思い出の園舎にお別れ 正福寺幼稚園 改築を前に見学会


2016/01/14
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

園舎とのお別れに足を運んだ人たち。並んだ卒園アルバムを手に取り、懐かしんだ

園舎とのお別れに足を運んだ人たち。並んだ卒園アルバムを手に取り、懐かしんだ

 

 釜石市甲子町松倉、学校法人釜石学園(須藤寛人理事長)が運営する正福寺幼稚園(菊池久園長、園児88人)で5、6の両日、「園舎お別れ見学会」が開かれた。認定こども園(幼稚園型)への移行を目的とした園舎改築のため現園舎が解体されることから、「思い出が詰まった園舎との別れを惜しんでほしい」と企画。冬休み中の園児や保護者、近隣住民、卒園生らが次々に訪れて自由に見学し、園舎に別れを告げた。 

 

 保育室内の壁には園児たちの絵や「おもいでいっぱいありがとう」との文字が描き込まれており、カメラを持って思い出の教室を撮影する人、見学会に合わせ展示された卒園アルバムを手に歴史や懐かしさを感じている人も。久しぶりに会う旧友と園舎内を隅々まで回ったり、来園者はそれぞれ、最後の時間を過ごした。

 

 5日に訪れた野田町の高橋千佳子さん(35)は卒園生で、「園舎は変わってないけど、こんなに狭かったかな」と懐かしそう。今春に別の園に入園予定という息子の友輝君(3)の手を引き、思い出の詰まった園舎を案内した。帰省中という東京都板橋区の下山美帆さん(35)も卒園生で、高橋さんに誘われて来園。「解体すると決まっているからしょうがないけど、思い出の場所がなくなるのは寂しい」と別れを惜しんだ。

 

 同園は1963年、正福寺の境内にフタバ保育所として開設したのが始まり。戦時中の休所を経て53年に再開し、54年、ふたば保育園と改称。72年に現園名に改め、74年まで3期にわたる新築工事で現園舎が完成した。

 

 ピーク時には約250人を数えた園児も現在はほぼ3分の1に減少。少子化の厳しい環境の中、甲子地区でただ一つとなる幼稚園教育を残そうと、80年間園児たちを見守ってきた園舎の改築を決めた。

 

 改築工事に向け、現園舎の裏にプレハブ造りの仮設園舎を設置。20日から園児らの保育が行われる。2年ほど同園に通っている佐々木貴行君(6)は「新しい友達がいっぱい増えたし、運動会とか思い出もいっぱいある。ありがとうと言ってきた。(仮設園舎は)階段を上がるって聞いた。大変かもしれないけど楽しみ」とにっこり。母親の幹子さん(34)は「2つの園舎で過ごすことは逆に思い出に残り、いい体験になるのでは」と見守った。

 

 2年後の18年度までの認定こども園への移行を目指し、現園舎の解体工事は7日から始まる。新園舎は現園舎の跡地に建設し、今年8月の完成を見込む。

 

 菊池園長は「園行事で不便をかけることがあると思うが、なるべく思い出に残るようにしたい。形は変わっても、今までやって来た伝統を新しい園舎でも引き継いでいき、ますます充実するよう頑張っていきたい」と話した。

 

(復興釜石新聞 2016年1月9日発行 第451号より)

 

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