釜石シーウェイブスRFC選手紹介2019 第11弾『トップチャレンジリーグ開幕直前! 中野&小野共同キャプテンインタビュー 』
選手紹介2019/11/12
アジア、そして、日本で初めて開催された、ラグビーワールドカップ(RWC)™。日本代表の躍進に日本中が沸き立ちました。ラグビーが持つ“力”がどんどん浸透していく様子をこの上なく嬉しく感じたラグビーファンも多かったことでしょう。
ここ釜石では9月25日、フィジー対ウルグアイが晴れ渡る空の下で行われ、ウルグアイが格上のフィジーに勝利するという劇的な試合内容となり、釜石鵜住居復興スタジアムの歴史に新たな1ページが刻まれました。
そして、10月13日に予定されていたもう1試合、ナミビア対カナダ戦は、残念ながら台風19号の影響を受けて中止となりました。ですが、釜石が真の意味で“ラグビーのまち”であるという事を、私達市民が自分達が思っていた以上に実感出来た事、それがこの大会開催の“レガシー”の一部ではないでしょうか。
このレガシーを受け継ぐ存在の一つ、「釜石シーウェイブスRFC(釜石SW)」がこの町にあるという事、それは、ホームスタジアム「釜石鵜住居復興スタジアム」と共に、他のどの地域にも負けない宝となりえる存在だと感じます。
その釜石SWが今シーズンを闘うステージ、トップチャレンジリーグ(TCL)は間もなく開幕!中野裕太選手、小野航大選手の共同キャプテンのインタビューをお届けします。
中野 裕太(なかの ゆうた)選手(所属先:日鉄テックスエンジ株式会社)プロフィール
2016年加入/1989.11.16生(29歳)/180㎝/100㎏/福岡県北九州市出身/早稲田大学卒
●ラグビーを始めたきっかけ:親のすすめ(8歳から)
●ポジションの遍歴:CTB→No8、FL
●ニックネーム:キャノン
小野 航大(おの こうだい)選手・所属先:NSテックスエンジ釜石(株) プロフィール
2014年加入/1991.12.15生(26歳)/170㎝/80㎏/福島県いわき市出身/磐城高校→東海大学卒
●ラグビーを始めたきっかけ:8歳の時、父にすすめられて
●ポジションの遍歴:SO→WTB
●ニックネーム:オノ、オノちゃん
企画・編集:釜石まちづくり株式会社
取材・文:市川 香織(釜石まちづくり株式会社)
写真:西条 佳泰(株式会社Grafica)
気になった事はすぐ言える間柄に
ーー今シーズンは中野選手と小野選手が共同キャプテンになりスタート。改めて、2人体制の意味合いは?
中野選手:
お互いにFWとBKなんで、それぞれのポジションで分からない事をカバーしあえたりする事が一番大きいと思います。
小野選手:
実質、昨年までもキャプテンとバイスキャプテンがFWとBK、それぞれのポジションの選手だったので、それの延長線上でそんなに特別な事ではない感じなんですけど、今年のこの体制はゲームの中ですごくやり易さを感じています。
ーーお2人だけでミーティングする事もありますか?
中野選手:
ミーティングというか、そんな畏まった感じではないですけど、ご飯食べに行ったりとか、風呂入っている時とかに2人でよく話したりしていますね。
ーーこの体制になって、そういう機会が増えた感じですか?
小野選手:
いや、もともと良くコミュニケーションを取る間柄だったので、特にこうなったから意識して増えたという事でもないんですけど。
中野選手:
何か気になる事があったら、普段からすぐに言えるようにという感じですね。
ーー確かに、9月25日のフィジー代表 対 ウルグアイ代表戦の時に、ご家族連れでご一緒の所をお見かけしました。
中野選手:
小野に一緒にチケットを取ってもらって(笑)。
小野選手:
なので、席も隣でした(笑)。
自分たちをしっかり振り返る事が出来た
ーー夏シーズン、初めての「トップリーグカップ(TLC)」について。振り返っての感想を。
中野選手:
一つは、公式戦という位置づけでTLチームと戦えたという事が、チームとしては良い事だったと。その影響は色々な所にあって、“試合に出る、出ない”もありますし、試合後のリカバリー、試合から試合までの過ごし方の所だとか、若手選手にも出場の機会がありましたし、様々な経験が積めたことが大きかったと思います。
ーー実戦の中で得られる事だけではなくて、準備段階から全てにおいて、チームにとって良い経験になったという事ですね。小野選手はどうでしたか?
