もろみ造り作業に挑戦、浜千鳥で仕込み体験会〜参加者「味わいも増しそう」、国際的評価を実感
甑(こしき)から冷却機へ蒸米を移す作業を体験する参加者
釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は2月29日、3月1日の両日、同社の酒蔵で仕込み体験会を開いた。地酒への理解と消費拡大を狙いに1998年から続けられている「酒造り体験塾」の一環。29日は市内と近隣市町から15人が参加し、もろみ造りのための各種作業に挑戦した。
本年度の体験塾は昨年5月に田植え、9月に稲刈りを実施。今回の第3弾は▽高温の蒸気で蒸した大槌産酒米「吟ぎんが」を掘り起こし、冷却機に移す▽冷ました米を2人1組で仕込み場のタンクまで運ぶ▽酒母が入ったタンクに米を投入し、発酵を促すよう櫂(かい)棒で混ぜる(櫂入れ)▽翌日の仕込み用の洗米―の4工程で、代わる代わる作業を体験した。
参加者は蔵人の手ほどきを受け、昔ながらの酒造りの技や苦労の一端を味わった。昨年4月、千葉県香取市から本県山田町に復興支援の派遣職員として赴任した林光一さん(63)は「日本酒が好きなので」と初参加。「蒸米掘りと櫂入れは(力が要り)大変。今は機械化される作業もあるが、酒造りの基本、本質を知れて良かった。浜千鳥の酒のイメージは切れのある甘さ。工程が分かると味わいも増しそう」と喜んだ。
肉体労働の後はさわやかな笑顔。仕込んだ純米酒の出来上がりが楽しみ!
体験会には、同社でインターン中の宮城大1年、池田綾花さん(19)も参加。日本酒造りについて「職人の勘に頼る部分が大きいのかなと思っていたが、実際は数値などを厳しく計測していて科学だなと思った」。1カ月の予定の研修は残り半月。「杜氏さんから何でも聞ける環境は貴重。たくさん吸収していきたい。お酒を飲める20歳になるのが楽しみ」と目を輝かせた。
同社の今期の酒造りは昨年10月から開始。暖冬の影響について奥村康太郎杜氏(39)は「元々寒い所なので真冬の時期は問題ないが、その前後は苦労する。仕込み庫の温度が10度を超えると、もろみの管理も難しくなるが、現在は順調に進んでいる」と話した。
同社は昨年、ラグビーワールドカップ(W杯)開催を機に、外国人に日本酒を正しく理解してもらう取り組みを実施。作業場に外国語表記を増やし、外国人向けに酒造りの紹介ビデオを制作するなどし、受け入れ体制を整えた。W杯前後には約80人の外国人が酒蔵見学に訪れたという。
同社の酒は国際的日本酒コンテストで2年連続高い評価を受け、日本酒ブームが起こる海外への情報発信に一役買っていたが、そんな中での新型コロナウイルスの発生。新里社長は「会社としても衛生管理を一層徹底している。催し物の中止が相次ぎ、売り上げへの影響も出始めている。消費経済への打撃は東日本大震災よりも大きくなるかも。早く収束してほしい」と強く願った。同社は3月末まで酒蔵見学の受け入れを中止する。
(復興釜石新聞 2020年3月4日発行 第872号より)
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