岩手ぅんめぇ〜もんグランプリ優秀賞、藤勇 十割糀みそケーキ 発売〜老舗醸造会社と人気洋菓子店のコラボ


2016/08/10
復興釜石新聞アーカイブ #産業・経済

「十割糀みそ」(左)を使ったパウンドケーキ(右)

「十割糀みそ」(左)を使ったパウンドケーキ(右)

 

 釜石市大渡町のみそ、しょうゆ製造販売業、藤勇醸造(藤井徳之社長)は7日から、自社の「十割糀(こうじ)みそ」を使ったパウンドケーキを販売する。東日本大震災で被災した同社が復旧支援への感謝を込めて作り上げたみそに釜石と東京の”発酵女子”が着目し、新しいおいしさを提案しようと開発した。製造は地元のアンジェリック洋菓子店(鈴子町)が担当する。

 
 藤勇醸造の小山和宏専務(51)は「人との出会い、地域のつながりがなければ生まれなかった商品。手作り感、コラボレーションを楽しんでほしい」と力を込める。新しいスイーツの企画にかかわった小山さんの長女、明日奈さん(27)は「ケーキからみそのおいしさを知ってほしい。新しい釜石の土産物になれば」と期待する。

 

釜石と東京の”発酵女子”開発

 

 名称は「藤勇の十割糀みそケーキ」。生地にみその塊を残し、アクセントに香ばしいクルミを練り込んだことで、西洋風のお菓子にほんのり懐かしい味わいがするのが特徴だ。

 

 使われた十割糀みそは県産の米、大豆100%で仕込んだ甘めのみそ。ケーキは材料の小麦粉の半分、卵が県産など、地域食材を主役にしている。

 

 同社は1902年にみそ醸造会社として創業。事業が軌道に乗り、しょうゆづくりも始め、まろやかな甘味が特徴のしょうゆは地元で長く愛されている。

 

 震災では社屋が半壊。仕込み中だったみそ約50トンは廃棄し、しょうゆは約3万本を市民に無償で提供した。被害額が大きく、会社存続の危機もあったというが、「製造を再開して」という顧客らの励ましの声、物資や復旧支援のボランティアらの後押しもあり、最低限の設備を復旧し、約半年後にしょうゆづくりを再開。みそは工場の建て替えが必要となって仕込みが遅れ、出荷が再開できたのは震災から2年半後だった。

 

 しょうゆとみその消費量は、食生活の変化などで震災前から全国的に減少。伝統を守り、支援への感謝を込め、地場食材にこだわった新商品づくりを進める中で生まれたのが十割糀みそだった。

 

 ケーキ開発のきっかけは、食を通じた人とまちのつながりを目的とした東京のシェアキッチン「okatteにしおぎ」に集うメンバーと明日奈さんの出会い。東京と釜石の新しい関係づくりをしようと、十割糀みそを使った商品づくりを始めた。今年2月に東京で開かれたイベントで試験的に販売。評判も上々で、地元での販売を決めた。

 

 先月盛岡で開催された「岩手ぅんめぇ~もん!!グランプリ2016(岩手県ふるさと食品コンクール)」に出品。商品の見せ方、味に高い評価を得、食品企業部門で優秀賞に選ばれた。小山専務は「販売に向け弾みがついた」と喜ぶ。

 

 発酵女子は、みそやぬか床といった発酵食品を自在に使った料理がお得意。「塩麹(こうじ)」や「酒かす」などの発酵食にも注目が集まっている。明日奈さんもその一人で、「(東京のメンバーは)うちのみそを気に入ってくれて、食に興味があり、発酵食の伝統を復活してほしいとの思いも強い。アイデアを出し合い、それぞれの強みを生かし出来上がったもので、本当につながりに感謝。まだ違った形で商品が出てくる可能性も」と目を輝かせた。

 

 ケーキのパッケージには、十割糀みそのロゴマークにもなっている同社の屋号を利用した。富士に見立てた山から、みそだるのイメージを重ねた太陽が昇るデザイン。津波で被災した市内の印刷会社に残っていた木版の中から偶然見つかったことも糀みそ開発のきっかけの一つだったことから、歴史を感じる木版の風合いをケーキにも生かそうと考えた。

 

 小山専務は「みそ造りから始まった伝統を守りたい。社としてまちの力にもなりたい。商品開発が食を通じた地域を支える一つの力になればうれしい」と話す。

 

 価格は1個220円(税別)。市内では道の駅仙人峠、アンジェリック洋菓子店、イオンタウン釜石で販売する。そのほか盛岡市のNanak(ななっく)、特産品プラザらら・いわて盛岡店、カワトクなどにも並ぶ予定。地元の洋菓子店が手作りするため、1回の製造で120個ほどとなり、販売開始直後は品薄となることも見込んでいるが、同社では売れ行きを見ながら進めたいとしている。

 

 あすの販売開始を前に、きょう開かれる「釜石よいさ」に合わせ、大町ほほえむスクエアで100個を限定販売する。「たまにやってくるみそのしょっぱさ、洋風の中にある和テイストを楽しんで」と小山専務。

 

 問い合わせは藤勇醸造(電話0193・22・4177)へ。

 

(復興釜石新聞 2016年8月6日発行 第510号より)

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