小野選手:
中野さんが言っていたように、公式戦という形でTLチームと対戦する事自体がこれまでほとんど無かった事なので、自分たちが目指している“TL”が実際どういうものなのかを肌で感じられたという事が、チームにとってすごくプラスになったと思います。
その中で、自分たちに足りない部分と、ある程度出来る部分、そういう所をしっかりと自分たちの中で振り返る事が出来たのがTLCだったと思うので、そこを踏まえてシーズン向けてどうして行けばいいのか?とか、足りない部分について感じる事が出来た選手が多くいれば、それが良かったんじゃないかなと思います。
ーーTLに昇格した三菱重工相模原に勝利しましたが、あの試合は、自分達がやりたい事、やるべき事をして勝ったという感じでしたか?
両選手:
ん~・・・。
小野選手:
それなりに・・・。
中野選手:
あの試合の前の2試合で、特にスクラムでプレッシャーを掛けられてしまう部分が多くて、ラグビーってスクラムの良し悪しでけっこう試合内容が変わってくるんですけど、三菱重工相模原戦に関しては、そのスクラムが安定してマイボールをきちんと出せたりとか、ペナルティを取られなかったというのが大きかったと思います。
小野選手:
あとは、他のゲーム以上に、自分たちがやるべき事があのゲームの前に明確になっていましたし、TLCが始まる前からある程度、後半の三菱重工相模原、コカ・コーラ戦に照準を合わせて勝負出来るようなイメージは皆持っていました。チームとしてゲームに勝つ事も視野に入れて臨んだゲームだったので、あのゲームに懸ける想いの強さで、ああいう試合が出来たのかなと思います。
“ONE TEAM”という部分は、少しずつ良くなって来ている
ーー春に中野選手にお話を伺った時や他の選手のインタビューでも、キーワードは“ONE TEAM”“一体感”で、それがテーマであり課題なのかなと感じました。
中野選手:
そうですね、春夏シーズンを経て、その“ONE TEAM”という部分は少しずつ良くなって来ているかなと。少しずつ・・・ですけど、これをもっともっと大きくして一体感のあるチームにして行けば、より良いチームになると思います。
ワールドカップを観ていると日本代表もすごく“ONE TEAM”という事を言っていて、あのレベルのチームでも、そこを大事にして行かないとあそこまで行けないという事なので、僕らはもっとそこを大事にして行かないといけないというのを改めて感じました。
小野選手:
その部分は戦術とかとは違って、「やれ!」と言って出来るもんでは無いですし、「一体感出そう!」と言って出せるもんでもなかなか無いというか。
春から中野さんが、チームファンクションなど色々と企画してくれたり、普段のトレーニングやそれこそTLCのゲームを通して、チームを信頼したり、お互いに助け合ったり、そういう事の積み重ねでしかチームの一体感とは出て来ないと思うので、時間がかかる事だとは思うんですけど、徐々に良くなって来ていると感じます。
ーーリーダー格の選手たちの存在や若手の成長についてはどうでしょうか?
中野選手:
リーダー格の選手が、僕らだけでは気が付かない点を色々と発言してくれていますね。グラウンド内外の両方の部分で。若手も積極的に発言する選手が増えて来ていて、良い傾向だと思います。
小野選手:
BKだと、去年リーダーだった良真(中村)とか、外国人選手もコーチと日本人選手とのコミュニケーションを繋ぐ役目を積極的にしてくれています。あとは、グラウンドの外でも“チームビルド”に繋がる部分で、ボランティア活動をしたり、チームのイベントを企画したり、特に役割分担を決めている訳ではない中で積極的に動く若手の選手がいるので、こういう事から“チームカルチャー”が出来て、とても良い事だなと思います。
ーーInstagramを始められましたね。これは、選手が発信されているんですか?
中野選手:
そうですね、選手主導です。実は、春くらいから提案していてそれが形になった所なんですけど。
前からあるSNSにはチームスタッフが投稿しているので、Instagramに関しては、こういう分野が得意な後輩選手が頑張ってくれています!日頃あまり皆さんにお見せ出来なかった選手の姿とかも見られるので、ぜひフォローして下さい!
