本人選手にも見習って欲しい選手なので、一緒に良いFWを作って行きたいですね。
ーーシーズンINまでの残り、ここからの期間はどんな点にフォーカスしていきますか?
須田FWコーチ:
ここまではしっかりとベーシックスキルの積み上げをやってきたので、合宿からはそれを元に、試合に直結する釜石FWの強みを作っていきたいと思っています。
ーー一旦離れたチームに戻って、この“釜石SW”というチームについて改めて感じていることはありますか?
須田FWコーチ:
やはり釜石SWは、ファイティングスピリットが原動力のチームでなければならないと改めて感じます。
本来SWがあるべき姿というものがあると思うので、そういった事を伝えて行かなくてはならないと思っています。
2015.9.27 日本IBMビックブルー戦@釜石市球技場
ーー本来あるべき姿というのは?
須田FWコーチ:
東北の中からしっかり上を目指す、素直に自分自身にチャレンジするチームというのが、釜石SWだと思います。
選手には、自分の得意なプレーだけするのではなくて、苦手なプレーもどんどんチャレンジして行って欲しいですし、常に自分に矢印を向けて、心身共に成長する場所であって欲しいと思いますね。
スコット・ファーディーのように夢を掴んだ選手もいますので、もちろん外国人選手だけではなく日本人選手も含めて、ぜひこのチームから、各国の代表に選ばれる選手が出て欲しいですね。
ーーチームカルチャーという点では、ぜひ須田さんにそういう所を後輩たちに伝えて欲しいという事も、今回の招集の理由の一つではないでしょうか。
須田FWコーチ:
そうですね。自分がこのチームで経験した事はたくさんあるので。
設備や環境はTLのチームのレベルには及ばないですが、その中でもやれば必ず出来るという事を、どんどん証明していく役割があると思っています。
ーー最後に、読者の皆さんへメッセージ、今シーズンの抱負をお願いします。
須田FWコーチ:
ここ最近は、選手が毎年多く入れ替わり、長く在籍する選手が少なくなってきましたけれども、今年からは腰を据えて強化を図って行く方針です。
皆さんにとって、「週末のSWの試合が気になって気になってしょうがない」というチームになりたいと思いますので、ぜひ、引き続き変わらず熱い応援をよろしくお願いいたします。
チーム活動情報、リーグ戦日程等の最新情報は、先日リニューアルされた釜石SW公式サイトをご覧ください。
https://www.kamaishi-seawaves.com/