あの人 思い 手を合わせる〜鵜住居 祈りのパーク「10年は通過点」


2021/03/18
復興釜石新聞アーカイブ #地域

犠牲者の芳名板の前で祈りをささげる家族

犠牲者の芳名板の前で祈りをささげる家族

 

 釜石市内全域の震災犠牲者の芳名板が並ぶ鵜住居町の追悼施設「釜石祈りのパーク」には11日午前から、遺族や縁故者らが次々と訪れた。献花台に花を手向け、静かに手を合わせる人々。亡くなった人を決して忘れず、二度と悲劇を繰り返さないという強い思いが10年目の被災地を包んだ。 

 

 震災の津波で多くの犠牲者が出た鵜住居地区防災センター跡地に一昨年整備された同施設。市内の犠牲者1064人のうち1001人の芳名が掲げられる。11日は、犠牲者を弔おうと多くの人たちが訪れた。芳名板に手を当て思いを込める遺族。世話になった故人に感謝の気持ちを伝える縁故者。10年を機に足を運び、尊い命が奪われた震災に心を痛める外国人の姿も。日蓮宗仙寿院(芝﨑恵応住職)の僧侶と檀(だん)信徒12人は慰霊の唱題行脚で訪れた。地震発生時刻の午後2時46分―。防災無線のサイレンが鳴り響くと来訪者が一斉に黙とう。鎮魂の祈りをささげ、震災の記憶、教訓の継承を誓った。

 

地震発生時刻に黙とう

地震発生時刻に黙とう

 

 宮城県大和町の柏﨑桃香さん(26)は、伯母美幸さん(当時48)=片岸町=が津波の犠牲になった。姉のように接してくれた美幸さん。「当時はその優しさに気付けていなかった」と涙目で後悔を口にする。祖父龍太郎さんも、長年暮らした仮設住宅から再建した自宅に移った直後に他界。「釜石に1人残る祖母を幸せにすることが、2人のために自分ができること」と残された者の使命を胸に刻む。

 

 大渡町の片桐浩一さん(51)は、出産間近だった妻理香子さん(当時31)を防災センターで亡くした。「悔しい気持ちは消えることはないだろう。10年は節目ではなく通過点」。生まれていれば愛娘は今年10歳。「小学4年生か…」。かなわなかった親子の日常に想像をめぐらせた。今も脳裏に浮かぶのは妻の笑顔。「娘と2人で笑いながら見守ってくれている気がする」。この10年を「いろいろなことがありすぎた。一生が凝縮された感じ」と振り返る。震災の風化は避けられないが、「せめて3・11だけは自分や大切な人の命をどう守るか、考える日にしてほしい」と願う。

 

癒やしの歌声を響かせた釜石高音楽部

癒やしの歌声を響かせた釜石高音楽部

 

 釜石高音楽部(平松和佳奈部長)の6人は「願い~震災をのり越えて」など3曲を献唱した。菅野光里さん(2年)は、津波で祖父母が行方不明のまま。込み上げる悲しみをこらえ、精いっぱいの歌声を響かせた。「自分たちが活動する意味を感じた。微力かもしれないが、日常を大事にしてほしいという願いを歌で届けていきたい」と望んだ。

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