ラグビーが持つ力を改めて感じました
ーー開催中(インタビュー時)のRWC2019™について。
中野選手:
すごく良い大会になっていると思いますね。ラグビーで日本全体がこんなに盛り上がれるんだと思って。もちろん、この盛り上がりは色んな人の力、日本代表の活躍であったり、大会運営の方や盛り上げようという活動をされている方々がいてこその事だと思います。
今までラグビーを観ていなかった人たちもこれだけ盛り上がってくれるという事が分かったので、ワールドカップが終わった後も、“釜石ラグビー”を盛り上げる事が出来るのは僕らだと思うので、しっかり結果を出して行かないと・・・と思いましたね。
ファンゾーン in 岩手・釜石でのイベント参加時の様子(写真:釜石シーウェイブスRFC)
ーー周りの方々の変化、反応などはどうですか?
中野選手:
今までそんなにラグビーを観ていなかった友達から急に連絡来たりとか、後はルールについて、「試合中のこういうのってどうなってるの?」という事を色んな人から聞かれるようになりました。それがすごく良い事だなって思いますね。
ーー小野選手はどうですか?
小野選手:
いや、ほんとすごいで大会ですよね!ラグビーが持つ力を改めて感じました。日本代表の選手が当たり前のようにテレビに出ている事とか、今までじゃ考えられなかったと思うので。
ラグビーが世間の方々に認知されたのは日本代表の力が大きいと思うんですけど、こうしてラグビーに注目してもらえる事がすごくありがたいと感じています。
日本代表が盛り上げてくれて、色々な人達の力でワールドカップが開催された後のシーズンなので、何とかその“ラグビーの力”を自分たちが繋げて行きたいというか、日本のラグビー界にさらに注目してもらえるようにするために、今度は自分たちの番だなという感じです。
ファンゾーン in 岩手・釜石でのイベント参加時の様子(写真:釜石シーウェイブスRFC)
ーーここまで(準々決勝後にインタビュー)で、特に印象的だった試合は?
中野選手:
日本代表の試合はもちろんですけど、それ以外で言えば生で観たフィジー対ウルグアイの試合とか、あとはオールブラックス(ニュージランド代表)の戦い方はすごいなって思いましたね。決勝トーナメントに入ってからのチームの戦い方が、予選プールとはガラっと変わって。だから強いんかな。他のチームとは、やっぱりちょっと違うなって。
小野選手:
やっぱり、オールブラックスすごいなって思います。予選プールと決勝トーナメントではスイッチの入り方が全然違いますし、日本代表が負けて、「オールブラックスと南アフリカは、予選プールはあくまで予選プールだったんだね」と言われてますけど、その通りだと思います。やっぱり、力の差があったのか・・・っていうのはあります。
このチームは、すごく特別なチーム
ーー“ラグビーのまち釜石”のラグビー選手として、これからについては?
中野選手:
基本的には、釜石が勝つ事を考えて行けば、その先に繋がって行くんじゃないかなと思います。
それこそ、勝てば釜石の皆さんにも元気になってもらえる部分もあると思いますし。試合で勝つという事はそれだけ活躍しなければならないんで、活躍してたら色んな人が観てくれて、日本代表に呼ばれる選手がチームから出てくるかもしれないですし、ラグビー選手として活躍する事が、ラグビーの力、今回の熱を繋げて行く事に必然的になっていくと思います。
小野選手:
シーウェイブスはすごく特別なチームだと思います。新日鐵時代の7連覇、そして東日本大震災を経験して・・・という色々な歴史があるチームだという事を分かって下さっている皆さんに応援して頂いている事を感じなきゃいけないと思いますし、僕たちはこのチームに居る事にもう少し誇りを持って、そしてチームとして活躍する事が出来れば、この先に繋げて行く事が出来ると思うので。
その為には、今のステージで上位に入る強いチームになって、上に挑戦出来るレベルになって行く事が僕たちの成長になるので、まずは今シーズンどれだけ出来るかだと思います。その先にしか、“これから先に繋げる”という事も見えて来ないのかなと。
この先、プロリーグの話も出て来ていますけど、僕たちはまず、今出来る事をやるしかないと思っています。
ーー鵜住居復興スタジアムが、ここ釜石にあるという事について。
中野選手:
すごい事だと思います。僕は、スタジアムが建つ前に一度釜石に来ていて、あの場所にも行ってまだ被災した学校がそのまま残っている状態の時を見ました。当時の事は詳しくは分からないですけど、RWCを誘致しようとなった時に、「それどころじゃない」という声がたくさんあった中で、それでも、あんな立派なスタジアムが出来て・・・。
