「地域に寄り添った活動」誓う〜釜石ひまわり基金法律事務所、新所長に細川弁護士
全国の弁護士過疎地域に開設される公設事務所、釜石市上中島町の「釜石ひまわり基金法律事務所」は12月1日から5代目所長に細川恵喜弁護士(28)=岩手県出身=が就任する。11月末で任期を終える現所長の多田創一弁護士(30)の労をねぎらい、細川弁護士を激励する会が9日、市内のホテルで開かれた。細川弁護士は、自身が生を受けた釜石での活動に意欲を燃やし、「地域の皆さまのニーズに応える寄り添った活動をしていきたい」と誓う。
新所長の細川弁護士は釜石生まれ、盛岡育ち。盛岡一高から一橋大に進み、同法科大学院を修了。司法試験に合格した。山梨県甲府市で司法修習を行い、2017年12月に弁護士登録。東京フロンティア基金法律事務所(東京都新宿区)で約2年間研さんを積んだ。
大学1年の終わりに東日本大震災が発生。被災地の法的ニーズを考え、「ぜひとも一度は釜石に」と思い続けてきた。念願をかなえ、今年9月に着任。月に20件ほどの新規相談を受けてきて、「相続や離婚など家庭内の問題が多い」と印象を語る。東京では主に消費者事件を担当。「詐欺など消費者被害はどこでも起こり得る。関係機関と連携し、相談まで行き着かない潜在的な被害者救済にも取り組みたい」と意を強くする。同じ岩手県人として「(相談者の)心情や考えを理解できるのは大きい。地元のネットワークも生かしていければ」とも。
17年3月に着任、まもなく2年9カ月(所長として2年半)の活動を終える多田弁護士は、延べ約550件の相談を受け、196件の依頼を担当。1年目は被災者の生活再建に伴う個人破産、再生事案、2年目は国の復興事業による土地収用に絡んだ地権者の相談(相続、遺産分割)が多かったという。今年7月に開設された「釜石・遠野地域成年後見センター」の立ち上げにも尽力した。
「釜石での経験は何ものにも代えがたい。今後の人生のベースになる」と多田弁護士。仕事以外でも市民と積極的に関わり、多くの信頼関係を築き上げた。12月からは仙台市の法律事務所で働く。
ひまわり基金法律事務所は、日本弁護士連合会が1999年に立ち上げた基金をもとに開設。釜石事務所は06年に全国75番目として開所。現在、県内には釜石、遠野両市に開設されている。
岩手弁護士会の吉江暢洋会長は「多田弁護士が尽力された広域圏の成年後見センターは大きな一歩。細川弁護士には、地域にとって重要なものになるよう育てていってもらいたい」と期待する。
県内の弁護士利用はまだまだ少ない。「早い段階から弁護士が助言、助力をすることで、問題が大きくなるのを避けられる。気軽に相談に来られるよう、地域に根付いて活動してほしい」と吉江会長。
(復興釜石新聞 2019年11月16日発行 第842号より)
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