市内被災地区初の工事完了〜花露辺復興、夏祭りで祝う


2016/07/29
復興釜石新聞アーカイブ #地域

大漁旗をはためかせた漁船で海を回り、復興完了を祝った

大漁旗をはためかせた漁船で海を回り、復興完了を祝った

 

 釜石市唐丹町の花露辺町内会(大瀬司会長)は18日、地域の復興工事の完了を祝い、唐丹漁港で夏祭りを開いた。市内では21地区が被災したが、復興公営住宅や宅地造成などの高台移転や仮設住宅の撤去、漁港工事など復興工事が全て完了したのは花露辺地区が初めて。「海の日」に合わせたこの夏祭りは海に感謝し、住民の交流を深めるため、震災があった年も継続して行ってきた。今年は工事関係者や支援者らとともに復興を喜び合い、工事完了への感謝の気持ちを込めて開催。約200人が集まり、歌や踊りなどを楽しみながらにぎやかに交流を深めた。

 

 大漁旗をはためかせた約30隻の曳き船、餅まきで工事完了をお祝い。ホタテやウニなど浜焼きを味わいながら、地元の海頭荒神太鼓の演奏、鵜住居町出身の佐野よりこさんらの民謡ショーを楽しんだ。大瀧洋子さん(73)は「普段は年寄りばかりだが、持ちつ持たれつで暮らしていければいい」と、仲間と顔を見合わせ笑った。

 

餅まきに歓声を上げる住民ら

餅まきに歓声を上げる住民ら

 

 震災直後から物資支援や文化・スポーツの応援活動などに区を挙げて取り組む東京都の荒川区社会福祉協議会からも有志6人が駆け付けた。藤田満幸さん(66)は「花露辺地区を含め、釜石市民は周りに協力しようという気持ちを持っている人が多い。だから工事も早く完成したのだと思う。今後は支援という形ではなく、交流を深めていくことで応援を続けたい」と話した。

 

 花露辺地区は震災前、68世帯が暮らしていたが、震災で18世帯が被災した。もともと防潮堤がなく、「地震が来たら逃げる」ことを徹底していた。住民で議論を重ね、今回も防潮堤を造らず、低地を作業所用地として活用し、住宅を高台に移転させることを決めた。

 

 復興公営住宅の整備や自力再建者の宅地造成を進め、なりわいの再生としてワカメの加工場など漁業施設も整備した。唐丹漁港の工事が今年3月に終わり、地区の復興工事が完了。一時、50世帯に減少したものの、市内の仮設住宅などで避難生活を送っていた被災者も戻り、現在は64世帯となっている。

 

 防潮堤の代わりに浸水を防ぐため、標高が16メートルになる市道が新たに設けられ、夏祭りの前には、海岸から高台までの避難訓練も実施。避難路をかけ上がるのは「ゆるくない」との声もあったが、「まずは逃げる」と意識付けする訓練の大切さを再認識した。

 

 同地区での工事に携わったUR都市機構釜石復興支援事務所の安藤誉和所長は「計画通りにならないことが多々ある中で、早い工事の完了だったと思う。しっかりとしたコミュニティーがあり、地元の意見をまとめる強いリーダーシップも発揮してもらった。日常を少しずつ取り戻し、前に進んでもらえれば」と願った。

 

 同町内会前会長で復興事業担当役員の下村恵寿さん(66)は「今日が再スタート。半数が高齢者で健康維持、見守りが課題になるが、結束力を生かし、これまで同様明るい地域づくりをしていきたい」と話した。

 

(復興釜石新聞 2016年7月23日発行 第506号より)

 

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