あのスタジアムには、色々な人たちの想いが詰まっているじゃないですか、その中でも釜石に住んでいる方々にとっては、よりたくさんの想いが詰まっている場所だと思うので、そのスタジアムでラグビーが出来るという事がすごく・・・頑張らなければいけないなと思わせてくれる、特別なスタジアムです。
小野選手:
釜石、そして岩手県沿岸地域にとっての“復興の象徴”と言われてきたスタジアムが建って、ワールドカップが開催されて成功を収めて、皆さんの熱い想いをあらためて感じました。そういうスタジアムを使わせて頂く自分たちの責任をかなり感じています。11月16日、開幕戦に懸ける想いは強いです。
ひたむきに闘う姿を観て欲しいです
ーー今シーズンのトップチャレンジリーグ(TCL)はホーム2連戦でスタート。初戦はTLCでも対戦したコカ・コーラです。
中野選手:
TLCのコカ・コーラ戦は自分たちのミスで負けてしまった試合なので、 “リベンジ”してその後のシーズンに繋げていきたいです。コカ・コーラはTLから降格してきたチームなので、勝利する為には最低限そこに“スタンダード”を持って行かないといけないですし、TLに行く為には“TLチームに勝たなければいけない”という事なので、そういう意味でも当然コカ・コーラには勝たなければいけないとダメだと思います。
あとは個人的に、僕、当日が誕生日なんですよね。だから、勝ってお祝いしてもらいたいと思いますね(笑)。
ーーそうなんですね、それはぜひ!ですね。小野選手はどうですか?
小野選手:
例年と違ってシーズンの期間がすごく短いので、開幕の2戦はすごく大事なゲームになると思います。そこをズルズル行ってしまうと、そのままあっと言う間終わってしまうシーズンになると思うので、何とか勝利して、今シーズンを駆け抜けられる様な開幕戦にしたいと思います。
ーー最初から、トップギアで!という感じですね!最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
中野選手:
RWCパブリックビューイングの日本代表戦(対南アフリカ)をSW理事の浜登さんと一緒に観ていて、試合終了後に「釜石はRWCが終わったここからどう盛り上げて行くかですね」という話をしたら、浜登さんに「次、釜石ラグビーを盛り上げて行くのはSWだよ!」と言われて、「RWCが終わってから、釜石のまちを盛り上げるのは自分たちの活躍だ!」と思って。今まで、“どうやったら盛り上げて行けるんだろう”と考えていたんですけど、言われた時に「もうそれしかないな」と。それを胸にシーズンをしっかり闘っていきます。
今回のワールドカップで初めてラグビーを観た人も多いと思うので、そういう人たちにも引き続きずっとラグビーを観てもらえるように、スタジアムに足を運んでもらえるような試合をしたいと思っています、応援よろしくお願いします。
小野選手:
RWCが終わった後すぐにTCLが開幕するので、ワールドカップの盛り上がりをそのままに、リーグ戦を盛り上げて行きたいと思っています。
対戦相手には日本代表選手もいるのでそういう所を楽しみに観に来てくれるでも良いですし、ぜひスタジアムに来ていただいて、僕たちのひたむきに闘う姿を観て欲しいなと思います。
いよいよトップチャレンジリーグ(TCL)開幕!スケジュールをチェックして、ぜひスタジアムで釜石SWを応援しましょう!
鵜住居復興スタジアムで開催されるホームゲーム2試合は、スタジアムイベントも盛りだくさんです!
2019 ジャパンラグビートップチャレンジリーグ
第1節 11月16日(土) 11:30 釜石鵜住居復興スタジアム
対 コカ・コーラレッドスパークス
第2節 11月23日(土) 11:30 釜石鵜住居復興スタジアム
対 九州電力キューデンヴォルテクス
第3節 12月07日(土) 11:30 秩父宮ラグビー場
対 栗田工業ウォーターガッシュ
第4節 12月14日(土) 14:00 秩父宮ラグビー場
対 豊田自動織機シャトルズ
第5節 12月21日(土) 13:00 コカ BJI ラグビー場
対 マツダブルーズーマーズ
第6節 01月11日(土) 14:00 ヤンマースタジアム長居
対 近鉄ライナーズ
第7節 01月19日(日) 11:30 秩父宮ラグビー場
対 清水建設ブルーシャークス
詳細は、釜石SW公式サイトでご確認ください。
http://www.kamaishi-seawaves.com/