震災10年 希望を明日に、復興は新たなステージへ


2021/03/17
復興釜石新聞アーカイブ #地域

震災犠牲者に思いをはせ、追悼式で手を合わせる遺族ら

震災犠牲者に思いをはせ、追悼式で手を合わせる遺族ら

 

 東日本大震災から10年となる11日、釜石市の震災犠牲者追悼式が大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルスの感染拡大防止を踏まえ一般参加者の入場は控えてもらうなど規模を縮小し、市内在住者に限定した遺族など103人が出席。津波で命を落とした大切な人をしのび、「震災10年」を区切りに新たなステージへと向かう釜石の復興、ふるさとの再生を願って手を合わせた。

 

 県内の人的被害は2月末現在、死者4674人、不明者1111人、関連死は470人に上る。釜石市では806人が命を落とし、不明者は152人。関連死の106人を含め犠牲者は1064人に上る。

 

 釜石の追悼式は東京都内で行われる政府主催の追悼式に合わせる形で開会し、震災が発生した午後2時46分に黙とう。中継された追悼式で、天皇陛下は「誰一人取り残されることなく、一日でも早く平穏な日常の暮らしを取り戻せるように、皆が心を合わせて、被災した地域の人々に末永く寄り添っていくことが大切であると思います」と述べられた。

 

 野田武則市長は「震災で犠牲になった方々への鎮魂の思いをまちづくりの出発点とし、住まいの再建、なりわいの再生へ、たわまず屈せず、復興に向けて取り組んできた」と10年を振り返り、「復興は固定概念にとらわれず、多様に変化する環境に対応し、柔軟な姿勢で学び続けることが大切」と式辞。「学んだ教訓を生かしながら、被災者一人一人が幸せと復興の歩みを実感できるよう努力を重ねていく」と決意を述べた。

 

震災犠牲者の霊に向かい追悼の言葉を述べる野田市長

震災犠牲者の霊に向かい追悼の言葉を述べる野田市長

 

 津波で妻、長男夫婦、孫の家族4人を失った鵜住居町の鈴木堅一さん(77)が遺族を代表して追悼の言葉。「精いっぱい生きてきた、あっという間の10年だった」と振り返り、「これから何十年も生きたであろう5年生で亡くなった孫が、かわいそうでならない」と声を振り絞った。

 

追悼の言葉を述べたあと花を手向ける鈴木堅一さん

追悼の言葉を述べたあと花を手向ける鈴木堅一さん

 

 震災当時、鈴木さんは消防団本部長を務めていた。防潮堤の水門を閉めるため車で向かったが、山に逃げて辛くも助かった。

 

 亡くなった家族に再建を約束した自宅は5月に完成する。「しかし、いくら家を建てても、家族を亡くした私の気持ちの中で復興を感じることはない」と苦しいままの胸の内を明かした。

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